科学技術振興機構報 第1618号

令和5年5月17日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
株式会社FerroptoCureへの出資決定について

JST(理事長 橋本 和仁)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、株式会社FerroptoCure(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO 大槻 雄士、以下「FerroptoCure」という)への出資を実行いたしました。

FerroptoCureは、慶應義塾大学の研究成果に基づき、酸化ストレスによる細胞死フェロトーシスの誘導を利用したがん治療薬の開発を目指すスタートアップです。

がん細胞内で抗がん剤治療や代謝などにより活性酸素が蓄積すると、細胞内の不飽和脂肪酸が酸化され、過酸化脂質が細胞内に蓄積しフェロトーシスという細胞死を誘導します。一方、がん細胞はこれに対抗するため、抗酸化物質である還元型グルタチオン(GSH)を利用して、活性酸素により生成した過酸化脂質を還元することで、フェロトーシスを抑制します。この抑制には、シスチントランスポーター(xCT)やグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)といったたんぱく質や酵素などが関わっており、これらの抗酸化メカニズムを標的とするフェロトーシス誘導療法は、新たながん治療戦略として注目されています。特に、既存の抗がん剤に耐性を持つがんはフェロトーシスへの感受性が高いことが知られているため、フェロトーシス誘導療法はいまだ治療法が十分でないがんに対する新たな治療方法として期待されます。

事業化に向けては、承認されている既存薬を転用して新たな疾患の治療薬として開発する方法(ドラッグリポジショニング)をとっています。安全かつ早期に開発を進められることが期待され、令和5年にトリプルネガティブ乳がん(難治性の乳がん)を対象とした臨床試験を開始する計画です。

FerroptoCureはJSTの戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の研究課題「人工癌幹細胞を用いた分化制御異常解析と癌創薬研究」(研究代表者:佐谷 秀行 慶應義塾大学 医学部 教授、研究期間:平成20年度~平成25年度)、および、研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム 社会還元加速プログラム(SCORE) 大学推進型の研究課題「酸化ストレスを利用した新規抗がん剤の開発」(研究代表者:大槻 雄士 慶應義塾大学 医学部 特任助教、研究期間:令和3年度)の研究開発成果を基に、令和4年5月に設立されました。

JSTは平成26年4月より「出資型新事業創出支援プログラム」(SUCCESS:SUpport Program of apital ontribution to arly-tage Companie)を実施しています。本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対しJSTが出資並びに人的および技術的援助を行うことでその創出および成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的としています。出資を通じてJSTがベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」も志向しています。

URL:https://www.jst.go.jp/entre/

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