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資料4

平成17年度 新規採択研究課題の概要および選定理由

研究開発テーマ:「ユビキタス社会のガバナンス」
研究総括:土居範久(中央大学 教授)
代表者氏名 機関名 所属部署名 役職名 研究課題名 研究課題概要
曽根原 登 国立情報学研究所 情報基盤研究系 教授 ユビキタス社会における情報信頼メカニズムの研究 安全・安心な情報流通を可能にする情報社会システムのトラストモデルを構築するために、情報そのものの正確さ、評判、格付け、品質などの評価メカニズム、制度について、情報学、工学、法学、経済学の視点から以下の三点を探求する。
(1)格付けや品質に代表される情報の客観的な評価手法の確立
(2)口コミや評判に代表される情報の主観的な評価メカニズムの解明
(3)情報の信頼性が経済モデルに与える影響の解明
玉井 克哉 東京大学  先端科学技術研究センター 知的財産分野 教授 ケータイ技術の知識不足から生じる危険の予防策 ケータイ(携帯電話)への知識不足から生じる危険性を取り上げ、ユーザ向けの予防策や啓蒙策、さらに制度的側面からの対応策について検討する。ケータイがますます高度化・複雑化する一方、普及度は増し、すべての機能を知らないまま利用しているユーザがほとんどである。知識の不足から生ずる危険性を検討し、政策提言を含む具体策の提示によって社会的なマイナスを極小化することが、その目的である。
宮尾 克 名古屋大学 情報連携基盤センター 教授 バリアフリーのための応答・支援スポットの構築 ユビキタス社会では、障害者・日本語の不自由な外国人も、バリアフリーの恩恵に浴することが期待される。そのため、公共施設に応答・支援スポットを用意して、障害者・外国人などが介助要請や質問を駅員などに発信できるように、要請内容を標準化し、システムを開発することが考えられるが、その阻害要因となる制度や社会基盤を明確にしつつ、国際標準をめざして、共生社会のプラットホームを提案する。

研究開発テーマ:「21世紀の科学技術リテラシー」
研究総括:村上陽一郎(国際基督教大学 教授)
代表者氏名 機関名 所属部署名 役職名 研究課題名 研究課題概要
青柳 みどり (独)国立環境研究所 社会環境システム領域 主任研究員 気候変動問題についての市民の理解と対応についての実証的研究 一般の人々の気候変動問題をめぐる理解の論理の専門家との違いをグループインタビューを用いて明かにする。一般の人々は個人の過去の知見をもとに科学技術をめぐる様々な問題についての理解モデルを構築するが、基本的知見の土台が異なるためにその理解モデルは専門家のそれとは異ならざるを得ない。これを実証分析によって明かにし、不確実性をもつ多くの問題をめぐる意思決定への利害関係者の参加に新たな展望を与える。
上林 徳久 (財)リモート・センシング技術センター 研究部 主任研究員 衛星画像情報を利活用した市民による自然再生と地域社会再生のためのリテラシー普及 霞ヶ浦の水源である周辺の谷津田を主たるフィールドに、衛星画像情報を利活用した、市民による自然再生と地域社会再生を実施する。その際、地域住民自身が気が付いていない潜在的な衛星画像判読能力を高める。また、地域社会システムの共通問題認識ツールとして、衛星画像情報提供WebGISを構築し、自然再生と地域再生の基盤となるリテラシーの共有により、自然と共生しつつ、霞ヶ浦とその流域における水を守る現代版入会を構築する。
左巻 健男 同志社女子大学 現代社会学部現代こども学科 教授 市民の科学技術リテラシーとしての基本的用語の研究 わが国における市民の科学リテラシーの状況を改善するための基礎的な研究である。その目標は、21世紀に必要な市民の科学技術リテラシーとしての基本用語を選定し、それを元に「市民の科学技術リテラシーとしての基本的用語辞典」を作成し、世に公表することである。この成果から以下が想定される。・市民一人一人が自分の持つ科学技術リテラシーのレベルを理解することができるようになる。・科学技術リテラシーの広さ、レベルについて議論する手がかりや基礎的なデータの一つになる。・学校教育のカリキュラム作成の際の手がかりになる。
滝川 洋二 特定非営利活動法人ガリレオ工房   理事長 市民による科学技術リテラシー向上維持のための基礎研究 本研究では、以下の項目に関しての調査・研究を行う。1.地域に根付く科学ボランティアの現状調査および育成の展開方法の探究 2.科学技術リテラシー向上への地域行政の取り組みの事例研究 3.情報社会における科学コンテンツへのアクセスの現状調査および展開方法の探究 4.科学技術リテラシーの市民への普及方法の探究および学校教育へのボランティアの協力に関する研究 これらの調査・研究により、市民が自発的に科学技術リテラシーを向上し、それを維持することのできる社会を作り上げていくことが可能となることが期待される。
戸田山 和久 名古屋大学 情報科学研究科 教授 基礎科学に対する市民的パトロネージの形成 1 市民の財政支援により実現した電波望遠鏡移設を事例として、市民による基礎科学研究への資金援助を実現するための諸条件を解明する。2 市民のパトロネージが実現する程度にまで、双方向コミュニケーションの質を高めていくための方法論と教育内容を定式化し、研修プログラム・教材等を開発する。以上により、市民の科学リテラシーと研究者の科学コミュニケーション能力向上の到達点を明確化し、それらをより高い水準に引き上げ、科学技術の位置づけを市民と研究者がともに再定義する場の構築を目指す。
松井 博和 北海道大学 大学院農学研究科 教授 研究者の社会リテラシーと非専門家の科学リテラシーの向上 北海道GM作物交雑防止条例でリスクコミュニケーション(特殊事例)を改良し、モデルを構築する。研究者と慎重派が対等な立場で対話できるプラットホームを作る。これを基盤にステークホルダーによる円卓会議を開催する。最後に大規模対話フォーラムを開催し共同宣言を出す。これにより、研究者と市民の相互理解のリテラシー向上が期待される。また、北大が創設予定の安全・安心センターの一翼を担うこととなる。