【研究開発課題1】
研究代表者: 遠藤 哲郎(東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター センター長)
プログラムマネージャー: 柴田 直
CRESTでの基礎研究の成果である縦型ボディチャネル(BC-)MOSFET注1)(以下、縦型トランジスター)は、トランジスターを縦型構造にすることで、チップサイズの縮小、リーク電流の低減、放熱性の向上など、既存のトランジスター技術に対する優位性を持つことが示されており、1メガビットメモリーとして動作することも実証されています。
ACCELでは、縦型トランジスターが持つ特徴を最大限生かし、ワーキングメモリー注2)を中心にさまざまな集積回路への応用に向けた研究開発を行います。
PMには、企業のデバイス・プロセス技術開発での実績、および大学教授として本分野の研究開発を推進してきた実績のある柴田 直 氏を起用し、これまでの経験・ネットワークを生かした戦略的な研究開発マネジメントを推進します。
具体的には、以下の研究開発を推進します。
1)縦型トランジスターの優位性を生かし、大容量、高速、低消費電力のワーキングメモリーの実現を目指します。
2)縦型トランジスターがワーキングメモリーのみならずロジックLSIやアナログLSIなどさまざまな応用展開にもつながるよう、基盤となる共通技術を戦略的に構築していくことを目指します。
以上を推進することで、半導体集積回路の新しい技術プラットフォームを創出し、革新的省電力集積回路を先導することにより、情報化社会・省エネルギー社会・ユビキタス社会への貢献を目指します。
- 注1)MOSFET
- Metal―Oxide―Semiconductor Field Effect Transistorの略。電圧を加えることで電流の流れを制御するスイッチング素子のこと。
- 注2)ワーキングメモリー
- コンピューターが処理するデータを一時的に保存するための記憶装置のこと。
<目指すビジョンの図>

【研究開発課題2】
研究代表者: 藤田 誠(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
プログラムマネージャー: 隅田 敏雄
藤田教授は、金属イオンと有機分子からなる金属錯体の自己組織化注3)を研究してきました。
CRESTでは、金属錯体の自己組織化によって大きさや内部環境を制御したナノサイズ空間を含む構造体を作り出し、この構造体内に有機化合物を規則的に配列させることに成功しました。さらに、この三次元構造体が格子状に並ぶ粒(結晶スポンジ)に微量の有機化合物を含む溶液を吸収させると、格子状空間に有機化合物が1分子ずつ規則正しく配列するため、有機化合物を単結晶にせずにX線構造解析が可能となることを示しました。
ACCELでは、この革新的な「結晶スポンジ」を使ったX線構造解析法(以下、「結晶スポンジ法」という)を実用的な分析手法へと発展させるための研究開発を行います。
PMには、総合化学メーカーでプロダクトマネージャーとしての実績を持つ隅田 敏雄 氏を起用し、技術的成立性の証明・提示(POC)を中心とした出口指向の戦略的な研究マネジメントを推進します。
具体的に以下の研究開発を推進します。
1)結晶スポンジ法の実用化
世の中のニーズに応え、ターゲット分子に特化した分析技術
一般向けの汎用分析技術
「結晶スポンジ法」に最適化した分析システムの実現
2)自己組織化技術のたんぱく質分子の構造解析への展開
以上を推進することで、「結晶スポンジ法」による有機化合物の新しい分析法が食品や化学工業品製造、最先端の医薬品製造などにおいて画期的な分析技術として発展し貢献することを目指します。
- 注3)金属錯体の自己組織化
- 金属イオンの周りに有機分子やイオンなどが水素結合や配位結合することで作られる分子の総称で、発光したり触媒として使えるなどの特性を示すものがある。四面体や八面体など対称性の高いものが多く、これらの比較的小さな分子が自然に集まって規則性のある構造を作り出すことを自己組織化と呼ぶ。
<目指すビジョンの図>
