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【用語解説】

1)膜性腎炎(MGN)
ここでは、自己免疫疾患である、全身性エリテマトーデスに伴う慢性腎炎の病態のうち、糸球体基底膜がびまん性に厚くなり、スパイク状の突起が出来ることを特徴とするタイプを示す。MGNは、このように他の疾患に引き続いて生じる(続発性)場合と、発症の直接の原因が不明である(原発性)場合がある。ネフローゼ症候群を呈する患者のうち子供で95%、成人で75%が続発性のMGNである。
2)ネフローゼ症候群
腎の糸球体、特に糸球体基底膜に引き起こされる疾患であり、高度のタンパク尿、高度の浮腫、低タンパク血症等を伴う。単一疾患ではなく症候群で、種々の病気によって起こる。
3)自己免疫疾患
免疫に何らかの異常があると、自分の体や組織を異物のように認識して、自己に反応する抗体やリンパ球をつくり、自分の体を攻撃する。4)の全身性エリテマトーデスは代表的な自己免疫疾患のひとつ。
4)全身性エリテマトーデス(SLE)
いわゆる膠原病の一種、難病とされ、厚生省で指定する特定疾患に該当する。免疫の異常により発病し、皮膚や腎臓を含む全身の組織に多彩な症状を示す、慢性の炎症性疾患。原因はまだわかっていない。この病気は20~40代の女性に圧倒的に多く発病し、国内で3万人を超す患者がいる。
5)増殖性腎炎(DPGN)
ここでは、自己免疫疾患である、全身性エリテマトーデスに伴う慢性腎炎の病態のうち、糸球体内のある特定の細胞などが増殖することを特徴とするタイプを示す。薬剤による治療が効果を示さない例が多い。
6)Th1反応
Tリンパ球等の細胞が異物を攻撃する細胞性免疫反応。Th1細胞から産生され、免疫細胞の機能を調節する蛋白質(サイトカイン)のひとつであるインターフェロンγの産生を特徴とする。同じくサイトカインのひとつであるインターロイキン4の産生を特徴とするTh2反応とは排他的に生じる。
7)Th1/Th2バランス
Th1反応とTh2反応は相互に排他的に生じるため、片方が優位になると他方は抑制される。天秤のバランスなどに例えられる。
8)Th2反応
抗体産生により異物を攻撃する液性(抗体)免疫反応。インターロイキン-4(IL-4)産生により特徴付けられる。
9)インターロイキン-27/WSX-1
インターロイキン-27(IL-27)は近年発見されたサイトカインのひとつであり、Th1反応が起こる早期に働くことによって反応をTh1側に向かわせる働きを持つ。WSX-1は、IL-27の受容体に付けられた名前。
10)MGNを自然発症するモデルマウス
これまで「特定の薬剤などで膜性腎炎を引き起こした」という実験系はあるが、膜性腎炎を"自然"発症するモデルマウスであることが特に重要である。誘導性の膜性腎炎では、その成因や病態の解析結果が膜性腎炎全体に一般化できないことに加え、治療薬の効果判定などに利用することが難しいためである。
11)上皮
腎臓内の構成要素のうち、血液をろ過して尿を作る装置を糸球体と呼ぶ。この中で、毛細血管の内側(管腔側)に内皮、その外側にそれを支える基底膜があり、そのさらに外側に上皮が存在する。