東京理科大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年9月4日

東京理科大学
科学技術振興機構(JST)

「硬くて脆い」プラスチックを「強くしなやか」に

~相分離を抑えたイオン架橋という新しい設計指針~

ポイント

東京理科大学 創域理工学部 先端化学科の青木 大亮 講師(研究当時)、内山 康太郎 氏(2024年度卒業)、宮澤 遼太郎 氏(2025年度卒業)、有光 晃二 教授は、かさ高い有機イオンを対イオンとして用いることで、硬さと強靭さを併せ持つガラス状高分子を開発しました。

従来、ガラス状高分子は弾性率が高い一方で脆く、硬さと強靭さの間にはトレードオフがありました。イオンによる物理架橋はエラストマーやハイドロゲルにおける有力な強靭化手法として知られていますが、多くの系ではイオンが集合してナノスケールで相分離するため、分子鎖の動きが強く制限され、ガラス状高分子では脆くなるという問題がありました。イオン液体を用いた手法でも相分離を形成せずに均一なナノ構造を保ったまま強靭化できる例はありましたが、特定の組み合わせの系に限られていました。

本研究グループは、ポリノルボルネン骨格にオリゴエチレングリコール側鎖とカルボン酸を密に導入したイオン性櫛型ポリマーを合成し、かさ高い有機塩基である4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)とナトリウムイオンをそれぞれ対イオンとして用いることで、物性とナノ構造を比較しました。

その結果、DMAPを用いた場合には、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)でイオン化が確認されるにもかかわらず、放射光小角X線散乱(SAXS)では相分離に対応する散乱ピークが現れず、中和率に関係なく、均一なナノ構造が保たれることを明らかにしました。この試料はタフネス約137MJ/m3、ヤング率約0.9GPaを示し、中和前の前駆体と比べてタフネスが約4倍、弾性率と降伏応力が約2倍に向上しました。一方、ナトリウムを用いた場合は、相分離が確認され、ナトリウムイオンによる中和率が50mol(モル)%以上で著しく脆化しました。

本成果は、かさ高い側鎖と有機塩基を組み合わせるという分子設計により、硬いガラス状高分子を強靭化する新たな指針を与えるものです。

本研究成果は、2026年9月3日(現地時間)に国際学術誌「Macromolecules」にオンライン掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X(課題番号:JPMJAX24D1、研究者:青木 大亮)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 若手研究(課題番号:JP23K13802、JP25K18081)、触媒科学計測共同研究拠点(25AY0813)の支援を受けて実施されました。放射光測定は高エネルギー加速器研究機構 フォトンファクトリーBL-10C(課題番号:2024P018)の助成を受けて実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Anomalous Toughening of Glassy Ionic Comb Polymers: Retention of Homogeneity Achieved by Bulky 4-Dimethylaminopyridinium Counterions”
DOI:10.1021/acs.macromol.6c00773

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