問題解決型サービス科学研究開発プログラム 【国立研究開発法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター】

平成29年3月で本プログラムは終了いたしました。

トピックス

<8>サイトビジット #4 2012.06.01

JST社会技術研究開発センター(RISTEX)の研究マネジメントの特徴である現地訪問(サイトビジット)について紹介します。今回は、4月17日に行われた、飯田プロジェクトリーダー(東京大学)率いる「農業水利サービスの定量的評価と需要主導型提供手法の開発」プロジェクトのサイトビジットの様子をお伝えします。


飯田PJのサイトビジットは今回が初めてです。東大農学部7号館A棟においてH23年度の成果とH24年度の研究計画について報告がありました。この会議には東京大学、東京農工大学、中部大学、茨城大学、農村工学研究所、国際農林水産業研究センター等の共同研究者および外部評価者、総勢約30名が参加して、研究開発全体の経過報告、各研究グループの状況共有と今後の研究開発の方向性について議論をしました。


まず、飯田プロジェクトリーダーから全体の進捗が報告され、引き続き各グループのリーダーから成果と今年度計画について発表がありました。
最初は、飯田プロジェクトリーダーが率いる観測グループです。昨年度末に調査対象となる農業水利ユニットとして印旛沼土地改良区と愛知用水土地改良区の管内にそれぞれ1地区ずつを決定しました。愛知用水では流量計の設置工事を3月末に完了。設置場所を決定するまでには、様々な困難に直面したそうです(第1候補地は道路の下、第2候補地は私有地など・・・。フィールド調査ならではです)。データ取得環境が整備されつつあり、今年度はこれらの観測地域で本格的にデータが取得されていくとのことでした。


飯田プロジェクト会議の様子

飯田プロジェクト会議の様子

つづいて、久保グループリーダー(東大)が率いる解析グループは、今後取得されるデータを前に、事前準備として、タイのメラオ灌漑システムなどのデータを元に、解析に必要となるシミュレーションモデルの構築を進めていました。シミュレーションモデルのデモがあり、今後データ取得が進むと、各地域のシミュレーションが行われるようになります。
つづく、社会経済グループを率いる丹治グループリーダー(農村工学研究所)からは、農業水利サービスの価値評価手法となる客観的指標について検討するための文献調査の結果や農家・市民が期待する農業水利サービスのニーズ調査の結果などの報告がありました。耕作面積の広さと水管理時間は反比例の関係にあるという結果が示されたり、水管理におけるService-dominant logicによる価値共創の適用可能性などについて興味深い示唆がありました。


グループの発表最後は、溝口グループリーダー(東大)率いるインタフェース開発グループの報告です。昨年度は、対象地域への聞き取り調査を行い、配水管理業務に問題があることを見いだしました。現在、配水管理の問題を改善するため、携帯端末による配水業務支援システムを開発中です。試作機が作成されており、実際に操作してみました。今後、既存の情報技術などを取り込んで、地域の人たちがリアルタイムに情報を共有し、価値共創へとつながるインタフェースを開発していくことを目指しています。


各グループの熱のこもった発表の後、小休止を挟み、さらに熱のこもった全体討議が行われました。全体討議では、農業水利サービス科学のあり方(農業水利サービスによる社会革新は起こるか、どうすれば農家に受け入れられるのか、など)と、その課題について議論されました。山岡氏(国際農林水産業研究センター)から農業水利サービスに対して期待を持っている自治体があるなどの話が出ると、議論はますます活発化していきました。農業でのサービスの価値指標として人間関係の要因を取り込むのがよい、農業規模に従った評価指標を作るのがよい、受け入れや革新を阻害する要因を調べ、その排除の方策を立てるのがよい、など活発な意見交換が行われました。


最後に、中嶋氏(東大)から「農業水利」を「農業水利サービス」という新しい商品とすることで、これまでの考え(農業用水の権利関係は政治的な問題によるところが大きく、変化しがたい)を克服できる可能性について示唆がなされ、参加者全員の期待感も増しました。それによって目指すべき方向性が明確になり、プロジェクト全体の意思統一がとれたように思えたサイトビジットでした。今後に期待しております。


議論終了後のすっきりした皆さんの表情を写真に残しておきました

議論終了後のすっきりした皆さんの表情を写真に残しておきました