氏名 |
所属機関 |
所属学部・学科など |
役職 |
研究課題名 |
恩田 裕一 |
筑波大学 |
地球科学系 |
助教授 |
森林荒廃が洪水・河川環境に及ぼす影響とモデル化 |
小池 俊雄 |
東京大学 |
大学院工学系研究科社会基盤工学専攻 |
教授 |
水循環系の物理的ダウンスケーリング手法の開発 |
鈴木 雅一 |
東京大学 |
大学院農学生命科学研究科 |
教授 |
熱帯モンスーンアジアにおける降水変動が熱帯林の水循環・生態系に与える影響 |
砂田 憲吾 |
山梨大学 |
大学院医学工学総合研究部 |
教授 |
人口急増地域の持続的な流域水政策シナリオ-モンスーン・アジア地域等における地球規模水循環変動への対応戦略- |
永田 俊 |
京都大学 |
生態学研究センター生態学研究部門 |
教授 |
各種安定同位体比に基づく流域生態系の健全性/持続可能性指標の構築 |
総評 : 研究総括 虫明 功臣(福島大学行政社会学部 教授)
『水循環の諸過程の科学的解明と予測に基づいた、持続的な水の利用システムの構築を目指して』
この研究領域は、本年度が第3回目(最終)の公募であった。
前世紀後半から始まった急激な人口増加と人間活動の拡大にともなう世界的な水問題、すなわち、飲料水の不足と水質問題、食糧生産のための水需要の増大と水環境の劣悪化、水災害の激化、さらには気候変動にともなう地球規模での水資源分布の変化等は、今世紀にわたってさらに深刻さを増すと懸念されている。この研究領域では、こうした問題の解決に向けて、地球規模から地域規模まで様々なスケールにおける水循環とそれにともなう物質循環の諸過程に関する科学技術的解明と予測を基礎として持続可能な水の利用システムを考究する研究を応募の対象としている。特に、世界の水問題、とりわけアジアの水問題解決に資する研究提案が期待されている。
3年目の本年度は合計34件の応募があり、その内訳は、国公私立大学から27件、国公立研究機関から3件、民間企業から2件、特殊法人1件、その他1件であった。提案の内容は、気象・水文観測に基づく地球規模あるいは地域規模での水循環過程の解明と予測精度向上に関する提案、日本国内あるいはアジア域を対象とした水循環/物質循環/生態系の実態分析に基づく水利用・水管理システムに関する提案、水質汚染物質のリスク評価や水処理システムの開発に関する提案、計測技術や観測システムの開発に関する提案、海洋深層水の利用に関する提案、気象制御技術に関する提案など、水循環領域の多面的な特徴を反映して多岐にわたっている。この研究領域の趣旨への適合性については程度の差はあるが、いずれも意欲的な研究提案であった。
それらの提案の中から、本領域の趣旨に合致し、特に優秀で独創性、必要性、有用性、実行性などの面で成果が期待できる次の5件、森林荒廃が洪水・河川環境に及ぼす影響の解明とモデル化、熱帯モンスーンアジアにおける降水変動が熱帯林の水循環・生態系に与える影響、各種安定同位体比に基づく流域生態系の健全性/持続可能性指標の構築、水循環系の物理的ダウンスケーリングの手法の開発、人口急増地域の持続的な流域水政策シナリオ、が採択された。採択された課題を敢えて「現象解明型」と「問題解決型」に分類すると、はじめの3課題が現象解明に重点があるが、水利用・水管理システムの構築に有用な情報を与えることが期待され、後の2課題が問題解決に重点はあるが、現象の解明・把握を研究の前提としている。結果として、過去に採択された12研究課題と合わせ、この研究領域において多様な分野の基礎的研究と応用的研究をバランスよく採択できたと考えている。いずれの研究課題も世界の、とりわけアジアが抱える水問題に関する基礎的現象の解明と課題解決に向けた水利用・水管理システムの構築について、日本から発信できる成果が期待できる。
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