細胞が生きるためには、細胞内でさまざまな機能を持った反応が働き、それぞれが適切に制御される必要があります。ある反応の生成物が別の反応の材料になることで、細胞内の全ての反応が連結した1つのネットワークとなることが知られています。では、1つにつながった動的システムで、異なる機能を担う異なる物質を、それぞれ個別に制御することは果たして可能でしょうか?
京都大学 医生物学研究所の山内 悠平 特定助教、望月 敦史 教授らはこれまでに、反応ネットワークの一部がある数式を満たすと「緩衝構造」となり、他の部分から独立して制御される「モジュール性」を獲得することを、数学理論によって示してきました。今回、東京科学大学 地球生命研究所の杉山 博紀 特任助教、京都大学 生命科学研究科の後藤 祐平 准教授、青木 一洋 教授との共同研究により、細胞のライフステージを支配する「細胞周期システム」に、実際にこの緩衝構造が存在し、重要な役割を果たしていることを実証しました。細胞周期システムの解析から、細胞周期の切り替わりを管理する2種のたんぱく質複合体が、異なる緩衝構造に含まれることで、互いに独立に制御されている可能性を示しました。最新の定量解析により、確かに一方のたんぱく質複合体が他方に対して独立に振る舞うことを実証しました。さらに理論予測と実験検証の比較により、未知の反応を理論的に予測し、検証実験によりその実在を証明しました。
本研究により、数学的な予測であった緩衝構造が実際に重要な生物機能を果たしていることが示され、細胞周期システムの理解が更新されました。さらには理論と実験から、未知の情報を必要条件として得る、新しいシステム生物学の方法が提案されました。
本研究成果は、2026年9月21日(現地時間)以降に、国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」にオンライン掲載予定です。
<本研究を支援したJSTの制度>
戦略的創造研究推進事業 CREST
戦略的創造研究推進事業 ACT-X
<論文タイトル>
- “Network topology creates independent control of multiple checkpoints in the cell cycle system”
- DOI:10.1073/pnas.2537815123
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.21MB)
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