岡山大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年8月21日

岡山大学
科学技術振興機構(JST)

レーザーで原子核の周辺環境を可視化

~「固体原子核時計」を高精度化するレーザーメスバウアー法を実現~

ポイント

岡山大学 学術研究院 先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)の平木 貴宏 助教(特任)、吉村 浩司 教授、吉見 彰洋 准教授、増田 孝彦 准教授、高取 沙悠理 日本学術振興会 特別研究員PD、岡井 晃一 助教(特任)(研究当時。現 大阪大学/日本学術振興会 特別研究員PD)、オーストリア・ウィーン工科大学のThorsten Schumm 教授らによる国際共同グループは、固体中のトリウム229原子核をレーザーで励起し、その周囲の局所環境(原子の並び方)を調べる「レーザーメスバウアー分光」法を開発しました。

メスバウアー分光は、物質の中で原子核がどのような環境にあるかを調べる強力な方法として、化学、地質学、物性物理学など幅広い分野で広く使われてきましたが、これまではガンマ線しか使えなかったため、大型装置・放射線源が必要でした。今回の研究では、特別に低いエネルギーで励起できる原子核として知られているトリウム229に着目し、真空紫外レーザーを用いたメスバウアー分光により、フッ化カルシウム結晶中に入ったトリウム229原子核のわずかなエネルギーの違いを詳しく観測しました。その結果、結晶中にはトリウム229が入り込むサイト(トリウム229を取り囲む原子の配置)が4種類あることを発見しました。さらに、それぞれの原子核の励起状態の寿命を調べ、主要な2種類のサイトについては実験データと理論計算を組み合わせることでトリウム229周囲の原子配列を推定しました。

本成果は、極めて高精度な時計「原子核時計」、特に結晶を用いた固体原子核時計の設計に不可欠な情報を与えるものです。原子核時計は、現在の原子時計を超える精度を持つ次世代の時間標準として期待されており、物理定数の時間変化などの新しい物理の発見や革新的な計測技術につながる可能性があります。

本研究成果は、2026年8月20日(現地時間)に米国の科学雑誌「Science」に掲載されました。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(JP21H04473、JP24K00646、JP24H00228、JP24KJ0168、JP25K17413)、二国間交流事業(120242002)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR24I6)、European Research Council(ERC)under the European Union’s Horizon 2020 and Horizon Europe research and innovation programme(Grant Agreement No.856415 and No.101087184)、Austrian Science Fund(FWF)[Grant DOI:10.55776/F1004、10.55776/J4834、10.55776/PIN9526523]、Schweizerischer Nationalfonds(SNF)fund 514788の支援を受けて実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Laser Mössbauer Spectroscopy of 229Th in CaF2
DOI:10.1126/science.aea7978

<お問い合わせ>

前に戻る