H24年度 採択課題

研究期間:
平成24年11月~平成27年10月

カテゴリーII

災害対応支援を目的とする防災情報のデータベース化の支援と利活用システムの構築

研究代表者
乾 健太郎(東北大学大学院情報科学研究科/電気通信研究機構 教授)

図:日本地図

写真:乾 健太郎


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概要

東日本大震災の災害対応においては、防災情報の集約が紙媒体を主体としたものであったために、災害対応従事者間での効率的な情報共有がなされず、被災者ニーズの正確な把握や迅速・公平な支援ができないという大きな問題があった。近い将来発生が予想される首都直下地震、東海・東南海・南海地震等への備えとして、これらを改善し、災害対応を支援する情報システムを構築することは急務の課題である。本プロジェクトでは、被害情報や災害対応記録などを効率的にデータベース化することにより、災害対応や事前の訓練における効果的な利活用を実現するとともに将来への教訓を引き出す基礎データとして蓄積することを目的とする。具体的には、多様な媒体・様式を介して集まってくる防災情報に対し、東日本大震災被災地での教訓もふまえ、自然言語処理等の技術を活用してこれを構造化する作業を支援、効率化する仕組みを構築する。これにより、災害対応現場における情報入力のボトルネックを解消し、自治体等における状況認識の共有、人的リソースの有効活用に寄与することを目指す。

目標

防災情報の共有で防災関係者コミュニティをつなぐ
・情報システムを通じて、防災関係者が防災情報を共有し、状況認識を統一できる仕組みを構築する

関与する組織・団体

  • 東北大学 電気通信研究機構
  • 東北大学 大学院情報科学研究科
  • 富士常葉大学 社会環境学部/環境防災学部
  • 日本電信電話株式会社NTTセキュアプラットフォーム研究所
  • 京都大学 防災研究所
  • 気仙沼市、宮城県など東日本大震災被災自治体

「コミュニティ」紹介

本プロジェクトにおける「コミュニティ」の定義は、防災関係者のプロフェッショナル・コミュニティです。効果的な災害対応の実現には、関係機関や自治体の各部局が一同に会して効率的な情報共有をおこないながら、対応に従事できるような環境を整えることが重要になります。迅速な対応が求められる災害場面において、県と市町村のような「縦」の連携に加え、外部から見えにくい組織内の部局間の「横」の連携を支援します。災害対応を支援する情報システムを構築し、事前の訓練を通してその検証をおこないながら、防災関係者のプロフェッショナル・コミュニティをつなぐことを目指します。本プロジェクトでは、防災関係者のプロフェッショナル・コミュニティとして、東日本大震災を経験した宮城県・気仙沼市役所からご協力をいただいています。震災当時の災害対策本部や現場の対応記録など、さまざまな生のデータをご提供いただきました。震災後の気仙沼市訓練では、被災した職員自らが経験を活かして作成したシナリオに基づき、対応の課題抽出と共有がおこなわれています。これらの貴重な実務データの分析と定期的なフィードバックを通じて、被災自治体における災害対応の教訓・知見を洗い出し、災害対応におけるコミュニティをつなぐ仕組みの構築に取り組んでいます。奈良県橿原市のご協⼒をいただき、実証実験としてシステムを導⼊した総合図上訓練を実施いたします。

到達点と課題

  (H26年2月現在)

アピールしたいこと

・防災情報を集めて共有することで、コミュニティをつなぐ
・データを与えてシステムが進化

メッセージ

東日本大震災の災害対応においては、防災情報の集約が紙媒体を主体としたものであったために、災害対応従事者間での効率的な情報共有がなされず、被災者ニーズの正確な把握や迅速・公平な支援ができないという大きな問題がありました。近い将来発生が予想される首都直下地震、東海・東南海・南海地震等への備えとして、これらの問題を改善し、災害対応を支援する情報システムを構築することは急務の課題となっています。本プロジェクトは、被害情報や災害対応記録などを効率的にデータベース化することにより、災害対応や事前の訓練における効果的な利活用を実現するとともに将来への教訓を引き出す基礎データとして蓄積することを目的としています。具体的には、様々な媒体・様式を介して集まってくる防災情報に対し、東日本大震災被災地での教訓もふまえ、自然言語処理等の技術を活用してこれを構造化する作業を支援、効率化する仕組みを構築します。これにより、災害対応現場における情報入力のボトルネックを解消し、自治体等における状況認識の共有、人的リソースの有効活用に寄与することを目指します。

リンク

アウトカム(プロジェクトの成果)開く

災害対応では、様々な形で刻々と集まってくる膨大な情報の処理を効率よく処理し、迅速で的確な意思決定を行うことが求められますが、自治体の災害対応現場では、いまだに情報の伝達・共有手段の多くを紙やファックス、ホワイトボードに頼っています。理由は、オンライン化により業務がどのように変わるか、どのようなメリットがあるかを具体的に自治体関係者らに示せていないことが考えられますが、本プロジェクトでは、各機関・部署がリアルタイムに情報を処理し、状況認識を統一して連携した災害対応を実現できるように支援する新しい災害対応情報処理モデルの構築を試みました。

Point1
効率的な情報共有を支援する仕組みを開発しました。

災害時に報告される情報は、死者・行方不明者などの人的被害、建物の被害、避難状況、避難所の開設、ライフライン、食料や物資に関する情報など多岐にわたります。そこで、東日本大震災の被災自治体より提供された災害対応で実際に活用したデータなどを分析。こうしたデータを防災関係者間で効率的に共有するためのデータベースを開発しました。具体的には、自然言語処理と機械学習法を使い、報告形式が類似する基本的な情報であることが多い定型情報の自動処理化を進め、各自治体の業務体制に合わせてデータベースの構成を変更できる仕様にしました。

Point2
災害対応の管理をスムーズにできる仕組みを開発しました。

災害対応時にムダ・ムラ・モレのない災害対応を行うには定型情報だけでなく、具体的な指示や対応など多様な形式をとる非定型情報を効率的に処理する必要があります。災害対応業務の情報伝達を分析すると75%が非定型的情報のやりとりであることがわかりました。短時間に様々な案件の情報が飛び交う災害対策本部では、情報がオーバーフローすると個々の対応に深刻な混乱が起こり、業務が停滞します。そこで、非定型情報を効率的に処理し、災害対応の情報管理を支援するシステム開発に取り組みました。過去情報の引き出し方、情報どうしの関連づけ、表示方法、検索などを工夫し使いやすい設計にしました。

Point3
災害対応情報システムを有効活用するための環境を整備しました。

訓練の質は、災害時の出来事やトラブルなどの状況を再現できるかに左右されます。東⽇本⼤震災をはじめとした各種災害でのシチュエーションを収集し、訓練で利⽤するための状況付与データベースを作成しました。また、変化に対応できる実用的な訓練にするには、実際の流れに近づけた実体の伴った状況付与の中で訓練する必要があります。そのベースになるストーリーを作成する手法を開発。①過去に発生した災害に関する情報を各部局で集め、その情報を地図上で可視化して想定を分析、②分析した想定を、警戒~発災~対応資源~被害~その後の順にストーリー化、③そのストーリーを全体で共有し、背景についての状況認識を統一、④各部局がストーリーにそって課題となりうる事案(訓練項目)を作成、⑤その訓練項目に応じた細やかな状況付与の作成、以上のステップで進めることが有効だと確認できました。

Point4
奈良県橿原市の協力のもと実証実験を行いました。

防災対策に力を入れる奈良県橿原市の協力を得て、開発したシステムを導入した総合図上訓練を実施しました。運用も含めた標準的な処理手順を整備することで、従来よりも効果的な非定型情報の進捗管理と事案管理が可能だと確認できました。

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