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参考1

平成22年度募集の概要

1.事業の目的

社会技術研究開発事業は、社会の具体的な問題の解決を通して、社会的・公共的価値の創出を目指す事業です。社会問題の解決に取り組む関与者と研究者が協働するためのネットワークを構築し、競争的環境下で自然科学と人文・社会科学の知識を活用した研究開発を推進して、現実社会の具体的な問題解決に資する成果を得るとともに、得られた成果の社会への活用・展開を図ります。

2.研究開発プログラムの概要

(1)研究開発プログラム「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」

我が国では、2025年の65歳以上の人口が総人口の3割以上となるなど、世界でも例のない状況となるため、現状把握と対策の検討に向けた研究開発の実施が急務となっています。高齢社会の問題は個別分野の取り組みによる解決が困難で、研究手法、研究体制ともに解決すべき課題が多く存在するため、人文学・社会科学的観点も含む、あらゆる観点からの追究が必要です。また、具体的な問題は全国一律ではなく、地域やコミュニティの特性に応じた課題整理と社会システム構築の観点が重要で、適切にフィールドを設定した上で社会実験を実施し成果を共有することが必要になります。

「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」では、地域やコミュニティの現場の現状と問題の科学的根拠に基づく分析・把握・予測、またその評価指標などの体系化や、異分野の研究者間、研究者と現場の関与者間の協働による研究体制のもとでのフィールドにおける実践的研究の実施により、問題解決に資する新しい成果(プロトタイプ)を創出します。さらに、我が国における研究開発拠点の構築と関与者間のネットワーク形成を目指し、得られたさまざまな成果が、継続的な取り組みや、国内外の他地域へ展開されることの原動力となること、多世代間の理解を促すことにつなげます。

(2)「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」

サービスは社会的・経済的価値を生み出す機能を有し、金融業や小売業、情報サービスなどから、環境・エネルギー、行政、福祉・医療などの公的サービスまで幅広い分野に至りますが、我が国では、従来、商品に付加的なもの、あるいは製造業と区分されたサービス産業における商品として捉えられてきた側面があります。一方、サービスにより生まれる価値には、サービスと貨幣の交換による価値に留まらず、モノやサービスを利用することによる利用価値までも含まれ、サービスとモノとは不可分であるという考え方が近年、世界的に拡がりつつあります。

「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」では、社会の具体的あるいは潜在的なニーズを把握し、実データや事例を利用し、単なる既存サービスの科学的アプローチによる効率化だけでない、分野融合型でサービスの提供者と被提供者を含むアプローチによる問題解決のための科学的な概念・技術・方法論などの開発を行うとともに、「サービス科学」の研究基盤構築を目指した研究を推進します。また、研究成果のさまざまなサービスへの活用により問題解決をすることでの社会貢献、「サービス科学」の研究者・実践者のコミュニティ形成に貢献します。

(3)研究開発プログラム「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」

地球温暖化と大規模な気候変動の危機の解決は、私たち人類の活動が環境と共生しえない水準に達したことから発生している多様な問題の中でも、最も重要な課題の1つとなっています。しかし、脱温暖化に向けた取り組みでは、観測や分析、新しいエネルギーなどの先端的な技術の開発を進めることに重きが置かれ、技術を私たちの生活の中に生かしていく方法を、社会のシステムも含めて見直そうとする試みはあまり実施されてきませんでした。また、環境破壊や都市への集中が引き起こす過疎や地域の活力低下などの問題も、地球温暖化問題と同様、私たち人類の活動の急激な変化によるものですが、これまで環境共生や地域再生の取り組みと脱温暖化に向けた取り組みの間には十分な連携はありませんでした。

「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」では、脱温暖化に関する課題を、技術だけではなく自然環境や社会制度、地域再生を含む統合的な問題として科学的に整理・分析し、本格的な解決の方向を見出していくことを目指します。そのために、科学技術と社会との対話をうながし、新しい取り組みや提言につながる、地域に根ざした実践的な研究開発プロジェクトを推進します。

3.支援規模

研究開発プログラム「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」
研究開発プログラム「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」

カテゴリーⅠ※1:1000万円未満/年(上限3年間)

カテゴリーⅡ※2:1000~3000万円/年(上限3年間)

※1 Ⅰ:社会の問題を解決するための選択肢を提示しようとするもの(研究開発のあり方や科学的評価のための指標などの体系化など)。

※2 Ⅱ:社会の問題の解決に資する具体的な技術や手法などについてその実証まで行おうとするもの。

「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」

研究タイプA※3:4000万円程度/年(上限3年間)

研究タイプB※4:2000万円程度/年(上限3年間)

※3 A:「問題解決型研究」:具体的なサービスを対象に、当該サービスに係る問題解決のための技術・方法論などを開発して問題を解決するとともに、得られた技術・方法論が「サービス科学」の研究基盤の構築に貢献することを目的とする研究。

※4 B:「横断型研究」:研究エレメントに焦点を当て、新たな知見を創出し積み上げることで体系化し、「サービス科学」の研究基盤を構築する。それにより将来的に現場のさまざまな問題解決に応用され、サービスの質・効率を高め、新しい価値の創出に貢献することを目的とする研究。