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科学技術振興機構報 第1225号

平成28年11月15日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
株式会社フューチャーインクへの出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、株式会社フューチャーインク(本社:山形県米沢市、代表取締役社長 時任 静士(山形大学 教授)、以下「FIC」という)からの第三者割当増資注1)の引き受けを実施致しました。

FICは、JSTの研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)注2)(研究代表者:熊木 大介(山形大学 准教授)、研究開発期間:平成25~27年、事業プロモーター:東北イノベーションキャピタル株式会社)を通じて平成28年4月に設立された山形大学発のベンチャー企業です。

山形大学有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)の時任教授、熊木准教授の研究グループで得られた印刷法を使って形成する半導体回路の高性能化技術や生体情報を電気的にセンシングする有機TFT注3)型バイオセンサなどのプリンテッドエレクトロニクス注4)に関する研究開発成果をもとに、微細印刷装置に向けた銀ナノ粒子インク注5)の開発や販売、その応用製品であるフィルム型のプリンテッドセンサ注6)の試作・開発を行っています。

薄いフィルム上に印刷法で形成されたプリンテッドセンサは、人に貼って使うことや衣服として装着した際にも違和感が無いセンサデバイスを実現できるため、ヘルスケアや医療分野において今後ニーズが大きく拡大すると期待されています。

FICは、今回調達した資金を基に、プリンテッドセンサのデバイス開発を加速させ、ヘルスケアや医療応用に向けた大面積シート型センサや絆創膏型の無線センサタグといった、高付加価値の新しいセンサデバイス市場を開拓します。

SUCCESSでは今後も、JSTの研究開発成果を実用化しようとするイノベーティブなベンチャー企業に対して、成長資金の供給や関係機関のネットワークを活用したサポートを提供することにより、実用化を通じた先端技術の社会への還元を進めていきます。

ホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

平成26年4月より、JSTでは「出資型新事業創出支援プログラム」(略称:SUCCESS SUpport Program of apital ontribution to arly-tage CompanieS)を開始しました。本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対しJSTが出資並びに人的および技術的援助を行うことでその創出および成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的とした事業です。出資を通じてJSTがベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」を狙っています。

<企業概要>

企業名株式会社フューチャーインク
設立日平成28年4月1日
本社所在地山形県米沢市
代表取締役時任 静士
事業内容 銀ナノ粒子インクの開発、製造、販売
プリンテッドセンサの試作、開発、販売

<事業展開>

印刷法で電子回路を形成するプリンテッドエレクトロニクスに関する事業を展開しており、すでに電子デバイス製造用の微細印刷装置に向けた銀ナノ粒子インクの販売を開始しています。将来的にはこの技術を発展させ、印刷技術を使った大面積センサシートや人の体に貼って使える絆創膏型の無線センサタグなどを開発・販売するプリンテッドセンサ事業を進めていく予定です。今後は、調達した資金を基に実用化開発を加速させ、ヘルスケアや医療用途を中心としたプリンテッドセンサ事業を推進します。


写真 開発段階の絆創膏型無線センサタグ(温度センサタイプ)

<用語解説>

注1) 第三者割当増資
特定の第三者に新株引受権(新株の割当を受ける権利)を与えて行う増資のこと。会社の資金調達の方法の1つで、会社の自己資本を充実させ、財務内容を強化することができる。
注2) 研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)
大学などの革新的技術の研究開発支援と、民間の事業化ノウハウを持った人材(事業プロモーター)ユニットを活用した事業育成を一体的に行い、企業価値の高い大学発ベンチャーの創出を目指す事業(詳細情報:https://www.jst.go.jp/start/)。
平成24年度に大学発新産業創出拠点プロジェクトとして文部科学省により創設され、平成27年度からJSTに大学発新産業創出プログラムとして移管されている。
注3) 有機TFT
有機材料によって構成された薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)。TFTは複数の電極層や半導体層、絶縁層から成る積層構造であるため、印刷法を使って高性能な半導体回路を形成するには、数百ナノメートルの膜厚を制御しつつ、数μmの微細なパターニングを行う高度な作成技術が必要とされる。
注4) プリンテッドエレクトロニクス
印刷法を用いて電子回路などを形成する技術で、とくに薄い電子デバイスを大量に低コストで製造できる点が注目されている。
注5) 銀ナノ粒子インク
数十ナノメートルの銀粒子を溶媒に分散させたインクで、印刷して配線などを形成できる導電材料。
注6) プリンテッドセンサ
印刷法を使って作製されたセンサデバイス。

<添付資料>

別紙:出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)の事業概要

<お問い合わせ先>

<株式会社フューチャーインクに関すること>

株式会社フューチャーインク
担当:熊木 大介
〒992-8510 山形県米沢市城南4‐3‐16
Tel:0238-26-3290 Fax:0238-26-3788
E-mail:

<SUCCESS事業に関すること>

科学技術振興機構 起業支援室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9014 Fax:03-5214-0017
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