シナリオ創出フェーズ
1.研究開発プロジェクトの規模
実施期間:原則として2年以下
研究開発費(直接経費):上限600万円程度/年
2.新規採択プロジェクトの概要(研究代表者)
個々の新規採択プロジェクトについて、以下の通り概要を示す。
新規採択プロジェクト①
障害情報の電子化による次世代地域・福祉サービス連携の創出
研究代表者 | 巖淵 守(早稲田大学 人間科学学術院 教授) |
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協働実施者 | 本橋 栄三(社会福祉法人 所沢市社会福祉協議会 会長) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
ICTの発達は、自動化やオンライン活動を拡大させ、移動や手作業、コミュニケーションなどに困難を抱える障害のある人の社会活動を大きく支えてきた。アクセシビリティの確保が世界の主流となり、障害のある人が利用できる一般の製品・サービスも年々増加している。しかし、国内における障害支援の多くは、障害者手帳のように紙で本人が管理する情報を基に行われ、毎回別の地域福祉サービスの窓口に出向いて紙でのやり取りをする必要がある。障害者の社会活動を妨げるデジタルデバイド問題の解決が求められている。
【提案内容】
本プロジェクトでは障害のある人の自立度を高め、社会経済活動への参加を促進することを目的として、所沢市などと連携を深め、障害情報を市管轄のプロトタイプデータベース上に保存し、その情報を各当事者が管理・確認できるようにするとともに、障害情報や日常生活情報に合わせた適切な地域・福祉サービスを自動的に選択・提供できるICTをベースとした環境を整備し検証する。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 早稲田大学 人間科学学術院
- 社会福祉法人 所沢市社会福祉協議会
- 所沢市 経営企画部、福祉部、街づくり計画部、産業経済部、健康推進部
- 株式会社ステラリンク
特に優先するゴール、ターゲット
ゴール3 |
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ターゲット11.2 ターゲット11.3 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
新規採択プロジェクト②
水素技術を活用し、住民参画を目指したクリーンエネルギープロシューマーモデルの開発
研究代表者 | 牛房 義明(北九州市立大学 経済学部 准教授) |
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協働実施者 | 栗原 健太郎(北九州市 環境局 環境国際経済部 温暖化対策課 温暖化対策課長) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
脱炭素社会やエネルギーの地産地消の実現には、さらなる再生可能エネルギーの導入が求められている。反面、太陽光などの変動型の再生可能エネルギーの大量導入は電力システムを不安定にさせる要因になっている。再生可能エネルギーの出力変動を吸収する有効な方法として、水素を利用した蓄エネルギー技術が注目されているが、費用が高いこと、市民の水素に対する認知度が低いこともあり、普及に至っていない。
【提案内容】
本プロジェクトでは、水素技術やAIを活用し、エネルギーの消費者で生産者でもあるプロシューマーが再生可能エネルギーの変動を吸収し、既存送配電網と共存可能な小型の自立・分散型のエネルギーマネジメントシステムを構築する。さらに、プロシューマーとなり得る住民の参画が拡大する社会を実現するため、ソリューション創出フェーズに向けてシナリオを検討する。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 北九州市立大学 経済学部
- 北九州市 環境局 環境国際経済部 温暖化対策課
- 理化学研究所 光量子工学研究センター
- 理化学研究所 イノベーション事業本部
- 公益財団法人 北九州産業学術推進機構
- 株式会社北九州パワー
- 西部ガス株式会社
- 一般社団法人 城野ひとまちネット
特に優先するゴール、ターゲット
ターゲット7.2 |
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ターゲット9.4 |
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ゴール11 |
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ゴール13 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
新規採択プロジェクト③
包括的な災害リスクのプロアクティブアラートに基づくインクルーシブ防災の実現
研究代表者 | 小野 裕一(東北大学 災害科学国際研究所 社会連携オフィス 教授) |
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協働実施者 | 橋本 尚志(株式会社富士通総研 コンサルティング本部 行政情報化グループ長) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
災害時に行政が発表する避難指示は広範囲に及ぶ場合があり、人々が災害を自分事として捉えられず、実際の避難行動に結びつかないことが大きな問題となっている。特に高齢者・障がい者などの要支援者は、情報入手や迅速な避難が難しい。そのため、個人や世帯単位でピンポイントに被災リスク情報を伝える仕組みが必要である。
【提案内容】
本プロジェクトでは、これまで困難であった災害毎の防災技術シーズ(地震・津波・洪水・土砂災害のリスク評価、過去被害データおよび歴史記録・伝承)の統合を行い、地域の災害リスクを包括的に評価した上で、個人・世帯単位で予防的な被害予測・避難行動を促すアラートの仕組みを開発する。また、防災科学リビングラボとして自治体・民間などとのネットワークを活用した共助の仕組みにより要支援者へのアプローチを強化し、インクルーシブな防災の実現を目指す。本シナリオ創出フェーズにおいては、手法の開発、アラートシステムの実現性・効果の検証など、仕組みの検証を実施していく。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 東北大学 災害科学国際研究所
- 株式会社富士通総研
- 東北地方3自治体
- 東北で活動するNPO
- 国連機関
特に優先するゴール、ターゲット
ゴール11 ターゲット11.5 ターゲット11.b |
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ゴール13 ターゲット13.1 |
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ゴール17 ターゲット17.16 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
新規採択プロジェクト④
性暴力撲滅に向けた早期介入とPTSD予防のための人材育成と社会システムづくり
研究代表者 | 長江 美代子(日本福祉大学 看護学部 教授) |
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協働実施者 | 片岡 笑美子(名古屋第二赤十字病院 性暴力救援センター 日赤なごや「なごみ」 センター長) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
性暴力被害者の約半数は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する。その症状は被害者の後の人生のみならず、虐待・DV・依存症と深く関わり次世代に影響を及ぼす。確立された治療方法とともに、すぐアクセスでき、より早期に介入できるワンストップ支援センターの拡大により隠れている性暴力被害者を救援できる。
【提案内容】
本プロジェクトでは「なごみ」をハブとして性暴力被害者支援看護師(SANE)と多職種連携チーム(MDT)を配置した病院拠点型ワンストップ支援センター(OSC)を愛知県内に拡充することにより、データ連携、PTSD医療を進め、性暴力被害者の救援・治療・回復を図る。同時に、性暴力撲滅に向けた人材育成システムの開発と社会システムづくりに取り組み、全国展開に向けたシナリオを作成する。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 日本福祉大学 看護学部 看護実践研究センター
- 名古屋第二赤十字病院 性暴力救援センター 日赤なごや「なごみ」
- 一般社団法人 日本フォレンジックヒューマンケアセンター(NFHCC)
- 名古屋大学 大学院情報学研究科 知能システム学専攻 間瀬研究室
- 名古屋市児童相談所
- 武蔵野大学 人間科学部 大学院人間社会研究科 心理臨床センター
- 鈴鹿医療科学大学 看護学部 看護学科
- 名古屋市立大学 大学院医学研究科 法医学分野
- 一般社団法人 日本フォレンジック看護学会(JAFN)
- 独立行政法人 国立病院機構東尾張病院
- 楓の丘こどもと女性のクリニック
- ハヤカワカウンセリングオフィス
- 御器所こころのクリニック
特に優先するゴール、ターゲット
ターゲット3.7 |
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ターゲット5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。 |
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ターゲット16.1 ターゲット16.2 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
新規採択プロジェクト⑤
誰一人として水に困らない社会へ:小規模分散型の水供給・処理サービスの開発・可能性検証
研究代表者 | 西田 継(山梨大学 大学院総合研究部附属 国際流域環境研究センター 教授) |
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協働実施者 | 風間 ふたば(山梨大学 大学院総合研究部附属 国際流域環境研究センター 教授) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
少子高齢化の社会では、過疎地域のインフラ維持に加えて、都市部の老朽インフラの改修費用の確保も困難となる。一方で地方においては、移住者に加えて多地域居住者、国内外の観光客など非定住人口が増えており、社会基盤の見直しが求められている。さらに、日本では自然災害が増え続けており、長期化した避難生活に対しては一刻も早い社会基盤の整備が望まれる。水は人間生活に直結する基盤であり、分散型の水の供給・処理の体制が求められている。
【提案内容】
本プロジェクトでは、上記のような移住・分散型社会やレジリエンスの向上に対応するため、従来の集中型の水インフラの不足を補う小規模で分散型の水サービスを提供する技術・ビジネスモデルを総合的に開発する。地域の需要に合わせて資源量や水質をきめ細かく可視化し、小型自立式水処理の性能と社会コストを評価しながら、新たな水管理に向けて住民と産学官が協働する枠組みを提案する。本シナリオ創出フェーズにおいては、前述の取り組みを行いつつソリューション創出フェーズに向け、システム導入シナリオの作成などを実施していく。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 山梨大学 大学院総合研究部
- 北里大学 医療衛生学部
- 株式会社日水コン
- 甲府市
- 甲州市
- 株式会社メイキョー
特に優先するゴール、ターゲット
ゴール6 すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する 6.1~6.bまでのすべてのターゲット |
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ゴール11 |
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ゴール13 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
新規採択プロジェクト⑥
「住み続けたい」を支える離島・へき地医療サポートモデルの構築
研究代表者 | 前田 隆浩(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授) |
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協働実施者 | 川上 敏宏(五島市 国保健康政策課 課長) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
離島・へき地では、多くの住民が可能な限り長く住み慣れた地域で暮らしたいと望んでいるものの、医療人材不足が深刻な社会問題となっているのに加え、海で隔絶され高齢化が進んだ小集落が点在する立地条件が、医療をはじめ公共サービスを提供する上で大きなハンディキャップとなっている。具体的には、遠隔医療が解禁となったものの、無薬局地域の住民にとっては、遠隔医療が行われても薬を受け取ることができない。また、医薬品の使用頻度などから常備されている医薬品の種類と数量が限定されているなどの問題がある。
【提案内容】
本シナリオ創出フェーズでは、へき地における遠隔医療にドローンによる無人物流と地域全体での医薬品など、在庫情報共有を組み合わせることにより、医療レベルの向上と効率化にむけた次期フェーズの本格的開発を視野にいれつつ、簡易システムの運用検証を行う。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科
- 長崎大学 グローバル連携機構
- 五島市
- 五島医師会
- 五島薬剤師会
- 長崎県五島中央病院
- 長崎県福祉保健部薬務行政室
- 長崎県五島保健所
特に優先するゴール、ターゲット
ターゲット3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセスおよび安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 |
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ターゲット11.2 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
新規採択プロジェクト⑦
共創的支援を促進する視覚障害者のための3D造形物配信・出力エコシステムの構築
研究代表者 | 南谷 和範(独立行政法人 大学入試センター 研究開発部 准教授) |
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協働実施者 | 渡辺 哲也(新潟大学 工学部 准教授) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
写真やイラストが世の中に溢れている。こうした視覚に訴える手段で表現されている事物を視覚障害者が理解する手段はいまだ厳しく制約された状態にある。例えば、視覚障害者にとってノートルダム大聖堂焼損のニュース報道は、建物の壮大さに裏打ちされた喪失の実感を伴わない。VRの実用化進展は、期せずしてこの情報格差の拡大をもたらしかねない。リアリティーをもたらすもの、つまり模型(3Dモデル)を提供することが格差縮減の鍵となる。
【提案内容】
本研究は、視覚障害者への情報保障、リアリティーアクセスを実現するために、(1)ユニバーサルデザイン志向の3Dプリンター開発と、(2)DIYの発想に基づく3Dモデルのリクエスト・出力・配信ネットワークの育成・構築を行う。これにより、2030年の「自分が知りたいものをいつでもどこでも自由に手に入れ触れられる社会」実現のためのエコシステムを創出する。本シナリオ創出フェーズにおいては、エコシステムが機能することの実証を科学的裏付けのある形で行う。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 大学入試センター 研究開発部
- 新潟大学 工学部
- 大阪府立大学 大学院工学研究科
特に優先するゴール、ターゲット
ターゲット4.5 ターゲット4.a |
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ターゲット16.7 ターゲット16.10 |
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ターゲット17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
ソリューション創出フェーズ
1.研究開発プロジェクトの規模
実施期間:原則として3年以下
研究開発費(直接経費):上限2,300万円程度/年
2.新規採択プロジェクトの概要(研究代表者)
個々の新規採択プロジェクトについて、以下の通り概要を示す。
新規採択プロジェクト①
福祉専門職と共に進める「誰一人取り残さない防災」の全国展開のための基盤技術の開発
研究代表者 | 立木 茂雄(同志社大学 社会学部 教授) |
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協働実施者 | 村野 淳子(別府市 共創戦略室 防災危機管理課 防災推進専門員) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
災害時に障がいのある人や高齢の人に被害が集中する根本原因は、平時と災害時の取り組みが分断され、平時の在宅サービスが、当事者の災害脆弱性を逆に高める状況を生んでいることにあり、この問題の解決のためには、福祉と防災を切れ目なく連結することが必須である。このシナリオに沿って2016年度より別府市で行われてきた取り組みは「別府モデル」と呼ばれており、その根幹は平時のサービスなどの利用計画を策定する相談支援専門員や介護支援専門員が、災害時の個別支援計画についてもプラン案を作成し、地域住民との協議の場で要配慮者と近隣住民をつなぐ役割を担うことにある。このモデルを全国展開するためには基盤となる技術の開発が必要である。
【提案内容】
本プロジェクトでは、災害被害シミュレーションに基づく生活機能アセスメントツールのアプリ化、地域プラットフォーム形成技術の確立などとともに、災害時ケアプランを作成できる福祉専門職の育成プログラムを拡充して、プラン作成の報酬化についての制度改正に関して自治体と共に提言をまとめる。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 同志社大学 社会学部
- 別府市役所 共創戦略室 防災危機管理課
- 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)
- 公益財団法人 ひょうご震災記念21世紀研究機構 阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
- 特定非営利活動法人 日本相談支援専門員協会
- 兵庫県 企画県民部 防災企画局 防災企画課
- 兵庫県社会福祉士会
- 京都経済短期大学 経営情報学科
- 一般財団法人 ダイバーシティ研究所
- 慶應義塾大学 商学部
- 認定NPO法人 ゆめ風基金
- 東北大学 災害科学国際研究所
- 国立研究開発法人 防災科学技術研究所
- 九州大学 大学院工学研究院
- 株式会社おかのて
- 早稲田大学 人間科学部
- 国立障害者リハビリテーションセンター研究所
- オムロン株式会社
特に優先するゴール、ターゲット
ゴール1 あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる ターゲット1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靭性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。 |
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ゴール10 各国内および各国間の不平等を是正する ターゲット10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化および社会的、経済的および政治的な包含を促進する。 |
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ゴール11 包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する ターゲット11.5 2030年までに、貧困層および脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。 ターゲット11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靭さ(レジリエンス)を目指す総合的政策および計画を導入・実施した都市および人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。 |
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ゴール13 気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる ターゲット13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靭性(レジリエンス)および適応力を強化する。 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
新規採択プロジェクト②
新生児のための診療支援システムの拡充を通じた重症化予防プロジェクト
研究代表者 | 北東 功(聖マリアンナ医科大学 小児科学教室 新生児分野 病院教授) |
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協働実施者 | 矢作 尚久(慶應義塾大学 SFC研究所 環境情報学 准教授) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
日本の新生児死亡率は年々低下し、世界で最も低いレベルにある一方、後遺症の発生率はあまり減少していない。かつては亡くなっていたような重症な新生児が救命されていることの影響が大きいとされている。
在胎週数の短い新生児は重症例が多く、専門の新生児科医による集中管理下にある。しかし正期産前後の週数の新生児は健康に育つと考えられており、一般の医療者が管理を行っているが、その中にあって児の微細な異変の発見ができずに重症化した後に発見され、死亡ないし後遺症を遺す例も少なからず存在する。特に日本では分娩の約半数は産院や助産院で行われ、重症化の要因としては医療者が児の状態を正しく判定できていないことによるところが大きい。専門の新生児科医の知見による新生児の状態判定が汎用的なシステムとして利用可能であれば、いかなる施設でも状態の悪くなる児の早期発見・対応が可能であるが、現時点でそのようなシステムは存在しない。
【提案内容】
本プロジェクトは、早産による後遺症の要素が少ない34週以降、2000g以上の新生児を対象として、既存の技術シーズである診療支援システムに新生児科医の暗黙知とされる臨床技術を導入することで、子ども達の状態を誰でも正しく評価し、最善の医療と適切な福祉を格差なく受けられることを目標とするものである。さらに、将来的には途上国を中心にシステムを展開し、世界中の新生児の命と健康を守ることに貢献していきたいと考えている。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 聖マリアンナ医科大学
- 慶應義塾大学 SFC研究所
- 東京都立小児総合医療センター
- 川崎市西部地域療育センター
- 川崎市多摩病院
- 芥川産婦人科
- Sunrise Japan Hospital Phnom Penh
- 聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院
特に優先するゴール、ターゲット
ターゲット1.3 |
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ターゲット2.2 |
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ターゲット3.2 ターゲット3.4 ターゲット3.8 ターゲット3.b ターゲット3.d |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
新規採択プロジェクト③
亜熱帯島嶼の持続可能な水資源利用に向けた参画・合意に基づく流域ガバナンスの構築
研究代表者 | 安元 純(琉球大学 農学部 地域農業工学科 助教) |
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協働実施者 | 金城 進(八重瀬町 土木建設課 課長) |
プロジェクトの概要
【解決すべき問題】
亜熱帯島嶼の水資源は、気候変動や産業構造の変化などのさまざまなストレスに対する脆弱性が極めて高く、近年、多くの地域で地下水など水資源の枯渇や汚染が大きな社会課題となっている。地下水の汚染は水循環を介してサンゴ礁生態系を劣化させ、生態系サービスの低下など新たな課題も引き起こしている。
【提案内容】
本プロジェクトでは、地下水の流れや汚染物質の発生・輸送プロセスの定量的な把握とその科学的情報を可視化し、アクションリサーチを通じて多様なステークホルダーとともにそれらのデータを共有することで、水資源に対する理解を高める。さらに、ステークホルダー間の合意形成に基づいた、汚染物質の効果的な負荷軽減対策を立案・実施し、活用する仕組み(参画・合意に基づく流域ガバナンス)を構築する。
研究開発に参画する実施者、協力する関与者の所属機関
- 琉球大学
- 八重瀬町
- 長崎大学 総合生産科学域
- 信州大学 工学部
- 北里大学 海洋生命科学部
- 産業技術総合研究所
- 熊本大学 大学院先端科学研究部
- 金沢大学 人間社会研究域
- 阪南大学 経済学部
- 湧き水fun倶楽部
- 一般社団法人 トロピカルテクノプラス
- 株式会社建設技術研究所
特に優先するゴール、ターゲット
ゴール6 |
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ゴール14 |
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ゴール17 |
- ※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。
<プログラム総括総評>
関 正雄(明治大学 経営学部 特任教授/損害保険ジャパン日本興亜株式会社 CSR室 シニアアドバイザー)
国連の定める2030アジェンダ(われわれの世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ)には、「誰一人置き去りにしない」という基本理念の下、17の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)と169のターゲットが掲げられるとともに、その達成のためにSTI(科学技術イノベーション)が大きな役割を果たすことが期待されています。「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム」は、STIを活用して特定の地域における社会課題を解決し、その成果を事業計画にまでまとめあげて、国内外の他地域に適用可能なソリューションとして提示することを目標としています。従って、それらのソリューションは、本プログラムにおける研究開発プロジェクトが終了した後も他地域にも広く展開可能なものであり、さらにはSDGsの達成に向けた、大きなインパクトを生むものであることが求められます。また、応募に当たっては、研究代表者と、地域で実際の課題解決に当たる協働実施者が、ペアで応募することを求めているところが特徴です。
今年度は本プログラム発足後初めての公募となりましたが、公募開始当初から多くの関心が寄せられ、大学をはじめとする研究機関、民間企業、NPOなどから計134件(シナリオ創出フェーズ107件、ソリューション創出フェーズ27件)の応募がありました。寄せられた提案はいずれも、SDGsにおいて解決の期待される社会課題としての重要性はもちろん、提案者の課題解決に向けた動機や熱意が強く感じられるものばかりでしたが、慎重に書類選考、面接選考を実施した結果、最終的に10件(シナリオ創出フェーズ7件、ソリューション創出フェーズ3件)の研究開発プロジェクトを採択しました。選考においては、研究代表者・協働実施者を中心とするステークホルダーを巻き込んだ推進体制をはじめ、技術シーズを社会課題解決に適用する具体的な道筋や、プロジェクト終了後も成果創出の担い手(社会課題に取り組む当事者の代表など)が取り組みを持続的に展開・拡大していく可能性についても特に重視しました。
本プログラムでは、採択プロジェクトに対する積極的なハンズオン支援を通じて、複雑化する地域社会課題を解決するための、ステークホルダーとの共創的な研究開発を推進していきます。そしてそのことによって、社会をトランスフォームし、誰一人置き去りにしない強靭で包摂的で持続可能な社会の実現に資する、イノベーティブな生きた知見を創出することを目指します。