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科学技術振興機構報 第314号

平成18年7月21日

東京都千代田区四番町5-3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(総務部広報室)
URL https://www.jst.go.jp/

社会技術研究開発事業における平成18年度研究提案の募集開始について

 JST(理事長 沖村憲樹)は、社会技術研究開発センターにおける社会技術研究開発事業の平成18年度の研究提案募集を平成18年7月21日(金)から開始します。
 社会技術研究開発は、現実社会が直面している諸問題の解決を図り、もって社会の安寧を目指す研究で、従来の学問領域にとらわれない広い分野の研究者等が協力して研究を進めるものです。社会技術研究開発センターは、社会問題解決に重要と考えられる研究開発領域(「安全安心」「情報と社会」「脳科学と社会」「科学技術と人間」)を設定し、領域ごとに研究開発プログラムを設定して研究開発を推進します。
 今回、2つの研究開発プログラムについて、研究開発プロジェクトの募集をします。

1.事業の趣旨

 社会技術研究開発とは、現実社会が直面している諸問題の解決を図り、もって、社会における人々の安寧に資することを目的とする研究です。研究は、個別分野を越えた幅広い視点から、多分野の研究者等が協力し、社会における様々なセクターの参画を促しながら研究開発を進めます。
 社会技術研究開発事業は、社会技術研究開発センターにおいて社会問題解決に重要と考えられる研究開発領域を設定し、領域ごとに研究開発プログラムを設定して研究開発を推進します。

2.事業の概要

(1)JSTは、社会問題解決を図る上で推進すべき研究開発領域を設定するとともに、領域ごとにその推進の担い手となる領域総括を指名します。
(2)領域ごとに研究開発プログラムを設定し、領域総括はその目標を達成するための研究開発プロジェクトを募集し、領域総括が領域アドバイザーの協力等を得て選考します。
(3)研究は、領域総括のマネジメントのもと推進され、JSTが研究活動を支援します。
(4)研究成果は可能な限り公開し、社会還元を図ります。
(5)採択された研究開発プロジェクトについて、評価を行います。

3.研究費や研究期間

研究開発プログラム 発足年度 研究規模(研究費・研究期間)
ユビキタス社会のガバナンス 平成17年 ・研究費 : 100~ 500万円程度
・研究期間:6ヶ月

これにより調査研究を進めたところで課題数を絞り込み、
   ↓ 平成19年度より、当該課題を
・研究費 :1,000~2,000万円/年
・研究期間:2.5年以内にて進めます。
21世紀の科学技術リテラシー 平成17年 Aタイプ
・研究費 :1,000~2,000万円/年
・研究期間:3年以内
Bタイプ
・研究費 : 200~ 500万円/年
・研究期間:3年以内
「5.研究開発プログラムの概要、募集・選考に当たっての考え方」を参照して下さい。

4.募集スケジュール

  <下表に記載の日付は、全て平成18年>
  社会技術研究開発事業
研究提案の募集開始 7月21日
研究提案の受付締め切り
(電子公募システムによる受付期限日時)
9月4日
15時<厳守>
書類選考期間 9月上中旬
書類選考結果の通知 9月下旬~10月上旬
面接選考期間 10月上中旬
選定課題の通知・発表 10下旬
研究開始 11月以降

ご注意)下線を付した日付は、確定していますが、他の日程は全て予定です。今後変更となることもあります

5.研究開発プログラムの概要、領域総括の募集・選考に当たっての考え方

1 「ユビキタス社会のガバナンス」
   領域総括:土居範久(中央大学教授)

研究開発プログラムの概要
 「ユビキタス社会」の到来によって、より創造的で生産的な社会が実現され私達の生活と社会経済活動の一段の発展が期待されると共に、情報セキュリティの確保やプライバシーの保護などの重要性が問われている。すなわち利便性を優先することに起因する社会的な脆弱性が心配される。「ユビキタス社会」の特徴として、「ユビキタス社会」を支える技術について、研究開発と社会展開がオーバーラップすることから、実証と実用が混在しながら展開することが予想される。このような特徴により、従来の社会制度との整合性確保が十分に行われないことや、あるいは、科学技術の発展に社会科学や法制度が追従し切れていないことが問題として露呈してきているといえる。
 そこで、当該研究開発プログラムでは「ユビキタス社会」で必要とされる「ガバナンス」はいかにあるべきかを主題として取り上げ、予測される悪や悲劇の芽を摘み取るため、あるいは予測されるよい点をよりよく進展させるための手段について検討し、実証実験までカバーした特定の技術や手法等の具体的な成果を得ることを目標とする。その際、取り組む課題によっては、解決のための選択肢を提示するところまでを目標とすることがある。人文社会科学だけでなく科学技術などの知見も統合した俯瞰的な視点をもって問題解決のための検討を行うものとする。

領域総括の募集・選考に当たっての考え方
 「ユビキタス社会」としては、「コンピュータ利用のユビキタス」の視点に限定されることなく人類の持つ情報のすべてが情報システムの上にユビキタスに拡散する状況、情報システムが人をユビキタスに同定する状況、情報システムと実世界とがユビキタスに結合する状況を含めて、考え得るすべてがユビキタスになった社会を想定する。
 今回の募集では、(1)来るべき「ユビキタス社会」に対応するための法制度のあるべき姿の明確化と立法化の提案、あるいは(2)「ユビキタス社会」の持続的な開発・発展を可能にし、限られた資源を最大限活用するための政策のあり方、を明らかにする研究開発プロジェクトを期待する。例えば、情報信頼度評価システムの研究(情報信頼度の評価手法、情報の格付け手法)、個人情報の積極的利用法に関する研究(利用と保護のバランスを図るガイドライン・法制度の提案と実装)などの研究開発プロジェクトが考えられる。
 昨年度と同様、将来の本格的な研究の実施に資する実行可能性に係る準備調査・研究プロジェクトを対象に募集する。
 募集に当たっては、明確に定義された研究開発プロジェクトと、研究成果の社会への実装の方策に重点を置いた研究方法の提示を求めることとする。なお、調査研究の実施期間は6ヶ月程度とし、1課題あたりの予算は100万円から500万円の範囲とする。
 6ヶ月間程度の実行可能性に係る調査研究によって得られる成果として、提示した研究開発プロジェクトについて、その研究実施体制、設定されるサブテーマ、研究進捗のマイルストーン、具体的な成果の社会への実装方法、研究の評価尺度など、現実的かつ実効性の高い研究計画が提示されることを期待する。このため、実行可能性に係る調査研究を実施する研究者グループの編成は、特定領域の研究者に限定されるべきではなく、社会科学系研究者と理工学系研究者の混成チームを編成するなど、より多くの側面からの検討を行うことを期待する。
 採択後初年度はいくつかの採択された計画の実行可能性に係る調査研究を、それぞれ個別に並行して行う。その後、それらの結果について、実施体制などの実行可能性も含めた評価をあらためて行い、次年度からの本格研究に移行する課題(2~4課題程度)を選定する。なお、本格研究では、2.5年以内の実施期間とし、1課題あたり年間1,000万円から2,000万円程度の支出を予定する。なお、調査研究のみの提案も受け付ける。

2 「21世紀の科学技術リテラシー」
   領域総括:村上陽一郎(国際基督教大学教授)

研究開発プログラムの概要
 現代社会において、科学・技術の研究フロントが、極めて高度化し、専門家は自分たちの研究成果が、一般社会に直接大きな影響を与えるという事態に慣れていないための戸惑いを隠せないし、非専門家は専門家の知識を理解することの困難に苦しむ。しかも今日の科学・技術化された社会の主権者たる国民の大部分は「非専門家」である。民主主義という政治の根幹形態にさえ迫る、こうした全く新しい事態を迎えて、これまでの理科教育や、啓蒙活動では十分に対応し切れないことが明らかになりつつある。本領域では、科学・技術に関わる人々の「社会リテラシー」も含めて、誰のリテラシーを、誰のために高めるのか、という点を明確にしつつ、科学・技術の研究フロントと一般の人々との橋渡しも含めて、具体的に探り、提言し、その具体的な成果(特定の技術や手法等)について実証実験まで実行することを目標とする。その際、取り組む課題によっては、解決のための選択肢を提示するところまでを目標とすることがある。

募集・選考に当たっての領域総括の考え方
 斬新であること、達成目的が明確であること、理論とデータの程よい統合があること、具体的な提言が期待でき、またパイロット・プラントなどの形でその提言を実行可能なものとする見通しが含まれていること、外国との比較研究や外国の研究者の協力はもちろん望ましいが、結果はさし当って現在の日本社会に適用すべきものであること、対象(生徒か、学生か、一般の人々か)、目標(国家主権者、生活者、職業人、専門家など、何を目指すか)を明確にすること、このような点を考慮しながら、専門家集団にのみ目を向けた研究プロジェクトではなく、広く実社会を視野に捉えた、十分に野心的な提案を切に期待している。広い意味で教育に関る問題の性質上、大学以外の現場のメンバーを組み込んだ提案も歓迎する。
 研究開発プロジェクトは、その予算規模からA、B二つのタイプを用意している。Aタイプでは、大規模な実地調査を含むリテラシー研究、あるいはパイロット・プラントなどの作製を含む研究提案として、年間研究費 1,000万円から2,000万円程度の課題を想定し、Bタイプでは、教育に関わる現場の実務者等の問題意識に基づく研究提案として、比較的小規模な年間研究費200万円から500万円程度の課題を想定しているが、各々で適正な規模を選択していただきたい。いずれも、研究期間は3年以内とする。

6.お問い合わせ先

独立行政法人科学技術振興機構
社会技術研究開発センター 運営室 公募担当
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-1-2 りそな・マルハビル18F
Tel. 03-3210-1217 Fax. 03-3210-1300
E-mail:
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