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ASPIRE日独共同公募
大森・Gross課題≪2025 Symposium of the JP-DE ASPIRE “Neutral-atom QC”≫ 参加報告
先端国際共同研究推進事業
2025年2月から研究開始したASPIRE日独共同公募・量子分野の2課題のうち、大森賢治教授(自然科学研究機構分子科学研究所)とChristian Gross教授(ドイツ・チュービンゲン大学)による課題「冷却原子型量子コンピュータ」が主催する国際シンポジウムが11月25日から28日にかけて、岡崎市の分子科学研究所にて開催されました。
このシンポジウムは、中性原子量子コンピューティングをテーマとする大森・Gross課題の日独の研究者が一堂に会するもので、研究期間5年間の間に日本とドイツで隔年開催される国際会議の第1回シンポジウムとして、長期的な協力関係と研究者交流の基盤を築く目的で実施されました。さらに量子コンピューティングの企業研究者や本イベント用ウェブサイトから応募した大学院生ら若手研究者も加わり、領域研究者の研究交流の場となるよう、主催側の工夫が随所にみられました。
開会にあたり、宮野健次郎ASPIRE運営統括および川上則雄ASPIRE日独共同公募研究主幹、そして大森賢治教授の挨拶があり、ASPIRE事業の概要や日独のこれまでの国際共同研究の歴史、ドイツでの各々の個人的なエピソードも交えられ、日本とドイツの研究者が代々受け継いできた共同研究の歴史が本事業の基盤の一つであることが再確認されました。
そして200名収容のホールは研究者で満席となり、大森・Gross課題の研究代表者や共同研究者らが最新の知見を発表し、質疑応答では日本側とドイツ側のメンバー間で熱のこもったディスカッションが展開されました。
加えて会場にはポスターセッションの場も設置され、大学院生ら若手研究者は同じ領域で研究する同世代やそれ以上のキャリアの研究者らと共通の話題で議論しつつ、情報共有の機会を積極的に活用していました。またブレイクタイムにはコーヒーと軽食が用意され、リラックスして会話を楽しんでほしいとの主催側の配慮がここでも感じられました。既にドイツ側研究機関へ派遣された学生もおり、旧知の仲となったメンバーの談笑風景があちこちでみられました。
日独共同公募は、日独双方のファンディング機関が双方の国のトップ研究者から構成される研究課題を選出し、国際頭脳循環に資する金銭的支援を行うことで国際共同研究を力強く後押しする事業です。研究開始してまだ1年未満ではあるものの、大森・Gross課題では競争が激化する量子コンピューティング研究で、群を抜いた研究力を発揮するチーム作りを目標の一つに掲げています。本課題がこれから研究の道を究める若手研究者を含めた日独の研究者にとって、研究活動の原動力となる支援の場となり求心力を持続させること、そしてこの日独チームの共同研究が比類のない相乗効果を生み、領域の中核となる研究者コミュニティへと成長することが、ASPIRE共同公募が目指す領域最先端の研究者ネットワークの構築や国を超えて活躍できる研究者人材の育成に結びつくものと期待されます。
文:国際部 先端国際共同研究推進室 箕輪、根岸
掲載日:2025年12月25日

