長崎大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年8月20日

長崎大学
科学技術振興機構(JST)

骨折後の骨は本当に元通りに治るのか?

~骨を構成する間質細胞の「疲弊」が骨の再生能力を低下させる~

ポイント

長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科の松下 祐樹 教授らの研究グループは、米国 テキサス大学などを含む国際共同研究によって、損傷を受けた骨では、骨髄に存在する骨髄間質細胞が永久的な疲弊状態に陥ることで細胞の機能が低下し、骨を形成する能力が失われ、再度の損傷時には急激に骨髄脂肪細胞へと分化し、骨髄脂肪が増加することを発見しました。

骨折などで骨が損傷すると、通常は骨の中の骨格幹細胞や骨髄間質細胞が活性化され、骨芽細胞へと分化することで新たな骨を形成し、骨は一見元の状態へと治癒します。しかし、骨折歴のある人では再骨折リスクが高まることが知られている一方で、その仕組みは全く分かっていませんでした。

本研究では、マウスの骨髄損傷モデルおよび骨折モデルを用いて、一度損傷を受けた骨では、見かけ上治癒したとしても細胞レベルでは骨髄間質細胞が損傷による刺激で慢性的な炎症を起こしており、再度の損傷を受けると、骨髄間質細胞は骨髄脂肪細胞へと分化していることを発見し、研究グループはこの状態を「間質疲弊:stromal exhaustion」と定義しました。さらに、疲弊した骨髄間質細胞では骨再生に重要なWnt/β-cateninシグナルが十分に活性化されないことを見いだしました。同シグナルを薬剤または遺伝学的手法で活性化すると、骨形成能が回復し、骨髄脂肪細胞への分化も抑制されました。

本研究成果は、「骨は治癒すれば完全に元通りになる」という従来の考え方に対し、骨の細胞には損傷の影響が残り、再生能力が低下する可能性を示したものです。将来的には、骨髄間質細胞の疲弊を標的とした新たな骨折治癒促進法や骨再生治療の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、英国の国際学術誌である「Nature Communications」に2026年8月19日(日本時間)付で掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR2111)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(JP25H01073、JP24KK0168、JP21H03124、JP20KK0356)、日本医療研究開発機構(AMED) 医学系研究支援プログラム 免疫ダイナミクス解析コホート・AIを駆使して難治性疾患に挑むPhysician Scientist育成と研究力向上計画(JP256f0137009)、上原記念生命科学財団、神澤医学研究振興財団、中冨健康科学振興財団、武田科学振興財団、長崎大学MIRAI-PH 創出プログラムなどの支援のもとで行われたものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Injury-driven stromal exhaustion disrupts intrinsic regenerative capability”
DOI:10.1038/s41467-026-76108-z

<お問い合わせ>

前に戻る