JST(理事長 北澤 宏一)は、フランス国立科学研究センター(CNRS)注1)と共同で「環境応答のための生体分子の構造と機能」に関する3件の研究交流課題を支援することを決定しました。この支援は、戦略的国際科学技術協力推進事業注2)「日本-フランス研究交流」注3)の一環として行われるものです。
支援決定した課題は次の通りです。
(1) 「膜近傍でのアクチン重合核形成反応のメカニズム:構造生物学的研究」
(研究代表者:名古屋大学 大学院理学研究科 前田 雄一郎 教授、CNRS 酵素学・構造生化学研究所 マリーフランス・カリエール 研究部長)
本研究は、アクチンの重合・脱重合で駆動される分子運動のメカニズム、特に、外部からの刺激や信号に応答する時に、アクチン線維の重合が開始するメカニズムの解明を目指すものです。
(2) 「進化的に早期分岐したトリパノソーマ類などの真核生物エネルギー代謝における酢酸産生系酵素の役割」
(研究代表者:東京大学 大学院医学系研究科 北 潔 教授 、CNRS/ボルドー第2大学 フレデリック・ブリンガード 教授)
本研究は、寄生原虫のエネルギー代謝の基礎研究からそのユニークな性質を明らかにし、自由生活性(土壌や水中に独立して存在する)のアメーバによる環境汚染の制圧を目指すものです。
(3) 「環境・進化・地質学的に重要な海洋プランクトン(放散虫)の形態-分子の多様性モニタリング」
(研究代表者:東北大学 大学院理学研究科 鈴木 紀毅 助教、CNRS 生態環境研究所 ファブリース・ノット 上級研究員)
本研究は、環境DNA研究と形態分類学が相互に研究交流を行い、環境応答のための生体分子の構造と機能の1つとして、分子データに乏しい放散虫という海洋プランクトンについて、形態分類と分子分類を統合した参照基盤を作り、過去の環境応答まで応用できる分類学的(遺伝子バーコーディング)および機能的(ゲノムと転写産物)多様性を明らかにすることを目指すものです。
今回の研究交流課題の募集では29件の応募があり、これらの応募課題を日本側およびフランス側の外部専門家により評価しました。JSTとCNRSはその結果をもとに協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本とフランスがともに支援すべきと合意した3件を支援課題として決定しました。日本側、フランス側とも本年9月に支援を開始し、研究期間は支援開始から3年間を予定しています。