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第7回国際ニワトリ学術集会 JST共催セッション“Live cell imaging”(Chick 7: Avian Model systems, International chick meeting)開催報告
2012年11月17日(土) ~2012年11月18日(日)  名古屋大学、ホテルルブラ王山


講演者の様子


講演に聞き入る参加者たち

さきがけ研究領域「生命システムの動作原理と基盤技術」における研究課題「指の個性の決定メカニズムの定量発生生物学による解明」(さきがけ研究者:鈴木孝幸 名古屋大学大学院理学研究科 助教)において、国際ニワトリ学術集会の中でJST共催セッション“Live cell imaging”が、名古屋大学とホテルルブラ王山にて11月17日、18日の2日間にわたり開催されました。本セッションは京都大学大学院理学研究科、高橋淑子教授(CREST領域「人工多能性幹細胞作製・制御等の医療基盤技術」研究代表者)と鈴木孝幸助教が議長を務め、参加登録者188名、口頭発表8件、ポスター発表93件を得て、成功裏に終了しました。

ニワトリ胚は胚操作が容易で生きている胚を外から観察出来る事から、細胞レベル・組織レベルでの器官形成を研究する上で最もすぐれたモデル動物の一つです。近年のニワトリ胚を用いた研究手法は、ニワトリーウズラのキメラ胚を用いた古典学的解析方法からトランスジェニックニワトリ作製法の開発や新しい遺伝子導入ベクターの開発で飛躍的に発展しています。このような新しい解析手法は、ニワトリ胚の中で生きたままの細胞の状態をより詳細に、正確に捉える事に成功しており、神経疾患や免疫などの遺伝病の原因の解明や私たちの体が作られていくメカニズムを明らかにすることに貢献しています。

本JST共催のシンポジウムでは特に生きたままの細胞の状態を観察するライブセルイメージングに注目した講演を行い、情報交換と討論を行う事を目的としています。また、国際ニワトリ学術集会というニワトリを研究材料として扱っている世界の研究者が最も多く集まる場で研究内容を発表することにより、発生の分野に限らず畜産、遺伝、資源などの分野の研究者と一緒に新しいscienceを生み出していこうとする狙いもあります。本セッションは日本講演者4人(メラノーマ、PGC、肢芽の発生、血管形成)と外国人講演者4人(新規の遺伝子導入ベクターの作製、トランスジェニックニワトリ、突然変異型のニワトリの解析、初期発生)と幅広い領域の研究者を招いて行われました。それぞれ異なったユニークな顕微鏡を用いて各研究者が観察を行っており、参加者からは多くの質問が出ました。多くの研究室では共焦点顕微鏡を用いて細胞を観察していますが、ニワトリ胚は細胞集団全体を解析する場合が多いので、共焦点顕微鏡以外のマクロコンフォーカル顕微鏡などの比較的大きな領域を観察できる顕微鏡を用いる方が研究に適していることが多い事が分かりました。また変異体などの資源としてのニワトリを今後管理していく施設の重要性が改めて強調されました。国内では名古屋大学の鳥類バイオサイエンス研究センターだけが日本における有用な鳥類変異体の収集・繁殖を行っています。アメリカやフランスなどではこれらを管理する施設が古くからあり、日本における管理施設の整備の遅れが改めて浮き彫りになりました。また細胞の観察をするときには、これまでウィルスや電気穿孔法を用いた蛍光タンパク質を発現する手法が用いられていましたが、今後はそれらのタンパク質を発現している遺伝子導入ニワトリを研究に使用する有用性が議論されました。これらを管理するための施設も上記のように必要であり、国内におけるリソースの整備の必要性が強く感じられました。さきがけの研究課題に関しては、発光顕微鏡を用いて細胞内のシグナル伝達量を組織レベルでモタリングする発表を行い、今後はどのようにして細胞レベルでのシグナル伝達の違いが形態の違いに結びついていくのかを解析する必要がある等、多くの議論をして頂きました。講演後、意見交換会でも議論は続き、セッションは終始大盛況でした。

クロージングでは「今後は研究分野を超えて、特に基礎研究と畜産分野の融合が重要である」との声明があり、参加者全員からの同意の拍手で本会は閉幕となりました。


参加者の写真