ポイント
- ハダカデバネズミは極めて長寿でがんになりにくい動物です。しかし、近縁の長寿動物・ダマラランドデバネズミが、発がん耐性を示すのかは明らかではありませんでした。
- ダマラランドデバネズミが、ハダカデバネズミと同様に、化学発がん物質による発がん誘導に強い耐性を持つことを世界で初めて実証しました。一方、発がん刺激に対する免疫応答は両種で大きく異なることを明らかにしました。
- 今後、両種の共通点と相違点が発がん耐性にどのように関わるかを調べることで、がんを防ぐ仕組みの理解が進み、がんの予防や治療の新たな手がかりが得られると期待されます。
九州大学、熊本大学などの研究グループは、長寿動物ダマラランドデバネズミが、近縁種のハダカデバネズミと同様に、化学物質による発がん誘導に強い耐性を持つことを明らかにしました。一方、発がん刺激に対する免疫応答は両種で大きく異なっていました。
ハダカデバネズミは、極めて長寿でがんになりにくい動物として注目されています。しかし、近縁種のダマラランドデバネズミが個体レベルで化学発がんに耐性を示すか、また、発がん刺激に対してどのような組織応答を示すかは明らかではありませんでした。
本研究では、ダマラランドデバネズミに対して2種類の方法で化学発がん誘導実験を行いました。最長で3年を超える期間にわたり追跡した結果、観察期間中に腫瘍発生は一例も認められませんでした。また、発がん物質による免疫細胞の集積が起こりにくいハダカデバネズミとは対照的に、ダマラランドデバネズミでは組織中の免疫細胞が顕著に増加しました。遺伝子発現解析では、ハダカデバネズミで非炎症的なストレス応答経路の活性化が示唆された一方、ダマラランドデバネズミでは免疫の活性化と抑制に関わる遺伝子の両方の発現が増加していました。
本成果は、両種が強い化学発がん耐性を共有しながら、異なる免疫応答を示すことを明らかにしたものです。近縁種間で「がんになりにくさ」自体は共通する一方、その防御戦略が異なることが示唆されます。両種の共通点と相違点が発がん耐性にどう関わるかを検証することで、がんの予防や治療の新たな手がかりが得られると期待されます。
本研究は、九州大学 大学院医学研究院の三浦 恭子 教授、岡 香織 助教、熊本大学 大学院医学教育部 博士課程の関口 功記 氏(研究当時)らが、熊本大学 大学院生命科学研究部(医)の菰原 義弘 教授、藤原 章雄 准教授、京都大学 iPS細胞研究所の山本 拓也 教授、国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所の坂井 祐介 主任研究員、イリノイ大学 生物科学科のRochelle Buffenstein 教授らと共同で行いました。
本研究成果は、2026年10月26日(日本時間)に、米国の学術誌「GeroScience」に掲載されました。
<本研究を支援したJSTの制度>
創発的研究支援事業
共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)
次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)
グローバルサイエンスキャンパス
<論文タイトル>
- “Shared cancer resistance but divergent immune responses in two long-lived African mole-rat species: the naked mole-rat and the Damaraland mole-rat”
- DOI:10.1007/s11357-026-02576-2
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.44MB)
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