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JURC2025 at Stanford
ASPIREセッションを開催して
国際部先端国際共同研究推進室
2025年7月28日~30日の3日間、JURC2025(日米研究連携促進週間/Japan-US Research Collaboration Week 2025)が米国スタンフォード大学にて開催され、ASPIREは7月29日午前中にBeckman centerで2時間のセッションを実施しました。
サンフランシスコ・ベイエリアは日本の猛暑から一転、肌寒いくらいでした。
JURCは、日米間の研究交流のための強固な基盤を構築することを目的として2021年に開始されて以来、専門家によるシンポジウムや実践的なワークショップなどを通じて、200名を超える研究者、政策立案者、産業界のリーダーなどからなるダイナミックなコミュニティを構築してきました。参加者はノーベル賞受賞者から、共同研究を模索する新進気鋭の学生まで多岐にわたります。
プログラム:https://www.jst.go.jp/inter/washington/stanford2025/docs/program2025.pdf
ASPIREセッションは今回、『Maximizing impact through strategic networking among established researchers: Creating the leaders of tomorrow through Japan-US Talent Mobility』と題し、事業の紹介とともにトップレベルの研究者から学部生まで幅広い登壇者を迎え、日頃の取組みの成果と米国での研究についての意見交換を実施しました。
前半は、ASPIREで現在活動中のプロジェクトから、3名の研究代表者(PI)が国際共同研究や人材交流の取組みとこれまでの成果について発表しました。
マテリアル分野でPIとして活動中の天野浩さん(名古屋大学)は、オンラインによる登壇で、ASPIREの支援を最大限活かし米国などへの長期滞在を可能にする「3+3モデル」や「1000日プラン」などのユニークな仕組みを紹介しました。天野さんの共同研究相手である米国側PIのスラバンティ・チョウダリさん(スタンフォード大学)は、大学付近やシリコンバレーには、SLAC*をはじめとする重要なラボがあり、共同研究を歓迎する文化がある、日本との連携で成果を出している、と話しました。
半導体分野のPIで自らスタンフォード大学で研究を進めている小菅敦丈さん(東京大学)は、最先端技術のスタートアップやビッグテックに囲まれたこの地に実際に住んで研究することの価値の大きさについて熱く語りました。
後半は、米国でキャリアを積んでいる准教授から学生まで4名の若手が登壇し、それぞれの活動や将来展望について発表しました。会場からは、なぜ日本では海外で挑戦する若者が少ないのか、女子学生へのSTEM教育についての見解は、など核心を突く質問が出て、時間が足りなくなるほどで、若手の意見への関心の高さがうかがえました。
続く座談会形式での意見交換で、米国での研究環境の特徴として複数名が挙げたのが、文化的なおおらかさやリラックスした雰囲気についてです。チームビルディングがしやすく、新しいアイデアや分野横断のコラボレーションが生まれやすいとの意見で一致していました。
スタンフォード大学教授の若槻壮一さんは、登壇者の一人で筑波大学からスタンフォード大学へVisiting Scholarとして滞在している横井駿さんを自身の研究室に受入れた経緯として、JSTのCREST研究総括時代に知り合った光武亜代理さん(当時、慶應義塾大学)からの紹介だったといいます。横井さんは、これからは日本の若手の海外志向を積極的にサポートしたいとの意欲を語りました。ASPIREが目指す研究者のネットワーキングや若手の育成は一朝一夕には成し遂げられませんが、こうしたエピソードには明るい兆しを感じます。会場からも、若手研究者が早期に留学を経験することの重要性や、それを支援する体制の充実が求められているといった意見が寄せられました。
今回のセッションは、登壇者のみなさんと事前に顔合わせの会を持ち、座談会の回し方などを綿密に調整しました。参加者のみなさん同士のコネクションも生まれており、ASPIREによる支援のひとつの形として成功だったと感じています。
*SLAC National Accelerator Laboratory(SLAC国立加速器研究所):1962年設立、米国エネルギー省(DOE)が所有し、スタンフォード大学が運営する実験施設。

座談会の様子
左から 若槻さん(スタンフォード大学)、コーチさん(パデュー大学)、
横井さん(スタンフォード大学)平本さん(ノースウェスタン大学)、
中村さん(スタンフォード大学)、司会の箕輪さん(JST国際部先端国際共同研究推進室)
文:国際部先端国際共同研究推進室 豊福
掲載日:2025年08月05日