理科支援員活用の効果を調べるために、教員質問票と児童質問票の回答から得られた結果を分析した。
[図中の略称の見方について]
未配置・・・平成20~22年度3年間に理科支援員及び理科専科教員が配置されていないと回答した学校
専科のみ配置・・・平成20~22年度3年間に少なくとも何れかの年度で理科専科が配置されているが、理科支援員は何れの年度にも配置されていないと回答した学校
支援員のみ配置・・・平成20~22年度3年間に少なくとも何れかの年度に理科支援員が配置されているが理科専科は何れの年度にも配置されていないと回答した学校
なお、分析に使用した回答者の分類詳細については別添「参考」に記載。
○ 以下の4項目について、「支援員のみ配置」は「未配置」と比べて児童の意識を高める効果を持つと考えられる。
○理科支援員配置校と未配置校を比較して意識の高かった4項目について、児童の理科に対する意識の平均値によって学校を区分しそれぞれに含まれる「支援員のみ配置」の学校の割合を比較した結果、児童の意識の学校平均値が高いほど、「支援員のみ配置」の学校の割合が高くなる傾向がある。
※1)学校平均区分とは各児童質問票の回答から、学校ごとの平均値を計算し、対象校846校を上位10%、中間上位40%、中間下位40%、下位10%に分けたものを指す。
※2)本分析における各支援策パターンをとる学校の割合は未配置33%、専科のみ配置13%、支援員のみ配置36%、支援員・専科配置18%である。「支援員のみ配置」は多く、「専科のみ配置」が少ない。したがって本項のグラフでは各区分に含まれる各支援策パターンの割合そのものではなく、下位から上位に向けての割合の変化に着目する必要がある。
○「専科のみ配置」が、ほとんどの質問項目で児童の意識を高めるものとなっていないことがわかる。
○理科専科配置校と未配置校を比較して意識の高かった「理科の勉強で、観察や実験をすることは好きか」について、児童の理科に対する意識の平均値によって学校を区分しそれぞれに含まれる「専科のみ配置」の学校の割合を比較した結果、児童の学校平均値が高いほど、専科のみを配置した学校の割合が高くなる傾向が見られる。
○「専科のみ配置」の学校の割合が以下の3項目では上位10%で高くなるとともに、中間上位40%、中間下位40%と比べ、下位10%でも割合が高くなる傾向が見られた。
これらの結果から、理科の指導が得意な教員が理科専科となっている形態では、効果が現れやすい一方で、理科の指導が苦手な教員が専科となっている形態では、理科学習への児童の意識の低下につながりやすく、理科専科配置の効果は配置されている教員の力量に影響されやすいものと考えられる。
小学校教員の大多数を占める大学の専攻分野が理科系(大学で教育(理科選修)系か理学、工学、農学等の自然科学系の分野を専攻した教員)以外の教員のみを対象に分析を行う。
大学の専攻分野が理科系以外の教員を以下の2つのパターンに分類し、比較分析する。
○支援員未活用・・・平成20~22年度3年間に理科支援員・理科専科教員※3ともに未活用
○支援員活用・・・平成20~22年度3年間に理科支援員活用・理科専科教員※3未活用
※3)「低学年を担当するなどにより、理科を指導する必要がなかった年」がなかった教員も含む。なお、分析に使用した回答者の分類の詳細については別添「参考」に記載。
○理科支援員を活用した経験がある教員と、活用経験がない教員の比較において、理科の授業や指導等における知識・理解・技能の自己評価、特定の観察実験器具及び実験操作の指導に対する自信のいずれにおいても、理科支援員を活用した経験がある教員は、活用した経験がない教員よりも肯定的な回答をしている割合が高い。理科支援員を活用した経験が理科の指導力を高める上で有効であると言えよう。