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生物工学からAI融合まで - ASPIREを通じた国際連携と人材育成の展望 -
国際部 先端国際共同研究推進室
2025年11月4日、ASPIREバイオ分野の日米Global Centers共同公募および日英共同公募で研究活動中のPI(研究代表者)らが一堂に会し、清水浩PO(研究主幹)をモデレーターとし、宮野健次郎PD(運営統括)、アドバイザー同席のもと、オンラインによる領域会議を実施しました。
前半は全8プロジェクトのPIによる研究進捗報告で、渡航した研究者自身による活動や滞在先での研究交流から得た気づきなどについて発表がありました。
後半のディスカッションでは、日本の強みと課題、そして未来への展望が以下の3つのテーマに沿って多角的に議論されました。
テーマ1 エンジニアリングバイオロジー分野で日本が国際的なハブとなるためのアクション、戦略的推進とは
微生物工学・発酵学分野の国際連携については、日本には企業を中心に強固な基盤があるものの、合成生物学やAI技術との融合が今後の競争力強化に不可欠とされました。Global Centers参加国の米、英、フィンランドなどのバイオファンドリー機関との連携を図る一方で、日本の研究レベルの高さに見合った国際的なプレゼンスのさらなる向上が重要とされました。
また日本の研究者は専門の狭い領域に細分化されて活躍している現状を踏まえ、分野横断的な連携を促進する観点からも、新しい分野であるEngineering Biologyの定義づけや新しいコンソーシアムの形成が重要との議論がありました。
テーマ2 グローバル人材の育成に必要なことは何か
グローバル人材の育成に不可欠な渡航について意見が交わされました。短期渡航から長期渡航へと繋げるには、受入機関の体制や文化への理解が不可欠との意見がありました。英国では、自国の学生の教育が優先される、授業料やベンチフィー(間接費)が高額である、PIのラボ不在が多いなど、日本から渡航する研究者にとって厳しい環境もあるものの、それを乗り越えることで得られる学びも大きいとされました。
テーマ3 国際的拠点を形成するためのアイデア
テーマ1と同様、バイオとAIの統合が今後の研究の鍵となるとされました。サバティカル制度や大学間連携を活用した国際的なリサーチハブの形成が進められているところですが、東京に拠点を持つことの意義も議論され、ASPIREの支援制度の柔軟性を活かした継続的な国際協力と若手育成への期待が高まっているとのコメントがありました。
こうした議論を受け、宮野PDは「ASPIREの本質を再確認した。活動の推進に困難がある中でも、プログラムの柔軟性がそれを乗り越える力になる」と述べ、開始前から築かれていた国際的な関係性が、プロジェクトを通じて「地中から地上へ芽が伸びるように」可視化されてきたことを喜ばしく感じていると述べました。
領域会議に参加した各PIからは、学生主導によるワークショップの開催など、研究者育成の好例が複数挙げられ、このような主体的な取り組みが今後の国際研究の新しいスタイルを形づくっていく可能性があると再認識されました。
日本の研究環境は、規模やスタイルにおいて欧米や中国とは多くの面で異なっています。その中で国際的な地位や成果を上げるためには、日本の文化的背景を活かしつつ、変化への対応力を高める必要があります。
清水POからは「ASPIREのようなプログラムがそのきっかけになることが期待されます」とのコメントがありました。
宮野PDは「ASPIREを通じて新しいトレンドを創出し、より開かれた研究環境を築いていくことが今後の課題である」と締めくくりました。
この領域会議は、バイオテクノロジー分野の第一線で活躍する研究者らが意見を交換する貴重な機会となり、今後の研究課題推進のみならず、国際頭脳循環の促進や若手研究者人材の育成をさらに進めて行く上での重要な視点がいくつも得られました。ASPIREではこれからも研究者同士のシナジーを生むような活動を続けていきます。
文:国際部 先端国際共同研究推進室 豊福、大川、箕輪

清水POを中心に、第一線で活躍するPIが一堂に会しました。
米国、英国から登壇したPIもいました。
掲載日:2025年11月11日