別紙1

インドネシア スンダ海峡津波関連
「国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)」採択課題概要

課題名 日本側
研究代表者
所属・役職 課題概要
インドネシア側
研究代表者
スンダ海峡津波の被害と住民の対応の調査 柴山 知也 早稲田大学 理工学術院
教授
アナク・クラカトア火山噴火に伴う津波の伝播特性と津波来襲に伴う沿岸域での被災の状況を、現地調査と数値シミュレーションを駆使して解明する。現地調査ではすでに行った予備調査の結果を踏まえて、津波浸水高の地域分布特性を広域にわたって把握する。これにより、津波の発生、伝播から被災に至るメカニズムを分析する。また、津波来襲時の住民行動を質問紙調査法とインタビューにより分析する。今回の津波では地震動などの津波に先立つ現象を感知できなかったために、避難開始が遅れたことが予備調査で分かっている。以上の2つの方法により、将来の火山津波に対する有効な防災方略を提言する。本研究終了後に、インドネシアチームは研究結果を所属大学の地元でもあるスンダ海峡周辺地域の現地での今後の対応に応用していく。
ヘンドラ・アチアリ スマトラ工科大学 海洋工学科 学科長
2 インドネシア・スンダ海峡津波を誘発した火山活動と崩壊メカニズムに関する研究 井口 正人 京都大学 防災研究所 教授 2018年12月にスンダ海峡において津波を発生させたアナク・クラカタウ火山の山体崩壊が発生した原因と崩壊プロセスを解明する。また、今後、同火山において発生し得る山体崩壊の可能性についても評価する。具体的には、(1)山体の不安定性の要因となった山体の形成過程をクラカタウ諸島における地質調査によって解明する。(2)アナク・クラカタウ火山の小規模な噴火活動が山体崩壊に至った火山活動から見たプロセスを解明するとともに、今回の火山活動の特性を明らかにする。(3)ジャワ島における広帯域地震記録を用いて山体崩壊の力学的過程を解明する。(4)固定翼UAVを用いたアナク・クラカタウ火山の地形変化とマイクロホンを用いた噴火状況の把握を実施し、今後の崩壊の可能性を評価する。
カスバニ エネルギー鉱物資源省(MEMR)地質庁 火山地質災害軽減センター センター長
3 リモートセンシングによる津波被害の把握と脆弱性評価 越村 俊一 東北大学 災害科学国際研究所 教授

津波によって被害を受けた地域について、複数の衛星センサーから得られたリモートセンシングデータを解析し、津波災害の広域被害把握技術を実証する。

連携先のインドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)および海洋水産省(MMAF)が実施した調査結果と、申請者らの建物被害状況調査と津波浸水深の現地調査結果に基づく空間情報解析の統合により、津波浸水の建物被害と津波ハザード諸量との関係を整理し、市街地形成や復興計画における土地利用、建物配置などの指針を提示する。

ロキス・コマルディン 国立航空宇宙研究所(LAPAN) リモートセンシング応用センター センター長
4 スンダ海峡津波がサンゴ礁海岸域に及ぼした影響についての緊急調査 西村 裕一 北海道大学 理学研究院 准教授 スンダ海峡津波が海岸地質環境に及ぼした影響を理解するため、サンゴ片を含む海岸の砂からなる津波堆積物の分布と産状、および津波を経験した造礁性サンゴの骨格の特徴に関する基礎データを収集する。津波堆積物については、形成直後の調査結果と比較し、この地域における津波堆積物の保存過程を理解する。サンゴについては、津波で打ち上げられたサンゴ塊と成長を続けた海中のサンゴを分析し、津波による影響を受けた骨格構造をメカニズムとともに明らかにする。さらに、得られる知見を応用して1883年にも津波災害を経験したスンダ海峡周辺において津波発生履歴の構築を試みる。陸上の津波堆積物と海中のサンゴの両方を用いて古津波痕跡を認定し利活用した例はなく、本研究を通じて熱帯地域の津波長期評価の高度化が期待される。
エコ・ユリアント インドネシア科学院(LIPI) 地質工学研究センター センター長
5 地震・津波・衛星画像データ解析による2018年スンダ海峡津波発生メカニズムの解明 綿田 辰吾 東京大学 地震研究所 准教授

地震波・津波・衛星画像データから、統一的なアナク・クラカトア火山の山体崩壊モデルを構築する。スンダ海峡近傍のジャワ島・スマトラ島で観測された近地地震波と日本を含むインドネシア国内外で観測された遠地地震波の解析から、山体崩壊時刻の推定と、地震を引き起こした力学モデルを構築する。

また、スンダ海峡周辺の検潮記録から海中での移動体積とその移動距離を与える津波波形を解析し、海中山体崩壊モデルを構築する。さらに、衛星画像によって上記モデルに新たな条件を加え、山体崩壊モデルを統合する。

スリ・ウィディヤントロ バンドン工科大学 地球物理学部 教授
6 非地震性津波の発生メカニズムの解明 有川 太郎 中央大学 理工学部 教授

2018年12月23日に生じたクラカタウ火山の噴火に伴う津波の発生により、津波の大きさとしては比較的に小さかったものの、多くの犠牲者が発生した。この津波は、火山の噴火時における山体崩壊により津波が発生したと考えられているが、そのメカニズムは明らかにされていない。また、そのような非地震性の津波に対する警報システムが無かったことが津波避難の遅れにつながり、多くの犠牲者を出したと推測される。そこで、本研究では、以下の3つを実施し、非地震性津波に対するメカニズムの解明、検知システムの構築並びに避難計画の策定手法の提案を行う。

1)クラカタウ島付近の海底地形探査

2)ビデオイメージを活用した海面監視の可能性

3)数値計算と合わせ、避難に有効につなげるための情報発信方法の検証

アブドゥル・ムハリ 海洋水産省(KKP) 沿岸防災部 部長

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