本開発課題は、東京海洋大学 社会連携推進共同センター 准教授 中村宏の研究成果をもとに平成17年3月から平成19年9月にかけて、東洋建設株式会社(代表取締役社長 赤井憲彦、本社住所 東京都江東区青海二丁目43番地 青海フロンティアビル、資本金106億8346万円)に委託して、企業化開発(開発費約200百万円)を進めていたものです。
近年、製油メーカーやガソリンスタンドなどの跡地で発生している油汚染土壌の浄化問題は社会問題化しており、土地取引あるいは土地の有効活用上から、安全かつ高効率に処理できる技術が望まれています。
従来の油汚染土壌浄化技術としては、洗浄処理やセメント材料化処理、焼却処理、バイオ処理などがありますが、低濃度の浄化には限界があり、確実かつ効率的な油汚染浄土壌浄化技術の開発が急務でした。
本新技術は、水蒸気をさらに加熱して、常圧で400~500℃とした過熱水蒸気のもつ亜臨界域注1)の水熱反応注2)を利用し、過熱水蒸気と汚染土壌を撹拌接触させる処理装置で蒸気蒸留を行い、油分を回収するものです。そして、この回収した油分は燃焼させて、発生する熱を土壌浄化の前処理用熱源に活用します。
油分を過熱水蒸気内に容易に溶け込ませることができることから、従来技術では困難であった油汚染濃度30,000mg/kgの細粒系土壌を100 mg/kg以下に浄化可能となりました。
また、本新技術は処理装置を車載方式にしたことで、高濃度油汚染土壌を移送させることなく汚染現場での処理が可能であるとともに、特殊な薬剤や高圧処理を必要としないことから安全性が高く、回収油の再利用など資源の有効利用も期待できます。
これにより高濃度から低濃度、細粒径から粗粒径に至る広範囲の油汚染土壌を、安全かつ高効率に処理できる技術として、実用化が期待されます。
本技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。
(背景) 油汚染土壌を、安全かつ高効率で処理可能な新規技術の開発が強く望まれています。
従来の油汚染土壌浄化技術としては、洗浄処理やセメント材料化処理、焼却処理、バイオ処理などがありますが、処理後の洗浄水処理やトータルコスト、処理時間、高濃度処理対応など種々の課題を抱えています。
本開発で対象とする油汚染土壌の浄化に関しては、製油メーカーやガソリンスタンドなどの跡地の浄化問題が社会問題化しており、土地取引あるいは土地の有効活用上から、安全かつ高効率に油汚染土壌を処理できる技術が望まれています。
(内容) 過熱水蒸気を油汚染土壌に接触させ、土壌に付着している油分を分離し浄化する技術を開発しました。
本新技術は、飽和水蒸気を常圧で400~500℃まで加熱して得られる過熱水蒸気の持つ亜臨界域の水熱反応を利用し、過熱水蒸気と汚染土壌を撹拌接触させる処理装置(図1)を用いることで、汚染土壌中の油分を蒸気蒸留して分離回収するものです。
本新技術では、油汚染土壌処理を無酸素雰囲気で行うため複合伝熱(図2)が起こり、即時に土粒子を加温して油分・水分を蒸発させ過熱水蒸気内に取り込むことで効率的な処理が可能となりました。
開発に用いた処理装置 (図3)は、処理容量が100kg/時間、過熱水蒸気温度は最大500℃、装置のサイズは長さ7m、幅2.5m、高さ3mで可搬式8t車に搭載可能、熱源は灯油燃焼です。
過熱水蒸気が持っている高い伝熱性を処理に効率よく活用するためには、処理対象物中の水分量を低下させることが有効で、回収油を燃焼させ、発生する廃熱を前処理に利用するなどの工夫が施されています(図4)。
(効果) 新技術は、高濃度から低濃度、細粒径から粗粒径に至る広範囲の油汚染土壌を、安全かつ高効率に処理できます。(図5)
本新技術は、油分を過熱水蒸気内に容易に溶け込ませることができることから、従来技術では困難であった油汚染濃度30,000mg/kgの細粒系土壌を100mg/kg以下に浄化することが可能となりました。
また、処理装置を車載方式にしたことで、高濃度油汚染土壌を移送させること無く汚染現場での処理が可能であるとともに、特殊な薬剤や高圧処理を必要としないことから安全性が高く、土壌に付着した油分と浄化した土砂を分離回収することが容易であり、回収油の再利用など資源の有効利用も期待されます。
<用語解説>
注1)亜臨界域:
水を高温高圧(375℃、22Mpa)まで上げると水でも蒸気でもない均一流体になり、この点を臨界点と言います。亜臨界域は臨界点よりも温度・圧力が低い過熱領域です。
亜臨界状態に過熱された水蒸気は、優れた成分抽出作用があります。
注2)水熱反応:
亜臨界領域の水が特徴的に持つ有機物質に対する強い溶解力、加水分解能力を活用した反応です。本開発では土壌中の残留油分抽出に利用しています。
<お問い合わせ先>
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