事業成果
研究データをひろく、つなげて、つかいやすく
生命科学データの利活用のための研究開発2024年度更新


生命科学データベースの統合利用を実現するため、研究開発の推進とウェブサービスの提供に取り組む。生命科学分野を中心とした研究成果を研究者、開発者、技術者と広く共有することで、研究開発を活性化し、新たなイノベーションの創出を支える。
中核的な研究データベースの整備 (統合化推進プログラム)
「統合化推進プログラム」は、ライフサイエンスに関わる国内外のデータを統合的に扱うためのデータベース開発を目的とした、公募型の研究費制度。2022年度に6件、2023年度に5件、2024年度に3件の研究開発課題を採択し、現在、合計14件を支援中。
データの統合利用技術開発と利用開拓
研究データの整理や統合、高度な利用のための技術開発およびアプリケーション提供。大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 ライフサイエンスデータベース統合センター (DBCLS)と連携して推進。
基盤的ウェブサービスの提供
2023年度成果
複合糖質リポジトリ「GlyComb」を公開 複合糖質が関わる疾患メカニズムの解明や新規創薬ターゲットの発見等への貢献に期待
創価大学 糖鎖生命システム融合研究所 木下 聖子教授らは、複合糖質データレポジトリ「GlyComb」を2023年10月に正式公開し、Journal of Biological Chemistry誌に論文を発表した。
GlyCombは糖ペプチドや糖タンパク質、糖脂質などの構造情報をユーザーが直接登録できるリポジトリシステムである。
GlyCombに寄託された糖ペプチドや糖タンパク質のデータには固有のIDが割り当てられ、他の糖鎖関連データベース、タンパク質やペプチド関連のデータベースと紐付けられる。また、セマンティックウェブ技術の上に構築されており、指定した糖鎖の関連情報を簡単に収集することができるほか、他のオミクスデータとも容易に連携させることが可能になっている。領域横断的・効率的なデータ活用が実現化され、複合糖質が関わる疾患メカニズムの解明や新規創薬ターゲットの発見等への貢献が期待される。
バイオ画像データの国際的な標準ファイル形式「OME-Zarr」を開発 画像データの共有・利活用促進に寄与
理化学研究所 生命機能科学研究センター 大浪修一チームリーダーらは、国際的なコミュニティに参加し、クラウドに最適化された次世代のバイオ画像データのファイル形式「OME-Zarr (オーエムイー・ザール)」を開発し、2023年7月、Histochemistry and Cell Biology誌に論文を発表した。
顕微鏡等を使って撮影された画像データの共有・解析は、(1) ファイル形式の多様性、(2) ファイルサイズの大容量化の2つが障壁となっている。国際コミュニティとの連携により、データアクセス速度を向上し、かつクラウド上でのデータ共有・可視化・解析が容易な標準的なファイル形式としてOME-Zarrを開発したことで、多様なバイオ画像データの共有と様々な用途への利活用の促進が期待される。

微生物培地情報の統合検索サービス「TogoMedium」を正式公開
ライフサイエンス統合データベースセンター (DBCLS) は、2023年9月、微生物培地情報の統合検索サービス「TogoMedium」を正式公開した。
TogoMedium に収載されているのは、理化学研究所バイオリソース研究センター、製品評価技術基盤機構生物資源センターがそれぞれ公開する培地情報749件、1,376件、また研究論文や Web からDBCLSがマニュアル収集した709件、合計 2,834件の増殖培地データ。培地間で組成を比較したり、類似培地を検索したりすることができる。また、さまざまな微生物情報と統合しており、系統情報や表現型 (生育温度、生育pHや大きさなど) などから培地情報を絞り込むこともできる。

図1 TogoMediumのトップ画面

図2 TogoMediumの培地成分での絞り込み画面
「Meat peptone」(肉由来のタンパク質加水分解物) で絞り込んだところ、209件の培地がヒットした。

図3 任意の培地の成分を比較できる「Compare media」画面
図2で絞り込んだ209件のうち6件 (M101、M151、M152、M170、M177、M184) を選択し、「Compare media」画面を表示させた。その成分で整列表示されている。