JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第697号 > 別紙4
別紙4

小宮山 宏 低炭素社会戦略センター センター長 メッセージ

本日、科学技術振興機構に設置された「低炭素社会戦略センター」は、持続可能で活力のある低炭素社会を構築するため、豊かな生活と両立しうる社会の姿を広く提示して、それを実現することを目的としています。

日本は温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減するとの中期目標を掲げて、その達成に向けた具体的取り組みを進めています。これは日本にとって、科学技術と経済と社会を発展させ、国際的な影響力を高める大きなチャンスです。

日本は資源に乏しく狭い国土にもかかわらず、産業が発達し、多くの人々が高度な生活をしています。その上で、日本のものづくりは環境に配慮した非常に高いエネルギー効率を誇っています。このような状況は、エネルギー消費の削減や汚染した環境の改善など、解決すべき課題を設定しそれを解決してきた成果によるものです。すなわち、日本は抱えた課題を解決する力を十分に備えている国であることが分かります。

21世紀に入り、「有限の地球」、「社会の高齢化」、「知識の爆発」という新たなパラダイムへシフトした現在、これらに沿った新しい産業の創出は、社会にイノベーションを起こし閉塞した経済を活性化する大きな可能性を持っています。日本は、先進的に世界の課題を先取りしている「課題先進国」であり、一番成長するアジアにいるという意味で地政学的にも絶好の位置にいます。今後も人類が経験したことのない課題を解決し続けていけば、日本は世界のモデルを作ることができるのです。

日本のエネルギー消費は「エネルギー変換」、「ものづくり」、「日々のくらし」の3つに分類できます。従来、日本の政策はエネルギー消費を「ものづくり」において削減させようとしてきましたが、実は、「日々のくらし」にこそ、エネルギー消費を削減する大きなポテンシャルがあります。エコでバリアフリーで快適なまちづくりを推進すれば、「日々のくらし」におけるエネルギー消費を削減し、かつ、高齢社会への対応と新たな雇用創出も図ることができるのです。

生活の視点から社会の諸課題を解決し、低炭素社会の将来像を具体化するには、高度な科学技術が必要不可欠です。科学技術の知識を活用して、どのように低炭素社会実現に向けて諸課題を克服していくのか、構造化によって関係付けなければなりません。同時に、細分化された知識や行動をどのように構造化して活用し、低炭素社会を構築するのか、その道筋を示すシナリオを、科学技術の発展に即して策定することが重要です。

低炭素社会戦略センターでは、明るく豊かな低炭素社会の姿を描き、それを実現するための総合戦略とシナリオを策定します。科学技術と低炭素社会との関係付けを図るとともに、科学技術の発展をリアルタイムで反映できるシナリオを策定することに重点的に取り組み、低炭素社会づくりに貢献します。