科学技術振興機構報 第74号
平成16年5月26日
埼玉県川口市本町4-1-8
独立行政法人 科学技術振興機構
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URL:http://www.jst.go.jp/

二型糖尿病モデルマウスcDNAアレイの開発に成功

 独立行政法人科学技術振興機構(理事長 沖村憲樹)は、委託開発事業の開発課題「二型糖尿病モデルマウスcDNAアレイ」の開発結果を、このほど成功と認定しました。
 本課題は、独立行政法人理化学研究所免疫アレルギー総合科学研究センター免疫器官形成グループディレクター古関明彦氏と東京都老人総合研究所分子遺伝学部門研究部長白澤卓二氏らの研究成果を基に、平成14年2月から平成16年2月にかけて株式会社サイメディア(代表取締役社長 酒井博之、本社 東京都台東区池之端2-7-17、資本金 25百万円)に委託して実用化開発(開発費約219百万円)を進めていたものです。
(開発の背景)
 国内の糖尿病の患者数は740万人で、予備軍を含めると1,620万人に達すると推定されています。糖尿病はインスリンの不足による一型と、インスリン合成後の機構に起因する二型に分類されますが、二型糖尿病が90%以上を占めます。糖尿病の発症には遺伝要因が深く関わっていると考えられ、単一の遺伝子異常により発症するものから複数の遺伝子異常により発症するものまで、その遺伝素因は極めて複雑です。この疾患は血糖調節の根幹を担うインスリンの合成・分泌に関わる遺伝子、あるいはインスリン標的組織(肝臓、筋肉、脂肪組織)におけるインスリン作用に関わる遺伝子が原因である高い可能性があります。しかしながら、現実には二型糖尿病は原因の特定が困難で、血糖値をコントロールするなどの対症療法しか行われていません。したがって、それぞれの患者に対して根本的な治療薬を開発・提供するオーダーメイド医療には大きな市場性があり、その基礎研究ツールが求められています。
(開発の内容)
 本新技術は、二型糖尿病のモデルマウスと野生型マウスの遺伝子発現量の差に着目したcDNAアレイに関するものです。
 二型糖尿病モデルマウスは、変異させたインスリン受容体遺伝子を相同組換えによって導入することで、インスリンへの応答性が下げられ、血中インスリン濃度が高い二型糖尿病発症直前の状態が維持されています。このマウスは酸化ストレスに強いなど、従来糖尿病と関連すると考えられていなかった形質の違いをもっており、新たな糖尿病関連遺伝子の発見に重要なツールとして期待されます。このモデルマウスにおいて、どの遺伝子の発現量が変化しているのかを大規模に、且つ、迅速に検索するシステムとして、モデルマウスと野生型で発現量の異なる遺伝子量を測定できるcDNAアレイの製造技術を確立しました。
(開発の効果)
 本開発で用いた二型糖尿病モデルマウスは、インスリン受容体遺伝子に変異を加えることにより、二型糖尿病の発症直前状態を呈しています。モデルマウスと野生型で発現量の異なる遺伝子を基板に固定化したcDNAアレイを用い、薬物投与や外部刺激等によって、それらのどの遺伝子の発現量が変化しているかを迅速に測定することができます。
 本新技術で開発した二型糖尿病モデルマウスcDNAアレイは、二型糖尿病への環境要因や薬剤の影響を調べることができるので、二型糖尿病発症機構の解明や、オーダーメード医療を行うための創薬を標的とした基礎研究用ツールとして利用が期待されます。更に、将来的にはヒトへ応用させることにより、血糖値や尿糖値に異常が出る前の段階を検出するシステムとして発展できる可能性を持つものです。
本新技術の背景、内容、効果の詳細
【用語解説】
図1 遺伝子発現量の差についての概念図
図2 cDNAマイクロアレイ製造工程と解析工程
開発を終了した課題の評価

なお、本件についての問い合わせは以下のとおりです。
独立行政法人科学技術振興機構 開発部開発推進課
菊地博道、福富 博(電話:03-5214-8995)

株式会社サイメディア 代表取締役社長 酒井博之(電話:03-5685-5355)
応用技術研究部 石川 潤(電話:029-848-3105)
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