産業技術総合研究所,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年9月3日

産業技術総合研究所
科学技術振興機構(JST)

光子が生み出す磁束量子を直接観測し、光子数を識別する“新原理”を実証
大規模演算で正しい解を導く光量子コンピューター実現に向けた次世代の光子数識別器へ

ポイント

産業技術総合研究所 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)/物理計測標準研究部門の福田 大治 首席研究員、量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)量子フォトニクスハードウェア研究チーム/物理計測標準研究部門 量子センサー計測研究グループ 鶴田 哲也 主任研究員らは、光子吸収によって超伝導体中に生じる磁束量子を直接観測し、その数から光子数を識別する新しい光子検出原理の実証に成功しました。

光子一つ一つを検出することは、光量子コンピューターや量子通信において重要な技術として位置付けられており、いくつかの方式が提案されています。研究用途には一部実用化されているほか、産業応用への組み込みが始まりつつあります。今回実証したのは、従来の技術では実現し得なかった高い光子数識別能力と高速性の両立が期待される新たな光子検出原理です。

光子が超伝導体に吸収されると超伝導位相の勾配が不安定化し、磁束量子対が発生します。発生した磁束量子が超伝導体を横切ると位相スリップが生じ、その結果としてジョセフソン効果による量子化電圧信号が発生します。本研究では、この量子化電圧信号を観測することで、光子によって生じた磁束量子の運動を直接捉えるとともに、その信号から入射した光子数を識別することに成功しました。

従来の超伝導光子数識別器は、光子吸収後に熱平衡状態に到達した際の温度変化を測定していました。一方、本技術は熱ではなく、光吸収直後に発生する超伝導位相のダイナミクスを利用します。熱的な応答を待つ時間が不要なため、従来方式を超える高速な光子数識別技術につながることが期待されます。

この研究成果の詳細は、2026年9月2日(日本時間)に、米国物理学会(APS)の学術誌「Physical Review Applied」に掲載され、Editor's Suggestionに選定されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業 目標6「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発(JPMJMS2064)」および「誤り耐性型全光学式光量子コンピュータの研究開発(JPMJMS256I)」、内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進」(研究推進法人:量子科学技術研究開発機構(QST))における研究テーマ「量子コンピュータ・センサーハードウエアコンポーネントテストベッドの構築」、内閣府 研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)「商用光量子コンピュータの構築」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(JP24K01374)、および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 委託事業(JPNP25014)の支援を受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Direct observation of photon-induced vortices in superconducting films”
DOI:10.1103/n295-rfl8

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