平成18年度研究領域評価結果について > 研究領域 「情報基盤と利用環境」 事後評価

研究領域 「情報基盤と利用環境」 事後評価

1.総合所見(研究領域全体としての成果、当該分野の進展への寄与、本研究領域の意義、等)

 研究領域「情報基盤と利用環境」は時宜を得た設定であり、総じて、当該分野の進展、特に人材養成に関して大きく寄与した。この領域の推進で17名の研究者が自由闊達に活躍の場が得られたことは、情報技術分野における人材育成の観点からも意義深いものと考えられ、各分野のリーダーとして、今後のさらなる活躍を期待したい。
 課題の採択やこれらの成果に関しては、それぞれ新規性、独創性に富むものが見られ、マスメディア経由で広く社会に情報発信されるなど、この分野の科学技術の夢と可能性を与えるものとなった。これらの研究成果は、本分野における今後の重要な先駆的研究になると考えられる。研究総括自身も述べているように、各課題を比較的自由に進めさせたということは良い効果をもたらした反面、もう少し強力な指導、助言を行ってもよかったものと思われる。情報基盤と利用環境という二つの分野間のシナジー効果の発揮による新領域の開拓に関する成果が顕在化されなかったことは、今後のこの分野の研究推進全体に関して残された課題と考える。

2.研究課題の選考(選考方針、領域アドバイザーの構成、採択された課題の構成と適切さ、等)

 コンピュータの果たす役割、利用環境が大きく変化する中で、情報基盤(アーキテクチャ、設計、OS)と情報環境(システム、応用)の広い範囲にわたって、独創的な研究を主体的に遂行できることを基準とした選考方針は、さきがけ領域の基本理念を盛り込んだ内容で適切であった。ただ選考方針の一つとなった「魅力的」課題という観点は、応用課題には強く反映されているが、情報基盤課題においては、この観点に適う課題が少なかったことは残念である。
 領域アドバイザーは、本領域が幅広い分野に関係していることを考慮して、情報系の研究専門家また産業界から技術経営などに卓越した経営者、管理者が選ばれバランスのとれた構成になっており、各課題への学術的視点とともに産業的視点でのアドバイスを行ったことは、研究課題の多様な発展に貢献した。

3.研究領域のマネジメント(研究領域運営の方針、研究進捗状況の把握と指導、研究費の配分、等)

 研究総括は、研究者の所属する研究機関を個別に訪問し、その研究環境を確認するとともに、研究の進捗状況や問題点などについて意見交換を行うなど、領域の推進にあたって情熱をもって取り組んだ。また合計10回に及ぶ領域会議において、研究の進捗状況や当面の課題、解決方法等において活発な討論を行った。
 領域会議では、多くの研究者の交流が生まれ、今後の研究の発展のためにも非常に重要であったと考えられるが、情報基盤と応用という二つの分野間のシナジー効果を生み出すような議論や研究協力への期待が成果として表れなかったのは残念である。
 研究予算については、一律的な配分ではなく、研究者のニーズを反映した柔軟的かつ機動的な配分を実施し、研究推進の円滑化と効率化を促進した。これは研究者にとっても非常に有用であったと考える。

4.研究成果(①研究領域の中で生み出された特筆すべき成果、②科学技術及び社会・経済・国民生活等に対する貢献、③問題点、等)

 研究課題には、直ちに実用になりそうなものから、将来の新しい技術の芽を生みだそうとするものまで多様であり、それぞれ次世代のコンピュータシステムに向けて大きな成果を出していると高く評価できる。コンピュータは個人の生活にも浸透し、また社会基盤としても重要な役割を担っている現在、本領域で取り上げた諸課題は、今後も益々重要になっていくと考えられる。
 特に、「安全」をキーワードにした研究開発、また誰もが簡単に使えるコンピュータなど、本領域では十分に研究が推進できなかった分野に対しても、本領域の成果がきっかけになって発展していくことを期待したい。
 課題の性質によって多少のばらつきはあるものの、多くの論文発表や特許出願、またソフトウェアの公開、多くの受賞など、十分な成果を出し、社会に貢献したと評価できる。研究成果の中には、学術的な貢献に留まらず、特に、「面白い」、「新しい」という観点で、マスメディアなどの関心を集め、広く社会に紹介されたことは、科学技術による夢と可能性を与えたものとなった。今後は、見かけの面白さや新しさの先に何があるかを明示することを期待したい。

5.その他

特になし
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This page updated on July 25, 2007
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