平成18年度研究領域評価結果について > 研究領域 「光と制御」 事後評価

研究領域 「光と制御」 事後評価

1.総合所見(研究領域全体としての成果、当該分野の進展への寄与、本研究領域の意義、等)

 平均15倍ほどの競争の中から、優秀な若手研究者が選ばれ、それぞれ十分な成果を挙げ、当該分野の進展へ大きく寄与した研究領域であると評価できる。具体的にはインパクトファクターの高いジャーナルへの多数の論文発表、多数の特許申請、22名中16名が受賞するなどの数値データがそれを裏付けている。また、さきがけ終了後も、CRESTやPRESTなど、新たな研究費獲得に成功しているように、多くの優れた人材が育ったことも、さきがけの趣旨に照らし合わせて高く評価したい。

2.研究課題の選考(選考方針、領域アドバイザーの構成、採択された課題の構成と適切さ、等)

 「光と物質の相互作用」、「光機能性材料創成」に関する研究を対象とした研究領域であり、時宜を得たものである。世界最先端の研究に寄与できる、独立性の高い若手研究者で異分野への進出を恐れない進取の精神をもつ者という、選考方針は極めて妥当であると判断される。
 領域アドバイザーも企業を含む広い分野から、「さきがけ」の精神をよく理解されている優れた研究者が、バランスよく配置されている。
 採択された課題は広範囲にわたるが、選考が適正に行われている。結果として1大学2名以内を選考している。化学やバイオなど研究総括が当初予想していない分野から数多くの申請がなされたため、2 年目から領域アドバイザーを増やすなど、適切な処置が行われている。 光技術という観点からは、もう少し企業所属の研究者の参加があっても良かったかもしれない。
 採択された課題については、3年間という期間では、大きな成果につながらないかもしれないと考えられる野心的テーマや、重要だが時間のかかるテーマも少なからず採択されており、概ね適切と判断される。

3.研究領域のマネジメント(研究領域運営の方針、研究進捗状況の把握と評価、研究費の配分、等)

 極めて幅広い分野の研究者間で、分野を超えた交流が年2回の領域会議で積極的に行われたことは評価される。物質・測定技術・レーザーシステムの開発に携わる研究者と領域アドバイザーが、意見交換から共同研究にまで進んだ例があり、今後の展開が大いに期待できる。研究終了報告会は、ナノテクの他研究領域と合同で行われたことも適切であった。
 技術参事も細部まで配慮するなど適切に活動していたと判断される。
 研究費に関しては、配分を画一的にせず、海外から日本の大学に採用され、新研究室を立ち上げた研究者に手厚くサポートし、それによって当該研究者から本領域の代表的成果の一つが得られたことは極めて高く評価できる。

4.研究成果(①研究領域の中で生み出された特筆すべき成果、②科学技術及び社会・経済・国民生活等に対する貢献、③問題点、等)

 物理、化学、電子工学、生物学の各分野から優秀な若手研究者が採択され、研究成果が世界の有力な論文誌に多く採択されるなど、充分な成果が得られているといえる。異分野交流によって共同研究も生まれた。本領域ならではの特筆すべき成果としてはシュタルクアトムチップによるコヒーレント原子操作(香取)と半導体ベースとした磁気光学結晶の開発(田中)などをはじめとして、世界的な成果といえるものが幾つもある。

5.その他

 3年間という期間では、大きな成果を強く求めることは無理である。事後評価では、申請時に持っていたオリジナルな芽を、どこまで伸ばすことが出来たかが最大の評価のポイントであることを明示したらいいのではないかと思う。終了後5年程度経過した時点での追跡調査をすると、本当の成果が見えてくるであろう。
 領域の趣旨に必ずしもぴったりと合致しない研究テーマも採択されているとの意見が多かった。「さきがけ」の性格上ある程度分野を広く許容すべきであると考える一方、科研費との区別が明確でなくなる弊害も考えられるので、その辺の配慮が必要であろう。今後の課題として指摘しておきたい。
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This page updated on July 25, 2007
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