科学技術振興機構報 第84号
平成16年6月29日
埼玉県川口市本町4-1-8
独立行政法人 科学技術振興機構
電話(048)226-5606(総務部広報室)
URL:http://www.jst.go.jp/

社会技術研究システム公募型プログラムにおける
平成16年度研究提案の募集開始

 独立行政法人 科学技術振興機構(JST,理事長:沖村 憲樹)の社会技術研究システム(システム統括:佐藤 征夫)では、公募型プログラムにおいて平成16年度の研究提案募集を平成16年6月30日から開始します。
 社会技術研究は、環境や安全問題など、社会や国民ニーズへの対応が求められているものの、市場原理ではなかなか取り組みの進まない課題や、現実社会が直面している諸問題の解決を図り社会における新たなシステムの構築を目指す研究で、自然科学のみならず人文・社会科学などの知見も統合した俯瞰的な観点から、従来の学問領域にとらわれない広い分野の研究者が協力して研究を進めるものです。

 今回、公募型プログラムの3研究領域(「社会システム/社会技術論」領域、「循環型社会」領域、「脳科学と教育」領域)について研究課題の募集をします。

 なお、3研究領域中「脳科学と教育」領域においては、本年度、ミッション・プログラムⅢ「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」と連携して研究を進める研究課題(追跡研究的手法に非侵襲脳機能計測あるいは行動学的観察を組み込んだ手法を用いて進める研究課題)についても新たに募集します。
1.事業の趣旨
 社会技術研究とは、環境や福祉・生活支援、安全問題等、社会や国民ニーズへの対応が求められているものの市場原理ではなかなか取り組みの進まない課題や、現実社会が直面している諸問題の解決を図り、社会における新たなシステムの構築等を目指すものである。そのため、自然科学のみならず人文・社会科学等の知見も統合した俯瞰的な観点から、従来の学問領域にとらわれない広い分野の研究者が協力して研究を進める。
 社会技術研究システムは、「社会技術研究フォーラム」、「ミッション・プログラム」、「公募型プログラム」の3つのプログラムにより推進している。今回、公募型プログラムの3研究領域について研究課題の募集をする。

2.公募型プログラムの概要
(1) JSTは、社会問題解決を図る上で推進すべき研究領域を設定。
(2) JSTは研究領域ごとに研究提案を公募し、研究総括が領域アドバイザーの協力等を得て選考。
(3) 研究は、研究総括のマネジメントのもと推進され、JSTが研究活動を支援。
(4) 研究費は、既存の施設・設備を活用してもらうことを前提とし、新たに必要となる委嘱費、備品費、消耗品費、旅費、調査費、ワークショップ開催費等が対象。
(5) 研究成果は可能な限り公開し、社会還元を図る。特に、社会技術研究フォーラム等の場において成果や問題意識の共有化が図れるよう協力をいただく。
(6) 採択された研究課題について、評価を実施。
3.研究費や研究期間
研究領域 研究タイプ 研究費 研究期間 構成人数
社会システム
/社会技術論
〈タイプI〉 1~2千万円程度/年
(総額:3~6千万円程度)
原則3年 数名~20名程度
循環型社会
脳科学と教育
〈タイプII〉(※) 2~5千万円程度/年
(総額:1~2.5億円程度)
原則5年以内 数名~20名程度

(※)文部科学省「脳科学と教育」研究に関する検討会報告『「脳科学と教育」研究に関する推進方策について』(平成15年7月)を受け、社会・生活環境が心身や言葉の発達に与える影響やそのメカニズムの解明を目指す研究として、追跡研究的手法に非侵襲脳機能計測あるいは行動学的観察を組み込んだ手法を用いて進める研究課題を対象とする。
4.採択テーマ数
タイプI:3研究領域合計で8テーマ程度。
タイプII(「脳科学と教育」領域において、追跡研究的手法に脳の非侵襲計測あるいは行動学的観察を組み込んだ手法を用いる研究課題に限る):5テーマ程度。
5.募集スケジュール
研究提案募集開始 平成16年6月30日(水)
募集説明会(東京会場)
(大阪会場)
7月16日(金)
7月20日(火)
募集締切 8月16日(月)当日消印有効
書類選考
面接選考
~ 9月下旬
~10月中旬
選定      10月下旬
研究開始      11月
6.募集説明会の予定
開催地 日 時 会 場
東京 7月16日(金)
14:00~15:30
(独)科学技術振興機構 東京本部 JSTホール
東京都千代田区四番町5-3
Tel. 03-5214-8401
大阪 7月20日(火)
14:00~15:30
メルパルクOSAKA 4F 松の間
大阪市淀川区宮原4-2-1
Tel. 06-6350-2120

表中の各電話番号は募集説明会会場のものです。内容等につきましては、後述の問い合わせ先までお問い合わせ下さい。
上記募集説明会への参加は応募の条件ではありません。
7.研究領域の概要、研究総括の募集・選考に当たっての考え方
「社会システム/社会技術論」
研究総括:村上 陽一郎(国際基督教大学 教授/東京大学名誉教授)
研究領域の概要
 この研究領域では、科学や技術が社会の構成にとって不可欠となっているような現代社会を前提として、新しい社会システムや制度等の構築につながる研究を対象とします。
 参考までにこの領域においてすでに存在していると思われる具体例を挙げれば、技術イノベーションを含む経済学(技術経済)、規制のための科学(レギュラトリ・サイエンス)などになりますが、科学や技術の組み込まれた社会を対象とした新たな研究課題の発掘を含みます。
研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 現代社会は「知識に基盤を置く」(knowledge-based)であり、中でも科学や技術は社会の構成にとって不可欠であると言える。しかし、社会科学を含めた学問も、社会の構造や制度も、必ずしも科学や技術が組み込まれた社会という前提に立っておらず、現状に追いついていないと言わざるを得ない。そのような問題意識から、この研究領域では、科学や技術が有機的に組み込まれた社会を考え、社会を扱う新しい座標の構築を目指したい。
 科学・技術と社会との関連の問題から、日本社会のシステム改革の見直しまで社会システムに関する野心的な議論を期待する。また、本領域で取り扱う「社会技術」自体についても、今後の社会システム構築に資するよう、その概念や範囲、研究制度などを巡って検討する必要がある。そのような観点からの「社会技術」そのものに関する研究を特に歓迎する。領域自体が抽象度が高いので、理論研究が多くなることが予想されるが、できる限り具体的な問題設定から出発する方法論を期待する。
 また、科学・技術の成果を利用する社会セクターとして、中央行政府、産業以外のものがどのように成立可能か、という問題に配慮した研究も歓迎する。
「循環型社会」
研究総括:山本 良一(東京大学生産技術研究所 教授)
研究領域の概要
 個々の要素技術を超えて理工学的視点、社会科学的視点の両面から地球環境問題に俯瞰的に取り組む、広義の「循環型社会」についての研究を対象とします。
 具体的には、持続可能な開発を判断する指標群の開発、エコ効率の高い技術、製品、サービスの設計、生産、普及、循環のための新たな社会システムとビジネスモデルの構築や環境認識共同体の形成のための方法等の研究が含まれます。
研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 そもそも「循環型社会」という研究領域が設定された理由の一つは、個別の要素技術の積み重ねでは「社会の持続的発展」が達成できないと言う認識があるからである。従って本研究領域では文理融合の研究チームが「循環型社会」実現に関わる様々な課題に挑戦することを奨励する。
 また、本年度はすでに採択され、スタートしている9つの研究課題の基本コンセプト、「有機物の地域循環システム、マテリアルリース社会、環境格付け、問題物質群への対処法、自動車材料の地域循環システム、循環型社会のための社会的合意形成手法、循環型の都市環境設計、循環型の地域環境ビジネス、東アジア圏のマテリアルフロー分析」と基本的にオーバーラップしない課題を歓迎する。たとえば、循環型社会形成に適した流通システムやビジネスモデルの構築、サスティナビリティ指標の開発、環境教育・環境コミュニケーションのあり方等である。
「脳科学と教育」
研究総括:小泉 英明((株)日立製作所 フェロー)
研究領域の概要
 学習概念を、脳が環境からの刺激に適応し、自ら情報処理神経回路網を構築する過程として捉え、従来からの教育学や心理学等に加え、生物学的視点から学習機序の本質を解明する研究を対象とします。
 具体的には、脳神経科学の蓄積されたデータの学習・教育への適用、発達認知神経科学や進化・発達心理学、各種神経科学を基盤とした知見の学習機序や広義の教育への応用、自然科学・人文学の成果と臨床、教育、保育等の現場の知識を融合した学習・教育等、胎児期から一生を終えるまでの全ての学習・教育過程を包括的な視点で捉え直し、少子・高齢化社会における最適な学習・教育システムとその社会基盤構築に資する研究等が含まれます。
研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 本研究は、Human Security & Well-being(安寧とよりよき生存)を基調とした未来を見据え、先端技術・自然科学と人文学・社会科学を架橋・融合したTrans-disciplinary (環学的)な視点から、教育関連問題の根幹に迫ります。平成16年度の募集に当たっては、これまでの「脳科学と教育」研究の募集(タイプI)に加え、文部科学省「脳科学と教育」研究に関する検討会の報告『「脳科学と教育」研究の推進方策について』(平成15年7月)を受け、特に追跡研究的手法(対象群に関する前方位的(prospective)あるいは後方位的(retrospective)な追跡研究)を用いた研究課題(タイプII)をも募集します。
〈タイプI〉研究費:1~2千万円/年 研究期間:3年
 発達認知神経科学を含む脳科学、発達心理学や言語学、そして非侵襲脳機能計測や各種情報技術を架橋・融合して、実践的かつ人間性を基調とした学習・教育に関する研究を志向します。学習効果・学習意欲の視点から、遺伝因子・環境因子(genetic・epigenetic, nature・nurture)と相互作用, 神経結合による環境適応、可塑性、神経伝達物質と興奮・抑制機序、髄鞘化の遺伝情報・機能発現機序、機能領野再構築、臨界期・感受性期、記憶、情動、報償系などを包括的に研究し、一般学力・語学力のみならず、創造力・洞察力・理解力の改善、そして他者を思いやる心・奉仕の心の育成、さらに倫理・義務を尊重する心の醸成、加齢と能力維持等のテーマを含めます。利便性・物の時代から叡智・心の時代を志向し、人間の基本的能力向上を目指します。恣意的仮説に基づいた推論ではなく、科学的・実証的根拠を基調とした実直な研究内容を期待します。

〈タイプII〉研究費:2~5千万円/年 研究期間:5年
 タイプIにおける考え方を含む研究課題のうち、実証的な追跡研究による、発達認知神経科学を含む脳科学、発達心理学や言語学、そして非侵襲脳機能計測や各種情報技術を架橋・融合して実践的かつ人間性を基調とした学習・教育に関する研究を志向します。 具体的には、追跡研究的手法に非侵襲脳機能計測あるいは行動学的観察を組み込んだ手法を用いた、母語・非母国語の習得と脳機能発達の解明研究、双生児を対象とした環境要因と遺伝要因の解明研究、胎児の行動発達研究、加齢と脳機能維持に関する研究、学習障害メカニズムの解明とその予防/対応方策に関する研究、あるいは、意欲や創造性の脳内機序解明やその向上に資する研究、追跡研究の方法論などの研究テーマを期待します。
8.問い合わせ先
独立行政法人 科学技術振興機構
社会技術研究システム推進室
〒105-6218 東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズMORIタワー18F
Tel. 03-5404-2800    Fax. 03-6402-7578
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