微細ロッドYb:YAGレーザの短パルス高出力発振に成功
科学技術振興事業団(理事長:沖村 憲樹)と福井県にて平成12年度より推進中の福井県地域結集型共同研究事業(中核機関:(財)福井県産業支援センター(理事長:下川 道雄)、事業総括:松浦 正則((株)松浦機械製作所 代表取締役社長))において、結晶を細長い形状にした微細ロッド型のYb:YAG(イッテルビウム:ヤグ)レーザを考案し、パルス幅:30ナノ秒、パルス平均出力8W、ピークパルス出力83kWの短パルス高出力発振に成功した(特許申請中)。これにより、超短パルスレーザ増幅器の高出力化、高効率化及び小型化が可能になり、レーザによる電子材料の超微細加工や機能性薄膜の創製など、半導体産業、機械産業、電子産業などの次世代の技術革新を担う基盤技術への応用が期待される。本研究成果は、福井大学、分子科学研究所および福井県工業技術センターの共同研究チームによって得られたもので、平成15年の初頭に行われる固体レーザおよびフォトニクス(光電子工学)の国際会議ASSP 2003(Advanced Solid-State Photonics 米国テキサス州)にて発表する予定である。
この研究グループの福井大学の川戸栄助教授らは、小型高出力のレーザを実現しようとするとき問題となるレーザ結晶の温度上昇による破壊を、従来に比べて非常に細長いレーザ結晶を用いて高効率冷却することで解決し、高平均出力と高ビーム品質が同時に達成できる構造を発明し、今回始めてそのナノ秒(1億分の1秒)レベルでの高平均出力パルス発振に成功した。また、この微細ロッドレーザは冷却効率が高いため、室温発振が可能であり、大型で複雑な冷却器を必要としない。さらには増幅器発振時の利得も高く、電力効率が10 %以上と従来の超短パルスレーザに比べて一桁以上効率の高い増幅器発振が可能で、システム全体の電力効率の高い超短パルスレーザを開発することができる。
川戸助教授らの今回の研究成果を元に超短パルスレーザ発振器を組み合わせることで、従来に比べて小型、高効率、高平均出力のYb:YAG超短パルスレーザ発振-増幅器システムが実現できるものと期待される。福井県地域結集型共同研究事業では、ビーム品質や平均出力などのさらなる改善や超短パルス発振の実現に向け研究を進めていく予定である。
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