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<用語解説>

注1)エビアンG8:
 先進8カ国は、ヨハネスブルグでの目標の実施に焦点をあわせ、2003 年7月のG8サミット(フランス、エビアン)において、持続可能な開発のための科学技術の役割が確認されました。議長報告に引き続いて水に関する合意文書が採択され、また、持続的発展のための科学技術に関する合意文書でも淡水に関するグローバルな水モニタリングが取り上げられているなど、淡水資源の問題にも議論の重点が置かれていました。

注2)GSWP2:
 第2次全球土壌水分プロジェクト(Global Soil Wetness Project 2)の略でアメリカのP.A. Dirmeyer(Center for Ocean, Land and Atmosphere)と東大の沖大幹がco-chairを務める世界気候研究計画(World Research Climate Programme: WCRP)下の研究プロジェクトです。世界の陸域の水・エネルギー循環と水・エネルギー収支、特に土壌水分や蒸発量、流出量等を、人工衛星データ等と物理的数値シミュレーションモデルを用いることによって、これまでになく精度良く推定することを目的としています。イギリス気象局のハドレーセンターやアメリカ航空宇宙局など気候変動研究に携わる世界の主要機関が数多く参加しています。推定値の取り纏めを行うデータセンターは東京大学生産技術研究所が当該CRESTの研究課題遂行の一環として引き受けました。
 データセンターは、http://www.tkl.iis.u-tokyo.ac.jp:8080/gswp2/
 参考文献:Paul A. Dirmeyer, Xiang Gao, Mei Zhao, Zhichang Guo, Taikan Oki, and Naota Hanasaki, The Second Global Soil Wetness Project (GSWP-2): Multi-Model Analysis and Implications for our Perception of the Land Surface, Bull., Amer. Meteo. Soc., in print, 2006.

注3)水ストレス
 ストレスという言葉は、ここでは需給が逼迫して緊張している様子を示しています。実際には水資源賦存量は季節、年による変動が大きく、また、十分な貯留施設が整備されていない限り洪水などの際の水を含めて水資源賦存量を100%使用することは通常現実的には無理であるため、水利用が水資源賦存量の40%を超えていると高い水ストレス下にある、と判断されます。

注4)IPCCとSRES:
 IPCC(Intergovernmental Panel for Climate Change: 気候変動に関する政府間パネル)の、2007年に出版される予定の第4次評価報告書では、主たる将来の社会シナリオとしてSRES(Special Report on Emissions Scenarios)を採用しています。ただSRESは単一のシナリオの呼称ではなく、様々なシナリオの総称であり、代表的なものでもいくつかあります。それらの中で、特に有名なA1, A2, B1シナリオを本研究では採用しました。SRESにおいて、A-B軸はAが経済発展重視でBが環境と経済の調和重視を示し、1-2軸は1がグローバル化を、2が地域主義化を示します。それらの組み合わせにより、A1は高度成長型社会を、B1は持続的発展型社会を、A2は多元化社会を将来像として描いており、A2では21世紀を通じて人口が増加し続けるのに対し、A1やB1では21世紀半ばにピークに達した後に減少し始めると推定されており、また逆に経済成長はA1やB1の方が急速で、A2では緩やかなため、水資源効率の向上がA1やB1の方がA2よりも勝り、結果として水需給はA2シナリオで最も逼迫する結果となっています。

注5)IAHSと、その「今後の科学指針」:
 IAHSは、International Association of Hydrological Sciences(国際水文科学連合)のことです。2000年に、20年後の水文科学(hydrology)の「あるべき姿」とそこに至る道筋を取りまとめるワーキンググループ「Hydrology2020」を組織し、"Oki, Valeo, and Heal (Eds.), Hydrology 2020: An Integrating Science to Meet World Water Challenges, IAHS Publication vol.300, 190 + xxxii pp, 2006."として発表するに至りました。ワーキンググループの座長は本研究チームの研究代表者である沖でした。