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LOTUS Programme 招へい者の集い開催レポート

7月28日(月)、インド若手科学頭脳循環プログラム(LOTUS Programme)「招へい者の集い」が駐日インド大使館(東京都千代田区)にて開催されました。

本イベントは、2025年度開始の「インド若手科学頭脳循環プログラム」の試行版「2024年度インド若手研究人材招へいプログラム」に採択され、現在、日本全国の大学・研究機関などで研究活動を行っているインドの若手研究者らが一堂に会し、相互交流を深めることを目的として企画されたものです。

冒頭の主催者挨拶では、科学技術振興機構(JST)橋本和仁理事長から、35度を超える猛暑のなか、北海道から九州まで各地から集まったインドの大学院生・ポストドクターの皆さんに向けて、歓迎と激励の言葉が贈られました。そして、シビ・ジョージ駐日インド大使から、温かなビデオメッセージが届けられました。

■科学技術振興機構(JST)橋本和仁理事長の挨拶

「本日のイベントは、LOTUS Programmeの最初の参加者の皆さんが集まる重要なマイルストーンです。昨年採択された55名のうち42名がここに集まっていることを大変嬉しく思い、一人ひとりに心より歓迎の意を表します。
日本とインドは、科学技術イノベーションの分野で、より深く、よりダイナミックなパートナーシップを築くための大きな可能性があります。LOTUS Programmeを通じて、私たちはコラボレーションの新たな道を開き、長続きするプロフェッショナルな関係や友情を育むことを望んでいます。

今年は、日本とインドの科学技術協力協定が結ばれてから40周年を迎えます。この重要な節目を祝うために、両政府は2025年を「日印科学技術交流年」と定めています。JSTは本年よりLOTUS Programmeを通して、約300人のインド大学院生等の招へいに係わる公募を開始したところです。このプログラムに参加するインドの若手研究者の皆さんには、今後の研究キャリア構築の第一歩として記憶に残る経験をしていただきたいと思います。インドと日本の強力なパートナーシップに向けて、共にこの一歩を踏み出しましょう。」

■シビ・ジョージ駐日インド大使のビデオメッセージ

「私は、このLOTUS Programmeが鍵となって、インドの若い研究者たちが日本で先進的な研究を経験し、日本とインドの第一線の研究者から指導が受けられることを期待しています。こうした経験を通じて、両国の将来に良い関係が築かれます。来日してから過去2年半の間に、私は日本の47都道府県すべてを訪問し、60以上の大学や研究機関と関わりました。その中で、日本の技術の卓越性に加えて、一つの共通したことを目にしました。それは、日本の科学技術の現場における「インドと協力したい」という熱意です。
日印がお互いの科学技術を生かして協力することで、大きな世界的問題の解決にも貢献するでしょう。そして、日本が特に半導体産業に力を入れていることも嬉しく思います。これにより、日印が共に協力発展する機会がさらに開かれます。今後のプログラムの成功を願っています。」

■在日インド国籍大学教員による講演

イベントには、日本を拠点として最先端の研究をリードするインド国籍の教員、ナマシバヤム・ガネシュ博士(京都大学 主任研究員)とラム・アバタル博士(北海道大学 准教授)も出席されました。お二人は、それぞれプレゼンテーションを通して、「日本でキャリアを形成してきた経緯」「なぜ日本を選んだのか」などをご自身の研究紹介とともに熱く伝えてくださいました。

「スマート遺伝子スイッチ」の研究について紹介するナマシバヤム・ガネシュ博士。最も大切なのはスキルを身につけることであり、アメリカやヨーロッパなど英語圏の国だけが選択肢のすべてではないことを強調されました。

地球環境科学分野を専門とするラム・アバタル博士。日本にはグローバルな課題に貢献するための優れたアプローチ、グローバルネットワークがあることを説明されました。

真剣な表情でプレゼンテーションに集中するインドの若手研究者たち

■インドJSPS(学術振興会)同窓会会長による講演

ネットワーキングランチをはさんで午後からは、インドJSPS(学術振興会)同窓会会長のサクティ・クマール博士(東洋大学 教授)による講演「How to make your career successful !」が行われました。講演では、童話「ウサギとカメ」を発展させたストーリーから、「ライバルと競争するのではなく、お互いに困難な状況に立ち向かうことが大切」ということが強調され、将来に向けた日印協力の重要性が語られました。そして、JSPS同窓会の活動や、日本で活躍するための様々な支援体制などが紹介されました。

サクティ・クマール博士の講演

■ポスターセッション

本イベントのクライマックスは、若手研究者たちによるポスターセッションです。若手研究者たちは、各自が事前に準備したポスターを使って、現在取り組んでいる研究内容を紹介し合いました。説明をする側、それを聴いて質問する側、それぞれが相手の研究をリスペクトしつつ積極的に関わり、会場内は爽やかな熱気に包まれました。

爽やかな熱気に包まれたポスターセッション。各ポスターの前では活発な質疑応答が繰り広げられました。

■クロージングセッション

参加者を代表して、インド工科大学(IIT)ルールキー校の大学院生カルヴェイル・キラン・セバスチャンさんがスピーチを行いました。カルヴェイルさんは現在、本イベントにて講演をしてくださったガネシュ博士の指導のもと、京都大学でバイオテクノロジー分野の研究に取り組んでいます。語られたのは、LOTUS Programme によって日本で研究する機会に恵まれたことへの感謝の気持ちと、それをいつか学術分野に貢献することで恩返ししたいという決意でした。

参加者代表としてスピーチをするカルヴェイル・キラン・セバスチャンさん

最後は、科学技術振興機構(JST)さくらサイエンスプログラム推進本部 三木千尋 参与による挨拶が行われ、「未来につながる新しい道を切り開いて下さい。」という激励の言葉で締めくくられました。

閉会の挨拶をする三木参与
参加者全員で記念撮影

LOTUS Programme 「招へい者の集い」は終始、和やかな雰囲気で進行しました。
ランチタイムは本場のインドカレーを堪能しながら、日本の各地から集まった若手研究者がリラックスして、日本での研究生活について情報を交換し合い、親睦を深める貴重なひとときになりました。

●ショートインタビューに答えてくれた、参加者の声をいくつかご紹介します。

  • 愛媛大学で研究をしています。さくらサイエンスプログラムで2023年に来日し、日本の文化と松山市が大好きになり、ここで学びたいと思いました。がんばって、日本語の勉強もしています。日本の企業へのインターンシップに参加する機会も得ました。プログラム終了後も、日本の大学のポスドクを目指したいです。
  • 九州大学で数理生物学分野の研究をしています。プログラム終了後にはJSPSに申請して、引き続き、九州大学で研究を続けたいです。
  • 熊本大学でコンピューターサイエンスの研究をしています。日本の生活で困っていることはありません。すべてが新しい経験をするチャンスだと感じています。将来は、日本の企業に就職したいと考えています。
  • 東北大学で鉄鋼製造について研究しています。日本の文化が好きです。仙台の青葉祭りにも参加しました。プログラム終了後は、できればポストドクターとして日本で研究をつづけて、鉄鋼関係の企業からの求人があれば就職したいです。
  • 金沢大学で持続可能な先進的金属材料の開発に取り組んでいます。金沢の環境も日本の文化も、とても素晴らしいです。将来は、もし求人があれば、トヨタやソニーのような日本の企業に参加したいです。特にトヨタのような先進的な製造会社に興味があります。
  • 名古屋大学で研究をしています。三菱でインターンシップに参加する機会も得ました。ムスリムなので、食べ物には少し苦労していて、毎日自炊をしています。将来は、日本の企業や研究機関で、水質汚染に関する研究をしたいと思っています。
  • 長岡技術科学大学で研究をしています。日本の技術や、組織化された働き方がすごいと思いました。長岡の花火大会に参加するのも楽しみにしています。インドでのポスドクを修了したら、日本でポスドクができればいいと考えています。
  • 高エネルギー加速器研究機構(KEK)でハードウェアの組み立てに取り組んでいます。KEKにはインドにはない検出機器があり、素晴らしい体験をさせてもらっています。さらに経験を積んで、将来的に別のポジションに応募する際に履歴書にも記載できると思います。