ポイント
- 高い発光効率を持つ量子ドット発光層に欠陥を利用したスピンフィルタリング機能を直接導入。
- 従来の量子ドットでは不可避な状態充填(じゅうてん)効果の抑制に加え、発光準位から不要なスピンを除去。
- 室温で高輝度発光と50%を超える高円偏光度を両立し、今後のスピン光変換素子の開発を加速。
北海道大学 大学院情報科学研究院の樋浦 諭志 教授、高山 純一 技術専門職員、村山 明宏 特任教授、同大学 大学院情報科学院 博士後期課程の森田 彩乃 氏らの研究グループは、スウェーデン リンショーピング大学との国際共同研究により、室温で高輝度発光と高い電子スピン偏極率を両立する半導体ナノ材料を開発しました。
電子スピンと光を活用した省エネルギー情報記憶・伝送を実現するには、スピン-光変換を担う半導体活性層での高いスピン偏極率が不可欠です。研究グループは2021年にスピンフィルタリング機能を持つ希薄窒化ガリウムヒ素(GaNAs)とインジウムヒ素(InAs)量子ドットのトンネル結合構造を開発し、室温で世界最高のスピン偏極率を達成しましたが、電子と正孔の解離により発光効率が低下してしまうという課題がありました。
今回研究グループは、電子の熱脱離の抑制により室温でも高輝度発光が可能な希薄窒化InGaAsN量子ドットに着目し、通常よりも低い420℃で成長させることで、スピンフィルタリング機能を持つ欠陥を発光層に直接導入しました。これにより、従来のInGaAs量子ドットと同等の高い発光強度を維持したまま、発光の円偏光度を大幅に向上させました。さらに、時間分解円偏光発光測定により、欠陥の寄与を受ける量子ドットと寄与を受けない量子ドットが共存していることを見いだしました。欠陥の寄与を受ける量子ドットでは50%以上の高い円偏光度を示し、発光準位から不要な少数個スピンが選択的に除去されることで、スピン偏極率が発光中に大きく増幅されることが分かりました。
これにより、室温で高輝度・高スピン偏極発光を両立する実用的なスピン-光変換材料の設計指針を提示するものであり、将来の光スピン配線に向けた研究開発を加速させることが期待されます。
なお、本研究成果は、2026年9月1日(現地時間)公開の科学誌「Advanced Optical Materials」にオンライン掲載されました。
本研究は、JST 創発的研究支援事業(JPMJFR202E)、NEDO 未踏チャレンジ(JPNP14004)、JSPS 科研費(JP21KK0068、JP23K26153、JP24K00913、JP25KJ0446)などの支援を受けた成果です。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Highly Spin-Polarized Luminescent Quantum Nanomaterials Integrated with a Defect-Enabled Spin-Filtering Function”
- DOI:10.1002/adom.71622
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