理化学研究所,関西学院大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年8月4日

理化学研究所
関西学院大学
科学技術振興機構(JST)

栄養の質ではなく、量を感じる腸細胞

~栄養素の量を細胞内の流動性で感知する新機構の発見~

理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 動的恒常性研究チームのユ・サガン チームディレクター(関西学院大学 大学院理工学研究科 客員准教授)、中村 友奏 研修生(研究当時、関西学院大学 大学院理工学研究科 博士課程前期課程(研究当時))らの研究チームは、ショウジョウバエの腸細胞が、食餌(しょくじ)中に含まれる栄養素の総量を細胞質の流動性として感知し、腸細胞の生死の運命を決定する機構を備えていることを発見しました。

本研究成果は、生物が外界の栄養環境に適応するための新たな仕組みの存在を示し、ヒトを含めた動物の食餌による腸恒常性維持機構の理解につながることが期待できます。

動物の腸は栄養素を吸収する器官であり、腸の細胞は栄養条件の変化を認識し、適応する仕組みを備えています。一般に栄養学では、細胞に取り込まれた栄養素はその種類によって異なる分子機構で感知され、それぞれ異なる細胞機能を制御すると考えられてきました。

今回、研究チームは、ショウジョウバエを用い、食餌中に含まれる栄養素の種類ではなく総量が、腸細胞の中の流動性を制御し、それにより腸細胞の生死が決定されることを発見しました。このような機構で細胞数が変化し、栄養条件の変化に適応することができます。具体的には、食餌中のアミノ酸濃度が高い(栄養が多い)状況では細胞質流動性が低下して腸での細胞死が起こりにくくなり、アミノ酸濃度が低い(栄養が少ない)状況では細胞質流動性が上昇して腸細胞死が増加しました。これは、栄養が少ないときに不要な腸細胞を減らして細胞維持のコストを下げ、腸の恒常性維持を図る仕組みの1つと考えられます。

本研究は、科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」オンライン版に2026年8月3日(日本時間)の週に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業「エレボーシスを切り口とした腸恒常性維持機構の解明(研究代表者:兪 史幹、JPMJFR216F)」による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Cytoplasmic fluidity couples nutrient availability and enterocyte fate in vivo”
DOI:10.1073/pnas.2602724123

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