ポイント
- 微小な物体に、約40cmの距離から特殊な超音波ビームを片側から照射し、非接触かつ空中で安定に浮遊・搬送することに成功しました。ビーム中心の高音圧領域で物体を捕捉する方式を用いることにより、従来よりも約6倍離れた物体の浮遊を初めて実証しました。
超音波などの音の力を用いて物体に触れずに空中へ浮かせる技術は、音響浮遊と呼ばれます。物体に接触しないため、壊れやすい試料や汚染を避けたい試料、危険な材料の操作などに適しています。しかし従来の音響浮遊の主流は、向かい合う音源や反射板の間に定在波を作って物体を挟み込む方式で、装置に囲われた空間の中でしか物体を扱うことができません。囲いのいらない片側照射の方式もありますが、物体を保持できるのは音源のすぐ近くに限られていました。
このような制約は、浮遊の原理に由来します。従来の方式はいずれも、音圧がほぼゼロの静かな点を高い音圧で囲い込み、そこに物体を捕らえます。片側からの照射の場合、音源から離れるにつれて物体を保持する力が失われ、やがて押し出す向きに転じます。
筑波大学 図書館情報メディア系 伏見 龍樹 助教、同大学院 人間総合科学学術院 博士後期課程 頃安 祐輔さんらは、この片側照射方式において、中心軸に高い音圧が細く集中したまま遠くまで伝わるゼロ次ベッセルビームを用いることにより、音圧の高い領域で物体を捕らえることに成功しました。この方法により、片側からの照射だけで、音源から最大約40cm(従来の約6倍)離れた空中で直径1.5mmの発泡ポリスチレン球を安定に浮かせ、3次元的に動かすことができました。また、複数の物体や非球形物体の浮遊に加え、障害物の先でも浮遊できることを確かめました。
この浮遊は理論的に予測されていましたが、今回初めて、空中で実証されました。囲いのない開かれた空間で離れた物体を非接触で扱えるため、実験の自動化や立体ディスプレーなどへの応用が期待されます。
本研究成果は、2026年8月24日(現地時間)付で、科学誌「Physical Review Letters」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)(JPMJAP2330)、JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(JPMJSP2124)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(JP25KJ0673)、および英国工学・物理科学研究会議(EPSRC)(EP/Z534171/1)の支援を受けて実施しました。 なお、JST ASPIREプログラムの支援により、筑波大学と英国 ブリストル大学との国際共同研究において、筑波大学の若手研究者を中心とした人的・技術的交流が推進・強化され、本成果の創出に寄与しました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.31MB)
<論文タイトル>
- “Midair Single-Sided Acoustic Levitation in High-Pressure Regions of Zero-Order Bessel Beams”
- DOI:10.1103/pfkh-4x7j
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