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SATREPS:ボルネオの環境問題を見て考えるツアー参加報告
2012年3月3日~9日 インドネシア

塩寺さとみ
北海道大学 サステイナビリティ学教育研究センター 博士研究員


熱帯泥炭地水路での測量実習
(水準測量)風景。

地球規模課題国際科学技術協力プログラム(SATREPS:サトレップス)「インドネシアの泥炭・森林における火災と炭素管理」プロジェクト(代表:大崎満 北海道大学大学院 農学研究科教授)では、土木学会、明治学院大学、松蔭大学及びパランカラヤ大学等の協力を得て2012年3月3日~9日にかけて、調査地であるインドネシア中部カリマンタン州パランカラヤ市近郊において、環境問題に関心のある学生・社会人を対象とした、「ボルネオの環境問題を見て考えるツアー」を実施した。このツアーは、途上国の環境問題の現場を視察し、現地の大学の研究者や学生、および、国際協力に係る行政官や技術者との学術研究交流や国際交流を行うことを目的としたものである。

ツアーの実施にあたっては、プロジェクトメンバーの研究者の専門性を生かした特色のあるカリキュラムを取り入れ、インターネット等多様な媒体を通じて日本全国から広くツアーの参加者を募集した。19名の参加者は、高等専門学校の学生、大学の学部生、修士課程・博士課程学生、一般社会人と多岐にわたっており、その専門も、文系・理系という枠組みにとらわれず、経済学・観光学・生態学・建設工学など様々であった。すべての参加者が、それぞれの視点から環境問題に高い関心を持ち、目的意識を持って参加したのが印象的であった。

ツアーでは、インドネシア政府による農地開拓計画「メガライスプロジェクト」によって開発された泥炭地における泥炭火災の実態、生物多様性の揺籃ともいえる熱帯泥炭湿地林とオランウータン保護地の見学、砂金採掘にともなう水銀汚染の現場を視察した。また、パランカラヤ大学において、熱帯泥炭湿地林の開発と地球温暖化・生物多様性との関連に関する一連の講義を受け、質疑応答を通じてこれらの環境問題に対する理解を深めた。

ツアーでの体験を通して、インドネシアで現在起こっている環境問題について実地で学ぶことができ、環境問題に興味を持っている仲間たちと議論を深めることで、参加者にとっては非常に貴重で有意義な体験になった。研究者側にとっても、教育やアウトリーチ活動の重要性を再認識するよい機会であった。なお、本スタディツアーの報告は、日本熱帯生態学会ニューズレター No.88(8月25日出版予定)、No.89(11月25日出版予定)上で近日公開予定である。


熱帯泥炭湿地林。雨期のため、林床は水で覆われている。

  • 【参考資料等】