
【研究総括】北川 進 氏
(京都大学物質-細胞統合システム拠点 副拠点長)
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1.氏名(現職) |
北川 進(きたがわ すすむ) (京都大学物質-細胞統合システム拠点 副拠点長) 56歳 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2.略歴 |
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3.研究分野 |
錯体化学、特に集積型金属錯体による配位空間の化学 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4.学会活動等 |
日本学術会議化学系研究連絡委員(平成6年6月~平成12年9月) 日本学術振興会学術システム研究センター化学専門委員・プログラムオフィサー(平成17年7月~平成19年3月) 日本化学会欧文誌編集委員(平成7年9月~平成9年3月) 日本化学会速報誌副編集委員(平成12年4月~平成15年3月) Crystal Engineering誌副編集委員(平成12年4月~平成15年3月) Crystal Growth & Design誌Topic Editor(平成16年10月~現在) Chemistry Letters誌 Advisory Board(平成16年10月~現在) Coordination Chemistry Review誌Editorial Board(平成18年1月~現在) Chemistry of Materials誌Editorial Advisory Board(平成18年1月~現在) Inorganic Chimica Acta誌Advisory Board(平成18年1月~現在) Chemistry, Asian Journal誌International Editorial Board(平成18年1月~現在) Chemical ommunications 誌Advisory Board(平成18年4月~現在) European Journal of Inorganic Chemistry誌Advisory Board(平成19年1月~現在) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
5.業績等 |
1980年代、配位結合を用いて遷移金属イオンを連結し、多様な集積型金属錯体を合成する分野において、銅イオンを始めとする各種金属元素、酸化状態の集積型金属錯体にいち早く注目し研究を進めた(Inorg. Chem., 1981, 1982, 1984)。特に、1価銅オレフィン錯体の合成反応を開発し、1、4ーシクロオクタジェンの2成分錯体を始めとする多くの銅オレフィン錯体を単離して、1価銅とオレフィンとの結合の性質を明らかにした研究(Inorg. Chem., 1986)は、植物のエチレン受容体が、1価銅のような低原子価金属である可能性を示す研究として、生物化学者からも高い評価を受けた。 1990年代に入ると、集積型金属錯体固体が持つ多様なナノ細孔空間を、機能空間として利用する立場から、配位子の形、サイズ、官能基を自在に設計し、金属イオンとの配位結合を3次元的に制御したナノ細孔構造を構築する研究を進めた(Dalton Trans, 1991 ; Inorg. Chem., 1992 ; Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1994)。1997年、世界に先駆けて高温で安定な、さね継ぎ構造、相互貫入構造、ピラードレイヤー構造、3次元グリッド構造を持つチャンネル空間を実現した。これは、「錯体固体はゲスト分子を除くと無機物に比べてもろく、吸着、反応などの機能場として適さない」とみなされていた定説をくつがえすものであった。こうした知見に基づき、世界で初めて、錯体系による常温、高圧でのメタンの大量吸蔵能をもつことを実証した(Angew. Chem. Int. Ed., 1997)。この成果は、吸着材料や新しい触媒につながる成果として期待されている。 その後、多孔性配位高分子が高い結晶性を有する点に着目し、合成の段階で用いる金属イオンの配位ジオメトリーや置換基に規則的かつ高密度な化学修飾を施す研究を進め先駆的な成果を上げている。2002年には、多孔性配位高分子の内部空間に酸素分子を1 次元に配列させることに成功し、X 線回折によるin-situ測定によって1 次元酸素分子構造を直接観察した(Science, 2002)。また、細孔表面における塩基性官能基の配置を工夫し、アセチレン分子を2 重の水素結合によって安定した状態でトラップする手法を提案し、細孔内部のアセチレン分子は通常の爆発限界の200 倍以上もの密度で濃縮可能である事を実証した(Nature, 2005)。さらに、2 種類の細孔を持ち、0.01nm単位で細孔サイズを制御できる多孔性配位高分子の合成(Nature Materials, 2007)に成功するなど、現在、多孔性物質分野で先導的な役割を果たしている。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
6.受賞等 |
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1.氏名(現職) |
Omar M. Yaghi (オマール ヤギー) (カリフォルニア大学ロサンゼルス校 化学・生化学科 教授) 42歳 |
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2.略歴 |
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3.研究分野 |
有機化学、特に有機金属系構造体(MOF)の化学 | ||||||||||||
4.業績など |
1990年代から2000年代はじめにかけて、ビルディングブロック合成法を用いた新物質の設計及び合成法に関する研究に従事した。この研究において、カチオン性の金属-酸素ユニットはアニオン性のジカルボン酸塩によって他の固体物質との連結が可能だということを示し、使用目的に合わせて有機-無機ハイブリッド結晶を合成するための方法論が確立された。このようにして合成された物質は有機金属構造体(MOF:metal-organic framework)と呼ばれ、熱的に非常に安定である、間隙率が高い、機能付与が容易であるといった特徴を有している(例えば、Chem. Commun., 2001 ; CrystEngComm., 2002)。足かけ12年に渡る研究期間に発表された論文において提示された、ビルディングブロック合成法を用いた新しい化合物の設計及び合成法は、現在、世界中の物質化学者や技術者の間で広く用いられている。 その後も独創的なアイデアに基づき、結晶性固体合成やX線結晶解析にハイスループット法を導入し、効率的に多孔性物質の合成を行う研究を精力的に進めている。例えば、安定性・軽量性に優れるとされた共有結合性有機物多孔体の創出やイミダゾール誘導体と金属イオンのみによって様々なゼオライド構造を実現するなど、多孔性材料の開発研究において牽引役を果たしている(Science, 2005, 2007)。 | ||||||||||||
5.受賞など |
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