■研究領域「共創知能システム」の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||
21世紀は、「脳の世紀」と呼ばれ、かたや「ヒトと共生するロボットの時代」とも言われている。これらに関連する脳科学とロボティクスの両分野は,ヒトの知能創発過程の理解と構築という共通の課題を持ちつつも、その結びつきは現状では薄い。近年の脳科学,神経科学は、非侵襲の計測装置などの最先端テクノロジーを武器として、これまで科学の対象で無かった、認知・意識・心などの問題に迫りつつあるが、現状の手段だけでは、認知・発達能力の典型である身体性に基づくコミュニケーションと言語獲得能力の研究の進展が困難である。一方、日本が世界をリードしている人間型ロボットであるヒューマノイドは、現在,急速にその技術が発展しているものの、表層的な機能実現に終始しており、身体に基づく知能創発の設計論が確立していない。両分野が有機的に結びつけば、ロボット技術を駆使した検証手段を用いることで日本独自の脳科学の進展が望める。更に、これらの検証手段に耐えうる人工物を設計することは、現状のロボットセンサーやアクチュエータなどのマテリアルや従来の人工知能/制御技術に革新を迫るだけでなく、知能の新たな設計論を確立できる。 本研究領域では、このような背景から、現状のヒューマノイド研究に欠けている知能の設計をヒトを含めた動的環境内での相互作用(環境・ヒト・ロボット)の中から導く。すなわち、人間型ロボットであるヒューマノイドの新たな設計・製作・作動と、認知科学や脳科学の手法を用いた構成モデルの検証による科学と技術の融合した「共創知能システム」を構築し、新たな科学技術分野「ヒューマノイド・サイエンス」を切り開く。換言すれば、構成的手法による新たなヒト理解の試みである。 「共創知能システム」では、主に下記のテーマに取り組む。まず、身体と環境のカップリングによる運動知能の創発である。従来の固いセンサーアクチュエータ系では実現困難な生物的な振る舞いをやわらかい皮膚やしなやかな人工筋肉により実現するための運動学習構造を明らかにする。次に、環境の中に他者を取り入れ、他者の行為の模倣を通じたヒトの認知発達過程(他者との共創過程) の構成的理解を目指す。さらに、社会的コンテキストの中で、アンドロイドを用いたロボットのコミュニケーション能力の実現を通じて、コミュニケーション創発過程の機構を明らかにする。これらの諸過程に関連した構成的モデルの検証やモデルへの示唆などのフィードバックを促す脳機能画像計測や生理実験との融合から、新たな領域創出へと踏み出す。 このように、本研究領域では、脳科学の構成的手法によるヒト知能創発過程の新たな理解を目指すもので、戦略目標「教育における課題を踏まえた、人の生涯にわたる学習メカニズムの脳科学等による解明」に資するものと期待される。 | ||||||||||||||||||||||||||||
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■研究総括 浅田稔氏の略歴等 | ||||||||||||||||||||||||||||
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