JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第279号 > 語句説明

【語句説明】

注1) 自然免疫:病原体感染初期の感染防御を担う免疫機構。以前は原始的で特異性の無いものと考えられてきましたが、最近、Toll-like receptorの発見、その役割の解析により、自然免疫系が病原体を特異的に認識すること、病原体に適応した反応を惹起すること、また感染後期の獲得免疫系の活性化にも重要な役割を果たしていることが明らかとなってきました。

注2)Toll-like receptor (TLR):細胞膜に存在するタンパク質の一種で細胞外の病原体を認識し、細胞内にその情報を伝えることにより、インターフェロンなどの産生を促します。その結果抗ウイルス反応が惹起されます。

注3)二本鎖RNA:RNAウイルスに特有の構造である。宿主の細胞内でRNAウイルスの複製の過程で産生される構造、または二本鎖RNAウイルスのゲノムとしても存在します。TLRやRIG-I、MDA5などのタンパク質がこれを認識し、インターフェロン産生が誘導されます。

注4)RIG-I (Retinoic acid-inducible gene-I)、及びMDA5 (Melanoma differentiation associated gene 5):ヘリカーゼ領域を持つ細胞質内タンパク質。ヘリカーゼ領域を介して二本鎖RNAを認識し、細胞内に情報を伝達し、インターフェロンなどの産生を促し、感染防御反応が引き起こされます。RIG-IとMDA5は構造が似ているため同様の役割をすると考えられています。その生理機能の解明が本研究の主テーマでありその生体内における差異の詳細が明らかになりました。

注5)RNAウイルス:ウイルスは、ゲノム核酸としてDNAを持つウイルス(DNAウイルス)、RNAをゲノムとするウイルスRNAウイルス)に分けることが出来ます。宿主細胞内に感染し宿主のシステムを利用してウイルスゲノムの複製を行います。RNAウイルスは更に、二本鎖RNAウイルス、一本鎖プラス鎖RNAウイルス、一本鎖マイナス鎖RNAウイルスに分類されます。今回実験に使用したウィルスのうち、インフルエンザウイルス、センダイウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルスは一本鎖マイナス鎖RNAウイルスであり、日本脳炎ウイルス、及びピコルナウイルスは一本鎖プラス鎖RNAウイルスです。  一本鎖プラス鎖RNAウイルスはウイルスゲノムRNAがそのまま翻訳されウイルスタンパク質が作られますが、一本鎖マイナス鎖RNAウイルスではウイルスに由来するRNA合成酵素により相補的なRNAが合成されることがウイルスタンパク質の発現に必要です。

注6) ピコルナウイルス: 一本鎖プラス鎖RNAをゲノムとします。この科に含まれるウイルスとして、脳心筋炎ウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス(風邪症候群の原因)、コクサッキーウイルス(心筋炎の原因)などがあげられます。