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採択プロジェクト

平成20年度採択

国内森林材有効活用のための品質・商流・物流マネジメントシステムの社会実装


実装責任者  東京大学生産技術研究所  所長 野城 智也

課 題

森林日本の人工林では写真に示すような荒廃した姿を見ることがめずらしくありません。それは、人工林を継続的に経営していくための基盤が失われているため、山の手入れがなされないままに放置されている森林が増えているためです。
これは、以下のような理由によるためと考えられます。

A 林業・木材産業など供給サイドからみた課題

(1)含水率・力学特性など木材の品質を表示・保証しないまま供給・流通させている

(2)林業関係者の企業規模が小さく、かつ決済期間が長いために、仮に大量の注文を受けても、資金繰り規模が隘路になってしまう 

(3)流木一本が500円~1500円程度でしか売れずに国内林業の存立が脅かされる一方で、流通各段階で管理不十分の流通在庫を多くかかえているため、最終需要者には立木一本あたりのボリュームが13万円~15万円で取引されている。


B 木材の需要サイドからみた課題

(1)含水率・力学特性など木材の品質が表示・保証されていない。生産地も必ずしも信用できない。 

(2)必要な量を調達できない。

(3)需要者は高価額で買い取っているにもかかず、林業者には十分に費用が還流されていない。

アプローチ

このような課題を解決するため、私たちは、次のようなアプローチをとることにしました。

(1)含水率、ヤング率、及び生産地が木材個材ごとに、トレースできうる情報として表示されること

(2)木材への動産担保設定により林業者・木材産業者の資金繰りが保証されること

(3) 樹木管理DBの活用により、流通在庫が低減され、人工林を唯一の在庫場所とした、オンデマンド型の林業経営・木材産業経営がなされること

実装システム

 具体的には、地域の森林資源を活用していこうとするグループの人々と連携しながら、以下のような3種類のシステムを実装して、国内森林材を有効活用するための、品質・商流・物流マネジメントシステムの先導的雛形を形成していくことを目指します。

a.樹木管理システム

目的:立木に電子タグを取付け個体管理を行い、施業の効率化やその計画立案に役立てる。

効果:個体の品質情報等をネット上に公開することで、立木販売 、証券化の対象とし、維持管理や出材費用が調達可能に。
立木にデータが付随していることで、施業品質確保、数値的な把握の容易化、森林実態の情報に関する透明化にも貢献。

b.木材流通トレーサビリティシステム

目的:伐採から建築現場までのトレーサビリティを確保し、木材に関する安心・安全を提供

効果:流通の効率化や、トレーサビリティ情報からもたらされる生産情報をもとに、建築設計と木材供給サイドが協調して製品歩留等を向上させ、流通在庫を減少させることによって、生み出される利益を共有することができる。これにより、消費者への販売価格を下げても、流通過程の企業は勿論、山元にもより多くの収入をもたらすことを実証済。

c.木材動産担保金融システム

注文を受けた丸太を担保に、注文主の決済までの間の丸太の購入費や製材費用、運送費、加工費その他の運転資金を早期に丸太生産、製材、加工、施工などを担当した企業に支払うための短期融資制度。
電子的な登記のため手間が掛からず、かつ融資自体も必要額が設定されるだけなので、融資が実行されない限り金利は不要。急で大量の注文にも柔軟に対応できるため、手持ち現金が少ないため従来なら注文を断るようなケースでも受注できる。より低利な長期融資と組み合わせることで全体の支払金利を減少させるとともに、安定的な経営を実現する。

註 樹木管理データベースシステム、木材流通トレーサビリティシステム、木材動産担保金融システムのプロトタイプは、文部科学省リーディングプロジェクト「一般・産業廃棄物・バイオマスの複合処理・再資源化プロジェクト 廃棄物・バイオマスシステムの物流システムの開発」で開発されたものです。