新技術事業団報 第687号

平成8年5月23日
埼玉県川口市本町4-1-8
新技術事業団
電話(048)226-5608(企画調査室)

「近赤外域微弱光検出装置」を委託開発課題に
選定ならびに開発企業を選定

 新技術事業団(理事長 松平寛通)は、信州大学工学部教授 野村彰夫氏、同助教授 斉藤保典氏、日置電機株式会社 田中光喜氏の研究成果である「近赤外域微弱光検出装置」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。
 近年、天体観測などの学術研究のみならず、血中微量物質の光化学的分析、レーザレーダによる環境計測など、医療診断、環境計測や光通信技術などの分野で微弱光計測技術が重要になり高度化に向けて、応用が検討されている。
 これまでの微弱光計測は、可視光が中心であり、光電子増倍管(注1)などの光検出素子が用いられてきた。一方、可視光よりも波長の長い近赤外の領域の光が、光ファイバーでの伝搬に適していたり(波長1.5μm付近など)、眼に安全である(波長1.4μm以上)ため、光通信や屋外でレーザ光を使用する遠隔計測などの技術では近赤外域の光の使用が進んでいる。このため、これら波長での微弱光検出が重要になっているが、1μm以上の波長での微弱光計測は従来技術では困難であり、新たな検出手段の開発が望まれていた。
 本新技術は、波長1.0 ─1.6 μmの近赤外域での微弱光を検出する装置に関するものである。光検出素子としては、光電子増倍管のかわりに、光通信などの受光素子に使用されている半導体素子(InGaAs-APD:インジウム・ガリウム・ヒ素−アバランシェ・フォトダイオード)(注2)を用いる。本装置は、InGaAs-APDで微弱な光を検出するとともに、これを電流(パルス)に変換し、さらにその電流を信号処理が容易なレベルまで増幅して出力することにより微弱光の検出を可能としている。この際、InGaAs-APDの小さな受光面に光を集めて入射させて光の検出効率を高めるとともに、InGaAs-APDを冷却して暗電流(光の検出によらないで発生する電流、注3)を低減することなどにより、性能の向上を図っている。
 本新技術による装置は、これまで微弱光検出が困難であった近赤外域において光子レベル(10−11 ─10-15 W 程度)での光検出が可能であるため、遠隔光計測や光通信分野における利用のほか、微量物質の分析、生体発光の検出など、化学、生物、医療診断等への応用が期待される。
 本新技術の開発は、日置電機株式会社(社長 日置勇二、本社 長野県上田市小泉81、電話0268-28-0555)に委託する予定で、開発期間は3年、委託開発費は約1億5千万円の予定である。

「近赤外域微弱光検出装置」背景・内容・効果)

(*) この発表についての問い合わせは、電話048(226)5616 野田、天野までご連絡下さい。


This page updated on April 14, 1999

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