平成18年度研究領域評価結果について > 研究領域 「テーラーメイド医療を目指したゲノム情報活用基盤」 中間評価

研究領域 「テーラーメイド医療を目指したゲノム情報活用基盤」 中間評価

1.総合所見(研究領域全体としての成果、当該分野の進展への寄与、本研究領域の意義、等)

 国民の関心の高い問題に正面から取り組んでいる姿勢を評価したい。研究総括と領域アドバイザーの運営によって、現在までのところ研究は順調に進捗しているものと考えられる。成果も着実に上がっている。本研究領域の意義は確実であり、将来的な方向に向けて着実に進行している。今後の問題は、本事業の成果をどのように臨床や実用化につなげていくか、という部分であろう。

2.研究課題の選考(選考方針、領域アドバイザーの構成、採択された課題の構成と適切さ、等)

 研究課題の対象疾患として、がん、生活習慣病、統合失調症、免疫関連疾患など国民的な関心の高い疾病を選び、必要性の高い興味ある個別的課題を集めた形である。現在それぞれの個別領域で成果を上げつつある実力者を集めており、全体として程々の疾患の網羅的研究と言える。
 本領域は、大学研究者の集団的研究である特定領域研究と理研を中心とした大規模プロジェクト研究を補完するとともに、競争の激しい本分野で世界的成果の見込まれる研究を加速しようとする意図が明確であり、適切と考えられる。
 課題の中で、2つは解析技術の開発研究である。この点で、欧米先行型の技術開発によりゲノム解析技術が決定されていく現状を考えると、我が国においても、より将来を見据えた基盤的技術開発と統計を含めた理論の構築が求められており、この方向の強化も必要ではないかと思われる。

3.研究領域のマネジメント(研究領域運営の方針、研究進捗状況の把握と評価、研究費の配分、等)

 課題は、新規なゲノム情報解析技術の開発と疾病の遺伝要因、環境要因の解明に分かれるが、研究統括はその両面を十分に理解してそれぞれの推進を図っていると考えられる。
 遺伝子探査研究については、研究進捗状況の把握と評価をかなりきめ細かくやっており適切である。また、研究課題によっては研究計画の修正、改善点の指摘などもされている点も評価できる。研究費の配分についても、研究途中で追加配分などの処置がとられていたようであり、適切な処置と考える。
 研究進捗報告会、中間評価会議、公開シンポジウム、サイトビジットなど領域のマネジメントは適切に行われている。すなわち、マネジメント全体については、独立性の高い課題が多いことを考え合わせても、順調であったことがうかがえる。
 ただし、技術開発分野の実用化については、今後の運営が重要と考えられる。

4.研究成果(①研究領域の中で生み出された特筆すべき成果、②科学技術及び社会・経済・国民生活等に対する貢献、③問題点、等)

 多型の原因としてSNPs の他に、コピー数多型がかなりの頻度で存在することが見いだされたのは特筆すべき成果と考える。今後、この多型が疾患の感受性にどのように関わってくるか、興味のもたれるところである。Natureなど一流誌への論文発表があり、成果は上っていると考えて良い。
 各疾患のサンプル、データ収集もかなり進んでいる。しかし、本研究により生み出された研究者集団や患者サンプルを、本事業終了後にどのように、維持発展させて行くべきかについて、早い時期から議論する必要があるだろう。
 核酸塩基対の解離、再結合を促進する人工シャペロンの開発とのその変異識別への利用研究を含めて、ゲノム解析技術の実用化に向けての進展具合は気になる点である。技術の実用化については、コア技術に少々の優位があっても市場との関係で非常に難しい場合があるからである。
 このプロジェクト研究の成果の社会への発信もマスメディアを介して行われているようであるが、多額の研究費を使っているのだから、一般市民へのより解りやすい情報発信も今後必要ではないかと思われる。

5.その他

 本領域は現在7合目くらいにさしかかっていると思われる。最後まで手抜きをすることなく、ヒトゲノム研究についての良い成果を出し、それを少しでも社会へ還元することで、国民の税金がこのように有効につかわれていることを社会に示して欲しい。
 ただし、ゲノム技術開発プロジェクトの実用化部分については、例えば工学系との連携による更なる推進も考慮されて良いかもしれない。
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This page updated on July 25, 2007
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