問題解決型サービス科学研究開発プログラム 【国立研究開発法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター】

平成29年3月で本プログラムは終了いたしました。

トピックス

「サービス・デザイン 国際ワークショップ ~モノのデザインからコトのデザインへ サービス・デザインの可能性を探る~」 開催報告

日時:平成23年12月20日(火) 9:00~16:40
会場:政策研究大学院大学1階 想海樓ホール(東京都港区六本木7-22-1)
主催:(独)科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(RISTEX)
    文部科学省 科学技術政策研究所(NISTEP)

12月20日、政策研究大学院大学1階・想海樓ホールにて、「サービス・デザイン 国際ワークショップ」~モノのデザインからコトのデザインへ サービス・デザインの可能性を探る~を開催しました。このワークショップは、独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(JST RISTEX)と、文部科学省 科学技術政策研究所(NISTEP)との共催で行われました。

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【ワークショップの狙い】
 企業によるデザインへの取り組みは、かつては形あるものを対象としていましたが、近年になって、その対象領域が広がりつつあります。この背景としては、既存の産業の枠組みでは捉えられない、製品とサービスを融合させる企業が出現したことが挙げられます。かつては価値の源泉といえばモノ(製品)でしたが、今日ではそれが、モノとヒトを包んだコト、サービスへと変わりつつあります。こうした背景から、サービスのデザインに着目する本ワークショップが企画されました。

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 歳末の寒い中、朝からの開催にもかかわらず、多数の参加者がおいでになりました。最終的には200名近い方々にご参加いただき、このテーマへの関心の高さが感じられました。

 社会技術研究開発センターの有本建男センター長による開会挨拶に続いて、同センターの斎藤尚樹企画運営室長から、社会技術研究開発およびサービス科学プログラムの取り組みについて紹介がありました。

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○第1部:「サービス・デザイン」とは何か?
       ~日米欧におけるサービス・デザインに関する研究の取り組みの紹介~


 午前中に行われた第1部では、サービス・デザインとは何か、なぜこのような動きが起きているのか、について、日米欧の研究者から発表が行われました。

Stephen K. Kwan教授(米国サンノゼ州立大学)

Stephen K. Kwan教授(米国サンノゼ州立大学)

 米国サンノゼ州立大学のStephen K. Kwan教授は、“Service Design Basics – from System to Business Modeling”のタイトルで講演を行い、サービスの価値提供(Value Proposition)に注目し、顧客とサービス提供者の価値提供モデルや、価値提供の多様性の要因に関する研究の紹介をしました。

Bruce Stephan Tether教授(英国マンチェスター大学)

Bruce Stephan Tether教授(英国マンチェスター大学)

 続いて、英国マンチェスター大学のBruce Stephan Tether教授は、“Service Design A UK Perspective” のタイトルで講演を行い、サービス・デザインにおいては、顧客経験と経済的価値の視点が共に重要であることを指摘しました。また、英国のサービス・デザインの現状について、コンサルタントや企業の取り組みについて事例を交え紹介しました。

原辰徳講師(東京大学)の講演を聞く参加者

原辰徳講師(東京大学)の講演を聞く参加者

 日本からは、東京大学 人工物工学研究センターの原辰徳講師が、「観光産業における旅行者参加型の設計:観光サービスは設計できるか?」とのタイトルで講演を行いました。原講師は、平成22年度から本プログラムで推進している研究開発プロジェクトの代表者であり、工学的アプローチを基礎にした顧客参加型の旅行設計や観光サービスの部品化・再構成の可能性について、プロジェクトの事例を踏まえた解説を行いました。

 最後の質疑コーナーでは、3人の講演者が再登壇し、会場との間で活発な意見交換が行われました。

会場との意見交換

会場との意見交換

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○第2部:先進企業におけるデザイン活動とデザイン活動の測定

 お昼休み後の第2部では、先進企業のデザイン活動事例や、デザイン活動の測定に関する研究について紹介がありました。

矢島岐(株式会社良品計画)

矢島岐氏(株式会社良品計画)

 株式会社良品計画 企画デザイン室長の矢島岐氏は、「デザインしないデザイン」のタイトルで講演を行いました。無印良品の歴史、「生活者の空間にとけ込むデザイン」など、同社のデザインについての考え方、さらには顧客との関係性を深化していく取り組みについて、豊富な事例と共に紹介が行われました。

嵩山均(株式会社ニコン)

嵩山均氏(株式会社ニコン)

 株式会社ニコン 映像カンパニー デザイン部の嵩山均氏の講演タイトルは「Nikon Design」。デジタル化の進む現代社会において、モノづくり企業であるニコンが、商品力向上・サービス価値向上に向けていかなる取り組みを行っているかについて、分かりやすく解説しました。

長谷川光一(科学技術政策研究所)

長谷川光一研究員(科学技術政策研究所)

 文部科学省 科学技術政策研究所の長谷川光一研究員による講演、 「日本企業のデザイン活動が企業業績に与える影響」は、デザイン活動が企業の研究開発やイノベーションに与える影響について、政府統計の分析結果を紹介しました。

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○第3部:企業におけるデザインの取り組みと課題、今後の研究への期待

米山茂美(科学技術政策研究所)

米山茂美総括主任研究官(科学技術政策研究所)

 休憩をはさんで第3部のパネルディスカッションでは、Kwan、Tether、矢島、嵩山、長谷川の5氏(登壇順)がパネリストとして再登壇しました。モデレータは文部科学省 科学技術政策研究所の米山茂美総括主任研究官が務めました。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

 サービス・デザインとはそもそも何か、価値創造のポイント、価値づくりとモノづくりの関係、サービス・デザインで求められる人材像やその育成、サービス・デザインの今後の課題や研究テーマについて、会場から寄せられた多数の質問への回答も織り込みつつ、活発な議論が行われました。

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桑原輝隆(科学技術政策研究所)

桑原輝隆所長(科学技術政策研究所)

 最後に、文部科学省 科学技術政策研究所の桑原輝隆所長の挨拶で、閉会となりました。

 年末のお忙しい時期に長時間、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。