事業成果

国際共同研究

国際的な科学技術研究協力の推進と支援

グローバルな問題の解決へ2024年度更新

今日、地球温暖化に伴い気候変動、エネルギー、食糧などの分野でさまざまな問題が生じている。これらは1ヶ国で対応できるものではなく、国際社会との連携が必要不可欠だ。JSTではグローバルな問題の解決だけでなく、情報通信など、わが国の科学技術・イノベーション力の更なる発展と科学技術外交の強化にも貢献している。

先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)

ASPIRE(アスパイア)では、政策上重要な科学技術分野を対象として、日本と価値観を共にする科学技術先進国におけるトップ研究者同士が実施する国際共同研究を支援することにより、日本の研究者にトップ研究サークルへの参加を促し「国際頭脳循環」を促進している。

国際共同研究に参加する若手研究者等の相手国への派遣や相手国からの優秀な研究者の招へいを通して最先端の研究開発につながるネットワークを構築し、次世代のトップ研究者を育成することを目的としている。

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

SATREPS(サトレップス)では、開発途上国のニーズを基に、地球規模課題※1を対象とし、社会実装※2の構想を有する国際共同研究を政府開発援助(ODA)と連携して推進し、地球規模課題の解決及び科学技術水準の向上につながる新たな知見や技術を獲得することや、これらを通じたイノベーションの創出を目的としている。また、その国際共同研究を通じて、開発途上国の自立的研究開発能力の向上と課題解決に資する持続的活動体制の構築を図っている。

※1 地球規模課題:一ヶ国や一地域だけで解決することが困難であり、国際社会が共同で取り組むことが求められている課題。
 ※2 社会実装:具体的な研究成果の社会還元。研究の結果得られた新たな知見や技術が、将来製品化され市場に普及する、あるいは行政サービスに反映されることにより社会や経済に便益をもたらすこと。

戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)

SICORP(サイコープ)では、省庁間合意等に基づき文部科学省が特に重要なものとして設定する相手国・地域、分野において、相手国・地域のファンディング機関と連携し、イコールパートナーシップに基づく、多様な国際共同研究を支援している。

相手国の研究支援機関と連携して、戦略的な国際共同研究を実施することにより、単一国で解決できない国際共通的な課題の解決や、国際連携による我が国の科学技術力の強化に資する成果を得ることを目的としている。

※SICP(戦略的国際科学技術協力推進事業/2003年度開始)は、2015年度で終了した。

AJ-CORE (Africa-Japan Collaborative Research)

AJ-COREは、日本-南アフリカを核とする3ヶ国以上の日・アフリカ多国間共同研究プログラムであり、日本・南アフリカに加え、その他のアフリカ諸国の研究者がコンソーシアムに参加し、地域課題解決に資する協力分野において協働する。

e-ASIA共同研究プログラム(e-ASIA JRP)

アジア地域において科学技術分野の研究交流を加速することにより研究開発力を強化するとともに、アジア地域が共通して抱える課題の解決を目指す。相手国ファンディング機関と連携しながらイコールパートナーシップにより、材料(ナノテクノロジー)・代替エネルギー・農業(食料)・防災・環境(気候変動、海洋科学)・イノベーションのための先端融合分野の研究分野で多国間協力を推進している。

EIG CONCERT-Japan

EIG CONCERT-Japanは、科学技術イノベーション分野における日本と欧州諸国による共同公募を中心とした協力活動を行う多国間プログラムで、社会のための科学の発展と日欧間のネットワーク強化を目指す。EUの研究・技術開発フレームワーク・プログラム(FP7)における国際協力活動プロジェクトCONCERT-Japanの後継として2015年に設立された。

Belmont Forum

地球環境変動研究へのファンディングを行う世界の主要先進国・新興国のファンディング機関の集まりであり、国際的な資金・研究者を動員し、連携することにより、人類社会の持続可能性を阻む重大な障害を取り除くために必要とする環境関連の研究を加速させ、SDGsへ貢献することを目的として、フューチャーアース・イニシアティブとも連携している。

国際共同研究拠点

外交上の観点から日本にとって重要なASEAN地域とインド、中国において、従来の国際協力により得られた成果やネットワークの実績を活かし、地球規模課題・地域共通課題の解決やイノベーションの創出、我が国の科学技術力の向上、相手国・地域との研究協力基盤の強化を目的として、日本の「顔のみえる」持続的な共同研究・協力を推進する。

国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)

J-RAPIDは自然災害や人的災害など不測の事象が発生し、データの取得、問題の解決のために緊急に研究・調査を実施する必要がある場合に、機動的にその活動を支援することを目的としている。国などが本格的な研究・調査体制を整える前に、研究機関と協働して迅速に初動的な研究・調査を支援することにより、本格研究・調査への「橋渡し」としての役割を担う。

日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS)

NEXUS(ネクサス)では、「日ASEAN友好協力50周年」を機に、日ASEANの長きにわたる国際共同研究や人材交流等の取組を基盤とし、双方の強みを活かした柔軟で重層的な科学技術協力を推進する。相互の持続可能な研究協力関係をさらに強化し、イノベーションを共創するパートナーとしての成長を目指すべく、「国際共同研究」「研究人材交流・育成」「拠点」の3つの取組を進めている。

JSTが推進する研究交流・共同研究

  • ベトナム
    画像:ベトナム
    環境領域
    ベトナムにおける建設廃棄物の適正管理と建廃リサイクル資材を活用した環境浄化およびインフラ整備技術の開発
    ベトナムをはじめとするアジア都市域では開発にともなう建設廃棄物の発生量が急増している。本研究では、ベトナムにおける建設廃棄物の適正管理とリサイクルを推進するため、建廃取扱いガイドラインやリサイクル資材の品質基準を整備し、リサイクル資材を活用した技術開発(水質浄化や透水性路盤)を進める。さらに、リサイクル推進のための戦略的ビジネスモデルを提案し、現地での試験的事業によりその有効性を検証する。
    埼玉大学 大学院理工学研究科 教授 川本 健
  • カメルーン
    画像:カメルーン
    環境領域
    在来知と生態学的手法の統合による革新的な森林資源マネジメントの共創
    自然資源の持続的利用が重視されるカメルーン東南部の熱帯雨林にて、カメラトラップにより野生動物の生息密度を高精度で推定し、住民自身によるモニタリングを軸とする野生動物の持続的利用モデルを考案する。また、有望な非木材森林産品(NTFP)の生産・加工方法を標準化し、その持続的生産モデルを構築する。さらに、これらモデルを運用する人材を育成して地域への定着を図ると共に、政策実装をカメルーン政府に提言する。
    京都大学 アフリカ地域研究資料センター 准教授 安岡 宏和
  • エルサルバドル
    画像:エルサルバドル
    カーボンニュートラル領域
    熱発光地熱探査法による地熱探査と地熱貯留層の統合評価システム
    石油資源に恵まれないエルサルバドルでは、エネルギー安全保障の観点で、再生可能エネルギーの開発が重要であり、ベースロード電源として有望な地熱エネルギーの活用・技術開発の機運が高まっている。そこで、熱発光法により効率的かつ安価に地熱資源探査を行い、また QGIS統合化システムを開発し、地熱貯留層の性能を評価する研究を行うことにより、同国の地熱開発の推進を目指す。
    東北大学 大学院環境科学研究科 名誉教授/客員教授 八戸工業高等専門学校 校長 土屋 範芳
  • タジキスタン
    画像:タジキスタン
    カーボンニュートラル領域
    地中熱利用による脱炭素型熱エネルギー供給システムの構築
    炭化水素資源に恵まれないタジキスタンは、電力の96%を水力に依存する水資源大国であるが、エネルギーアクセスに課題を抱えている。とくに暖房需要が伸びる冬季は電力供給がひっ迫し、地方では電力供給が制限される。代わりにソ連時代より石炭が活用されているが設備が老朽化し、大気汚染及び地球温暖化の観点からもその利用は望ましくない。そこで、省エネでクリーンな地中熱ヒートポンプの乾燥地対応型を開発する。
    秋田大学 大学院国際資源学研究科 教授 稲垣 文昭
  • ボリビア
    画像:ボリビア
    生物資源領域
    高栄養価作物キヌアのレジリエンス強化生産技術の開発と普及
    キヌアは、栄養価が高いだけでなく、塩類土壌、干ばつや降霜など劣悪な環境下にあるボリビアの高地高原(標高4,000m程度)で唯一栽培可能な作物である。しかしながら、現在、頻発する極端気象や農地拡大による土壌浸食などにより、キヌア生産は危機に瀕している。キヌア遺伝資源の整備、レジリエンス強化育種素材の開発、休閑地管理や耕畜連携等の改善により、キヌアの持続可能な生産技術を開発し、普及させる。
    国際農林水産業研究センター 生物資源・利用領域 プロジェクトリーダー 藤田 泰成
  • モンゴル
    画像:モンゴル
    生物資源領域
    遊牧民伝承に基づくモンゴル草原植物資源の有効活用による草地回復
    モンゴル草原植物の家畜健康回復効果ならびに荒廃草原回復効果に関する遊牧民の豊富な知識と伝承を集めて有用草原植物を選抜し、各々その理由となる化合物の探索や新規な遺伝子の探索を行なうことで、有用性を科学的に実証する。同時に、疲弊したモンゴル草原を「診断」し、選抜した植物の栽培法の確立と普及という「治療」を行なうことで、生育性が高くかつ健康維持効果の高い草原植物を利用した草原保全、家畜健康保全を行なう。
    東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授 浅見 忠男
  • アルゼンチン
    画像:アルゼンチン
    防災領域
    気象災害に脆弱な人口密集地域のための数値天気予報と防災情報提供システムのプロジェクト
    ブータンでは、首都をはじめとする一部の市街地で地上5階建てまでの鉄筋コンクリート建築と、2階建てまでの煉瓦建築が多くみられるほか、ほとんどの民家と公共施設が版築*1あるいは割石*2積みで建てられている。プロジェクトでは、ブータンにおける地震研究により得られた地震ハザード評価の結果を加味したブータンの伝統建築である組積造建築の耐震化指針と減災教育マニュアルを作成し、技術者・施工者向けの講習や住民教育を通して、地震に強い地域づくりを支援する。
    理化学研究所 開拓研究本部 主任研究員 三好 建正
    *1 版築・・・壁となる部分に両側から板などで枠を作り、その中に建材を詰めて突き固める工法のこと。
    *2 割石・・・石材を任意に割ったもの。
  • ブータン
    画像:ブータン
    防災領域
    ブータンにおける組積造建築の地震リスク評価と減災技術の開発
    ブータンでは、首都をはじめとする一部の市街地で地上5階建てまでの鉄筋コンクリート建築と、2階建てまでの煉瓦建築が多くみられるほか、ほとんどの民家と公共施設が版築あるいは割石積みで建てられている。プロジェクトでは、ブータンにおける地震研究により得られた地震ハザード評価の結果を加味したブータンの伝統建築である組積造建築の耐震化指針と減災教育マニュアルを作成し、技術者・施工者向けの講習や住民教育を通して、地震に強い地域づくりを支援する。
    名古屋市立大学 大学院芸術工学研究科 教授 青木 孝義
  • インド
    画像:インド
    ICT分野
    データ科学で実現する気候変動下における持続的作物生産支援システム
    インドの主要な食料生産地帯である半乾燥地で、気候変動下でも持続的な農業生産を支えるための技術開発をデータ科学に基づき行うことを目的としている。
    写真は東京大学フィールドフェノミクス研究拠点に構築したリモート共同開発環境。インド側との遠隔操作により、Edge-Computingツールキット開発を実施している。
    東京大学 大学院農学生命科学研究科 特任教授 二宮 正士
  • ドイツ
    画像:ドイツ
    オプティクス・フォトニクス分野
    プラズモニック金属ナノ構造を用いた高感度・高機能性SERS/OW/LSPRバイオセンサーの開発
    複数の生体分子反応について同時計測可能な技術を構築し、高感度でかつ高機能性バイオナノセンサーを開発することで、高精細な医療診断技術の確立を目指す。写真は、バイオメディカルセンシングデバイスのためのマイクロ/ナノ金属構造体の作製。
    産総研・阪大先端フォトニクス・バイオセンシング オープンイノベーションラボラトリ ラボ長 民谷 栄一
  • e-ASIA JRP
    画像:e-ASIA JRP
    防災分野
    雷放電観測網及び超小型衛星を活用した極端気象の監視と予測
    雲の立体構造を衛星からのステレオ観測で求める手法開発を、既存の超小型衛星(DIWATA-1)を用いて行った。その結果、中解像度(60m)及び高解像度(3m)のそれぞれの画像から、雲の3次元モデルを作成することに成功した。超小型衛星搭載用の、ボロメータ型赤外線カメラの開発を進め、また地上電波観測による雷放電の位置評定プログラムの開発に着手した。
    北海道大学 大学院理学研究院 教授 高橋 幸弘
  • J-RAPID(日本)
    画像:日本
    新型コロナウイルス感染(COVID-19)
    下水疫学調査による新型コロナウイルスの感染流行状況のリアルタイム監視
    アルファ株からデルタ株への置き換わりの観測に成功した他、オミクロン株/ステルスオミクロン株の変異系統の検出に成功し、下水疫学の変異株流行監視への有効性を示している。
    山梨大学 大学院総合研究部附属 国際流域環境研究センター
    教授 原本 英司
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