参考1

令和元年度 募集の概要

1.事業の目的

戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)は、社会の具体的な問題の解決を通して、社会的・公共的価値の創出を目指す事業です。社会問題の解決に取り組む関与者と研究者が協働するためのネットワークを構築し、競争的環境下で自然科学と人文・社会科学の知識を活用した研究開発を推進して、現実社会の具体的な問題解決に資する成果を得るとともに、得られた成果の社会への活用・展開を図ります。

2.「人と情報のエコシステム」研究開発領域の概要

ビッグデータを活用した人工知能、ロボット、IoTなどの情報技術の急速な進歩により、より豊かで効率的な社会が実現されるとの期待が高まっている一方、情報技術は「悪意に基づく事故や事件(テロ、犯罪など)」「予期せぬ事故やトラブル(セキュリティー、プライバシーなど)」「経済格差拡大や資本集中」などのさまざまな問題をもたらし得るとの指摘もなされ始めています。また、「coveillance」(=インターネット上での相互監視)という言葉が新しく生まれたように、情報技術の発達は我々のプライバシーの在り方そのものも変化させており、今後も多方面で人の生活様式を変えていくことが予想されます。

情報技術の研究開発の現場では、技術がもたらす影響について社会から事前のフィードバックを受けることがないまま実用化を進めた結果、問題が引き起こされるケースや、技術が作られ問題が発生した後に規制がかかり、技術開発のブレーキともなり得る事例がしばしば見受けられます。

このように情報技術は、社会に新たな大きな変化をもたらし得ますが、現時点ではその新規性や革新性は社会の中で多様な解釈・イメージ・メタファーで語られており、その潜在的なメリットと負のリスクが不明瞭です。それ故、情報技術を社会の中で適切に使っていくためには、専門家だけの評価では不十分であり、研究開発の上流の段階から多様なステークホルダーの主観的意見を取り入れ、問題やテーマのフレーミングの幅を広げていくことが重要となります。

情報技術を研究開発の上流段階から人間を中心とした観点で捉え直し、社会の理解の下に技術と制度を協調的に設計していく試みの必要性が高まっていますが、そういった試みに対応するための機会や場の創出、方法論や機能の確立、人材の確保といった点は十分に措置されていないのが実情です。

そこで本領域では、それらの問題に適切に対処していくために、情報技術と人間・社会との共生を促す相互作用機能を目指した社会技術研究開発を推進し、情報技術と人間の「なじみ」がとれた社会の実現を目指します。

3.令和元年度の募集の概要

「人と情報のエコシステム」研究開発領域では、情報技術の技術開発と同時並行で倫理的・法的・社会的検討を継続し、それらを技術開発側あるいは一般社会に向けフィードバックするようなプラットフォームの構築を目指しています。このような取り組みを日本国内で閉じたものとせず、歴史的・文化的・宗教的に異なる海外の同様の取り組みとネットワークを築き、国際的に開かれたプラットフォームとすることが必要です。令和元年度公募では、英国UKRI(UK Research and Innovation)との共同公募を実施し、領域として国際化の観点を強化するとともに、日英の比較調査や英国研究者との共同研究による相乗効果によって、成果の最大化を目指します。

前に戻る