京都大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年7月29日

京都大学
科学技術振興機構(JST)

4つのニッケル原子の協同作用で強固な炭素-水素結合を活性化

~複数の金属が協力する分子の新たな可能性~

京都大学 化学研究所の大木 靖弘 教授、角南 康平 大学院生(研究当時)、田中 奏多 大学院生、山梨 遼太朗 博士研究員、檜垣 達也 助教(研究当時、現:東京都立大学)、伊豆 仁 助教らは、チャルマース工科大学 W. M. C. Sameera 研究員、京都大学 寺西 利治 教授、髙畑 遼 助教、東京都立大学 山添 誠司 教授、吉川 聡一 助教、筑波大学 二瓶 雅之 教授、志賀 拓也 准教授、京都大学 加藤 立久 研究員と共同で、4つのニッケル原子からなる新しい分子(ニッケルクラスター錯体)を開発し、安価で資源が豊富なニッケルを用いて、これまで困難と考えられてきた炭化水素の炭素-水素(C–H)結合を穏和な条件で活性化(切断)できることを明らかにしました。

炭化水素のC–H結合は有機分子中に広く存在する強固な結合であり、その結合を直接活性化して有用な物質へ変換する技術は触媒化学における重要課題です。これまで、このような反応にはロジウムやイリジウムなどの希少で高価な貴金属が主に用いられてきました。一方、ニッケルは安価で資源が豊富であるにもかかわらず、穏和な条件で炭化水素のC–H結合を活性化できる例は極めて限られていました。

研究グループは、複数の金属原子が協力して電子を受け渡すクラスター錯体に着目し、その協同作用を利用した新しい分子の設計に取り組みました。独自に開発した合成法を用いて4つのニッケル原子を含む新しいクラスター錯体を合成したところ、ベンゼンやトルエンなどの芳香族炭化水素だけでなく、通常は反応性が低いn-オクタンなど飽和炭化水素のC–H結合も50℃という穏和な条件で可逆的に活性化できることが判明しました。実験と理論計算の結果から、この特徴的な高い反応性は、4つのニッケル原子が酸化還元を分担し協力することで生み出されることが明らかになりました。

本成果は、複数の金属原子を集積した分子が、従来のニッケル錯体には見られなかった新しい反応性を示すことを明らかにしたものです。安価で資源が豊富なニッケルを利用した新しい触媒の開発に加え、複数の金属原子が協力して働く分子の設計と機能開拓をさらに発展させる成果として期待されます。

本研究成果は、2026年7月29日(英国夏時間)付で英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

本研究は、以下の研究プロジェクトの支援を受けて推進されました。

JST 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR21B1、JPMJCR21B4)、JSPS 科学研究費補助金(JP23H01974、JP25K22274、JP22K20558、JP23K13707、JP23K13763、JP25K18050、JP24H00053、JP24H02217)。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“A tetranuclear nickel hydride cluster capable of reversible activation of aromatic and aliphatic C–H bonds”
DOI:10.1038/s41467-026-76006-4

<お問い合わせ>

前に戻る