JST(理事長 中村 道治)は、「平成22年度小学校理科教育実態調査」※について、全体の傾向を要約するとともに、調査データの分析から得られた新たな知見を「調査報告書」にまとめました。本調査は、平成23年1月に、JSTが全国の約1,000校の小学校で理科を教える約2,200名の教員および25,000名の第6学年の児童を対象に行ったもので、理科の教育環境や研修の状況、理科の勉強や活動についての意識などに関する実態を探るものです。
分析では、学校及び教員の状況について「平成20年度小学校理科教育実態調査」(JST・国立教育政策研究所 平成20年11月発表)の結果と経年比較するとともに、児童の状況について、「平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査」(国立教育政策研究所 平成17年4月発表)との経年比較を行いました。経年比較の主な結果は以下の通りです。なお、本調査の目的と学校・教員・児童の経年比較についての分析結果の抜粋については別紙1を参照してください。
<学校の状況について (平成20年度と平成22年度の比較)>
- ○設備備品費は学校当たりの平均額が約11万円(平成20年度 約9万円)、児童1人当たりの平均額が516円(平成20年度 391円)と増加しているが、設備備品費の予算額が0円の学校は約4割と依然として高い割合である。
- ○消耗品費は、学校当たりの平均額が8万円(平成20年度 7万円)、児童1人当たりの平均額が367円(平成20年度 316円)とわずかに増加しているが、消耗品費の予算額が5万円未満の学校は約4割と依然として高い割合である。
<教員の状況について (平成20年度と平成22年度の比較)>
- ○理科の授業において、児童による観察・実験を行う頻度について「ほぼ毎時間」と回答した教員の割合が22%→28%に増加している。
- ○教職経験年数別の教員の意識について、教職経験年数5年未満の教員は、理科全般の内容の指導に対して「得意」「やや得意」と肯定的に回答している教員の割合が42%→49%に増加している。
<児童の状況について (平成15年度と平成22年度の比較)>
- ○児童の理科の勉強や活動の意識について、「そう思う」と回答した児童の割合が、「理科の勉強が大切だ」(35%→42%)、「理科を勉強すればふだんの生活や社会に出て役に立つ」(23%→31%)で増加しており、さらに、「理科の勉強で観察や実験をすることが好きか」について「好きだ」と回答した割合が48%→54%に増加している。
また、本報告書では、理科支援員を活用した学校の教員の意識と取組の関係、理科支援員および理科専科教員配置の有無と児童の理科に対する意識の関係などについても、さらに分析し、理科支援員配置の効果を取りまとめました。分析結果から、理科支援員の配置は、小学校の理科教育にとって、効果の大きい支援策であったことが確認されました。分析結果の抜粋は別紙2を参照してください。
なお本報告書は、下記のウェブサイトからダウンロードできます。
本報告書ダウンロードURL:
https://www.jst.go.jp/cpse/risushien//elementary/cpse_report_015.pdf