H26年度 採択課題 研究機関:平成26年10月~平成29年9月 カテゴリー1 災害時動物マネジメント体制の確立による人と動物が共存できる地域の創造 研究代表者 羽山 伸一(日本獣医生命科学大学 獣医学部 教授)

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概要

日本では、災害時における動物の救助や医療の体制や研究が未発達なため、先の東日本大震災においても、被災動物との同行避難が困難となった結果、野生化や過剰繁殖といった事態も発生し、人間にとっても公衆衛生や精神衛生面における悪化等が深刻化した。災害時の動物医療体制を整備することは、動物の健康や福祉向上効果だけでなく、人の安全確保と環境保全を担う大きな役割がある。

本プロジェクトは、災害時の動物医療体制の確立を目指す我が国初の試みであり、東日本大震災での被災地域の経験や対策先進地域である米国での現地調査結果をふまえ、首都直下型地震を想定した「災害時に派遣する動物医療支援チームの育成と組織化」および「動物シェルターにおける適正飼育の推進」を実現させる。

目標

 

平常時からの集団的動物適正飼育
地域に必要なシステム
   -人の安全のため
   -地域の安全のため
   -動物の安全のため
災害時の動物救護体制の整備
災害時に出動する動物医療支援チームの組織化と人材育成

関与する組織・団体

  • 日本獣医生命科学大学
  • University of California, Davis
  • 日本医科大学
  • 日本獣医師会
  • 地方獣医師会
  • 動物救護本部
  • 自治体動物管理センター /保健所

「コミュニティ」紹介

災害時動物マネジメントを実証知見の基に構築するコミュニティ

・動物医療従事者、研究と教育の中心となる大学、実動を担う獣医師会、その活動を連携して協力する動物関連NGO、動物関連企業(ペットフード、動物医療企業など)、動物行政

・動物の健康に留意することが人の健康向上につながり、動物に対するマネジメント体制が人や地域の安全を向上する目的のため、各関連部署の役割を明確にし、災害時の適切な対応、そして事前の防災対策を講じ、このコミュニティを通して人と動物の両方が安心して暮らせる地域を目指す。

アプローチ

災害動物医療を裏付ける実証知見
-動物に関わる人の健康被害(被災地)
-地域での人と動物の関係性調査(非被災地と被災地)
備え
-災害シェルターでの動物管理調査
-平常時シェルターでの動物管理調査
-人と動物の関係に基づく地域に必要な動物マネジメントの検証
応答
-カリフォルニア大学Veterinary Emergency Response Teamとの連携
-国内動物救護活動の事例分析および実態調査
-日本に必要な災害動物医療支援チームの教育プログラムの開発
-災害動物医療支援チームの組織化と人材育成

到達点と課題

  (H27年6月現在)

本プロジェクトの到達点は、家庭動物および産業動物と人間の関わりについてのフレームワークを提示し、それを担える人材育成を行うことによって、災害発生時から復興に至るあらゆる場面で地域の安全と健康を確保できる社会の構築である。
しかし、現状では災害時における動物マネジメントの実態を示すエビデンスが不足し、また関連する法制度や体制が未整備である。

アピールしたいこと

 

 本プロジェクトでは、動物のためだけではなく人の生命や地域の安全を守るための災害時動物マネジメントを目指しており、この点は従来にはなかった発想である。また、わが国では災害時における動物マネジメントに関わる科学的な調査や必要な人材育成がこれまではほとんど実施されてこなかったため、本プロジェクトでは災害獣医学の先進専門機関であるUCD(カリフォルニア大学デービス校)と連携し、世界最先端のシステムを学びつつ、日本独自の仕組みや人材育成方法を明らかにする。

メッセージ

これまでわが国の災害対策では、動物に関わる問題解決をほとんど重視してきませんでした。しかし、イヌやネコなどの家庭動物は今や家族同然に扱われ、また産業動物も農家にとってかけがえのない存在で、その救助は動物を救うだけではなく、飼い主の生命や生活を守ることにつながります。このプロジェクトでは、人と動物が共存できる社会とは何かを明らかにし、その社会を実現するための仕組みや人材育成に取り組みます。

リンク

アウトカム(プロジェクトの成果)開く

日本では災害時の動物管理体制が極めて手薄です。東日本大震災のときにも避難所や動物を保護するシェルターで多くの問題が発生するとともに、牛や豚など産業用動物、動物園や水族館等の飼育動物、学校飼育動物など、数十万頭の動物が被災しました。このプロジェクトでは、災害による動物被害の実態を把握し、人と動物が安心して暮らせる平時からの防災対策と動物シェルターの防災対策を立案。さらに、災害時に派遣する動物医療チームの育成と組織化にも取り組みました。

Point1
海外での先行事例調査をもとに動物医療支援チームを整備しました。

災害時に動物を保護する動物救護シェルターでは、人材が不足し、動物も過密状態になるためストレス性の疾患を発症するなど動物にとって厳しい状況になります。日本では、これまで災害などが発生したときに、適切な集団管理法や集団に対処できる獣医療が導入されていませんでした。そこで、災害獣医学で世界をリードする米国で災害動物医療体制や人材育成の現地調査を実施し、それを踏まえ災害時に派遣する動物医療支援チーム(VMAT)という日本初の仕組み整備に取り組みました。

Point2
動物を適切に管理するための指針を提案しました。

被災地の動物救護シェルターの調査も実施し、収容環境や健康状況、譲渡先の確保、人員体制などを分析しました。その結果、動物は過密状態になると、ストレス性の疾患や感染症を発症していたことが判明。一方で、人員は不足し、過度な収容で起こる多頭飼育崩壊の発生が見られました。担当者の獣医療知識も不足し、サポート体制は確かに貧弱でした。
 この調査をもとに、犬と猫を別棟での収容、猫の隠れ家確保、ボランティアへの訓練、ワクチン接種などを含め平時から動物シェルターで動物が健康でいられる健康管理指針、収容管理指針と災害時にも健康でいられる適正飼養指針、疾患管理指針を発案し、テキストの標準化を試みました。

Point3
標準化したテキストにより人材を育成

標準化したテキストにより日本版VMATの標準的な人材育成カリキュラムを開発し試験運用を開始しました。全国7カ所の獣医師会と協力しVMAT講習会を実施。熊本地震では、日本で初めてVMATが派遣され、福岡と群馬VMATが15日間、延べ60人が現地で活動しました。このプロジェクトは熊本地震を経験し、その課題から、自治体をまたいだ広域支援体制の整備にまで発展できました

Point4
飼い主の問題点をつきとめ、平時の動物管理体制の改善を提案しました

どの災害でも被災し避難所に動物を連れて行くと苦情の声があがります。一方で、調査によると動物を飼っていない人たちも災害時にペットは人と一緒に避難するべきだと思う人が多いことがわかってきました。苦情が発生する背景を突き止めるため、本プロジェクトでは家庭動物の飼い主に日常の飼い方、そして動物を飼っていない人たちにアンケート調査を実施。すると平時から猫の飼い主は所有者を明示せず、キャリーケースの準備もないなどの問題があることが明らかなになりました。またアレルギー等の理由で、動物と人が安心して避難するためには動物との空間を別にする体制も考慮する必要性がありました。
 以上の調査などをもとに平時の行政と地元獣医師会との連携強化や動物の所有者明示、飼い方指導、同行避難の準備や不可能だった場合の受け皿確保などサポート体制を提示、また被災動物削減対策も提案しました。

 
残された課題

プロジェクトの目標はおおむね達成できましたが、成果を社会で生かすためには、VMATの実績積み上げと共に、行政などのとの協力体制の整備、活動の裏づけとなる法制度改革などを進める必要があります。

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